浜松vs.沖縄、一歩も引かない戦いに有明が揺れた!=bjファイナル
ファイナル目前でチーム崩壊!?
ファイナルで27得点を奪う活躍を見せたアーノルドだが、試合前には高熱を出すトラブルもあり、満身創痍の状態だった 【加藤よしお】
「ゲーム内容からすれば、1年間で最も悪いゲームだった。ファイナルのプレッシャーもあっただろう。でも前半の終りに踏ん張って得点を伸ばしてくれた、そこが勝因だった」と、いつもは厳しい中村節も抑え気味。それは今回がただの2連覇ではなく、多くの困難を乗り越えて手にした2連覇だったからだ。
震災後にチームの要であったポイントガード、ジャメイン・ディクソンが帰国。「チーム作りをする上で一番重要視するのがポイントガード。ディクソンが帰国してから、チームがズタズタになってしまった。点数が入らないし、オフェンスが遅いし……」と中村HCは勝てる自信が無くなったという。
その穴を埋めようと、大口や友利健哉をポイントガードにおいた練習をするも上手くいかず、最後はチームの大黒柱であるアーノルドをポイントガードに起用することを決め、ファイナルへの準備を進めた。
勝利に対する強い思いが勝因だった
bjリーグ制覇の象徴である、ゴールネットのカット。中村HCも連覇に笑顔がこぼれた 【加藤よしお】
一時は母国の家族を安心させるために日本を離れていたアーノルド。しかし、「震災後、こういう状況でもプレーすることみせたい」――。そんな強い気持ちで再び日本に戻ったという。だからこそ点滴を打ってでも有明でプレーすることを望んだのだ。「ゲーム中は力が入らない場面もあった」と、苦しみながらもプレーし続けたアーノルド選手。沖縄に流れが傾きかけた時に、彼が見せた勝負強さは、ファイナルにかける気持ちの強さだったのだろう。
「今回MVPはパーマーだったが、自分としては練習、ゲームともにアーノルドがMVPだったと思う」と試合後に中村HCが口にしたのはアーノルドへの称賛の言葉だった。
MVPをとったパーマーもアーノルドが体調不良で本調子でないこともあり、彼にかかる負担は大きかったことだろう。そんな中で19得点4アシスト12リバウンドという数字を残したのはさすが。そしてキャプテン岡田慎吾をはじめ、大口や太田敦也、友利など、日本人選手も大いに躍動した浜松。多くの困難をチーム一丸となって乗り越えたからこそ、今回の優勝は喜び以外にも得るものが大きかった。浜松と沖縄、両チームの力の差はほとんどなかった。しかしわずかに上回ったのは、浜松の勝利に対する強い思いだったのかもしれない。
<了>