浜松vs.沖縄、一歩も引かない戦いに有明が揺れた!=bjファイナル

柴田愛子

ファイナル目前でチーム崩壊!?

ファイナルで27得点を奪う活躍を見せたアーノルドだが、試合前には高熱を出すトラブルもあり、満身創痍の状態だった 【加藤よしお】

 浜松を見事2連覇に導いた中村和雄HCは前日のカンファレンス ファイナル試合後の厳しい顔から一転して、笑顔で会見に臨んだ。
「ゲーム内容からすれば、1年間で最も悪いゲームだった。ファイナルのプレッシャーもあっただろう。でも前半の終りに踏ん張って得点を伸ばしてくれた、そこが勝因だった」と、いつもは厳しい中村節も抑え気味。それは今回がただの2連覇ではなく、多くの困難を乗り越えて手にした2連覇だったからだ。

 震災後にチームの要であったポイントガード、ジャメイン・ディクソンが帰国。「チーム作りをする上で一番重要視するのがポイントガード。ディクソンが帰国してから、チームがズタズタになってしまった。点数が入らないし、オフェンスが遅いし……」と中村HCは勝てる自信が無くなったという。
 その穴を埋めようと、大口や友利健哉をポイントガードにおいた練習をするも上手くいかず、最後はチームの大黒柱であるアーノルドをポイントガードに起用することを決め、ファイナルへの準備を進めた。

勝利に対する強い思いが勝因だった

bjリーグ制覇の象徴である、ゴールネットのカット。中村HCも連覇に笑顔がこぼれた 【加藤よしお】

 しかし、ファイナル4まで1週間となったところで予想外の出来事が起こる。なんと頼みのアーノルドが高熱を出し、ダウンしてしまったのだ。満足に練習も行えず、有明には帯同出来ないだろうと中村HCも腹をくくるほど、状況は最悪だった。木曜の朝には熱が41.2度まであがり、心が折れそうになったというアーノルド選手だが、熱で苦しみながらも中村HCに伝えた言葉は「いつもコーチは責任をもってやれといっているじゃないか、だから僕は有明に行くよ」というファイナルにかける強い思いだった。

 一時は母国の家族を安心させるために日本を離れていたアーノルド。しかし、「震災後、こういう状況でもプレーすることみせたい」――。そんな強い気持ちで再び日本に戻ったという。だからこそ点滴を打ってでも有明でプレーすることを望んだのだ。「ゲーム中は力が入らない場面もあった」と、苦しみながらもプレーし続けたアーノルド選手。沖縄に流れが傾きかけた時に、彼が見せた勝負強さは、ファイナルにかける気持ちの強さだったのだろう。

「今回MVPはパーマーだったが、自分としては練習、ゲームともにアーノルドがMVPだったと思う」と試合後に中村HCが口にしたのはアーノルドへの称賛の言葉だった。

 MVPをとったパーマーもアーノルドが体調不良で本調子でないこともあり、彼にかかる負担は大きかったことだろう。そんな中で19得点4アシスト12リバウンドという数字を残したのはさすが。そしてキャプテン岡田慎吾をはじめ、大口や太田敦也、友利など、日本人選手も大いに躍動した浜松。多くの困難をチーム一丸となって乗り越えたからこそ、今回の優勝は喜び以外にも得るものが大きかった。浜松と沖縄、両チームの力の差はほとんどなかった。しかしわずかに上回ったのは、浜松の勝利に対する強い思いだったのかもしれない。

<了>

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