レーカーズが3連覇を逃した理由=NBAプレーオフ

山脇明子

失われていた一体感

この敗戦で数々の偉業を成し遂げた監督業にピリオドを打ったフィル・ジャクソン 【Getty Images】

 案の定、プレーオフ第1ラウンドのホーネッツ戦では、いきなり第1戦を落とす。だが、左足首を故障しながら強行出場したブライアントやバイナムの奮闘で同シリーズをなんとか6戦でものにすることができた。
 しかし、2006年のファイナルで敗れてから苦汁を飲み続け、「今季こそ」の思いに燃えるマブスとの西カンファレンス準決勝では、マブスがベストの状態でプレーしたのと裏腹に、レーカーズは「らしくない」プレーで下降線をたどる。

 これまでは、ブライアントが試合を制し、チームメートを引っ張って勝利を手にしてきた。だが、このシリーズでは、最後の2試合ともブライアントが17点に抑えられるなど、その効果を生むこともできなかった。

 逆転勝利で優勝を決めた昨季のファイナル第7戦では、ブライアントとともにリーダーを務めるデレク・フィッシャーからのタイムアウト中の活を入れた言葉に誰もが燃えた。スウィープ(4連敗でシリーズ敗退)を目前にした8日の第4戦でもフィッシャーは同じことを試みたが、チームを活気づけることはできなかった。

 そこには勝つために一体となる“チーム”という言葉はなかった。

「ここで負けた方がよかった」と名将

 このシリーズが始まるよりも前に、ジャクソン監督とブライアントは、もしかすると3連覇は無理かもしれないと感じていたという。そしてマブスに敗れたあと、ジャクソンはこう言った。
「試合後コービー(ブライアント)と話して、おそらくファイナルまで勝ち進んで負けるよりも、ここで負けた方が良かったんだと同意した」。

 人一倍負けず嫌いの師弟である二人の気持ちが、このように一致したことに驚いた。だが、チームを一番よく知る二人は、その行方を誰よりも分かっていたのだろう。

 マイケル・ジョーダン、スコッティー・ピッペンらを率いてブルズで2度の3連覇を果たし、レーカーズを5度の優勝に導く大偉業を成し遂げたジャクソンは、自己初のプレーオフでのスウィープという敗戦を最後に監督キャリアに終止符を打った。

「これからチャンスをつかもうとしている若い選手や若い監督がたくさんいる。彼らにチャンスが与えられるべきだ。私は20年間コーチという素質を生かすチャンスを得ることができた」とジャクソン。

 新たな監督と、おそらく変更が生じるであろうメンバーで、レーカーズは黄金時代を立て直すことができるだろうか。
 それとも、この “Ugly”で“Embarrassing”な敗戦が、レーカーズの黄金時代の終幕となるのか――。

<了>

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著者プロフィール

ロサンゼルス在住。同志社女子大学在学中、同志社大学野球部マネージャー、関西学生野球連盟委員を務める。卒業後フリーアナウンサーとしてABCラジオの「甲子園ハイライト」キャスター、テレビ大阪でサッカー天皇杯のレポーター、奈良ケーブルテレビでバスケットの中体連と高体連の実況などを勤め、1995年に渡米。現在は通信社の通信員としてMLB、NBAを中心に取材をしている。ロサンゼルスで日本語講師、マナー講師、アナウンサー養成講師も務めている。

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