開幕3戦で見えた勢力図と新ルールの光と影 3つの大変革がもたらしたもの=F1
無敵アイテムの弊害
KERSと可変リアウイング、ピレリタイヤはレースでも大きな効果を見せている 【Getty Images】
チーム力とマシンの個体差が大きく、予選の順位からさほど変動もないままフィニッシュする、あたかも“高速パレード”となってしまいかねなかった近年のF1に「NO!」を突きつけたのは良い。しかし、昔懐かしいアニメ「ポパイ」における無敵アイテム・ほうれん草のように、可変リアウイングやKERSがレースの醍醐味(だいごみ)を左右する存在であってはならない。
過剰な演出よりもレースの本質を
開幕からの3戦を見る限り、個人的にはKERS、可変リアウイング、そしてピレリタイヤという新たなファクターが、予想以上にレースに影響を及ぼし過ぎているように思えてならない。調味料の効き過ぎた味の濃い料理よりは、素材そのものの味を感じさせる方が、趣(おもむ)きがあると感じるのは筆者の年のせい、とは思いたくはないが……。
抜群の安定感をみせる可夢偉
エースとして安定感ある走りを見せる可夢偉(左)と新人ドライバーのペレス 【Getty Images】
開幕戦のオーストラリアGPでは幸先の良い8位フィニッシュを飾るも、リアウイングの車両規定違反で失格の憂き目に。しかし、マレーシアではしっかりと気持ちを切り替えて7位。中国でも粘り強く10位で完走し、2戦連続のポイント獲得を果たした。この可夢偉の走りは、マシンの信頼性に欠け、焦りからかミスも多かった昨季の序盤戦とは大きく異なり、抜群の安定感と一層の強さを感じさせる。
新人のセルジオ・ペレスと組み、日本人F1ドライバーとして初めて、名実共にチームをけん引するエース格のドライバーとなった今季の可夢偉。持ち前の速さと根性に、昨季後半から続く精神的成長も相まって、これまでの日本人ドライバーにはなかったような安心感を見る者に与えていることは間違いない。
シーズンのロケットスタートを決めたレッドブルに、早くもマクラーレンが肉薄したように、シーズンが進むにつれ、資金的に優位に立つライバルチームの開発進展で可夢偉が苦境に立たされる可能性はある。しかし、今季の可夢偉にはぜひとも、04年の佐藤琢磨(8位)以来となるシリーズランキングトップ10入りを狙ってもらいたい。少なくとも開幕3戦で見せたような戦いを彼が続けて行けば、10月の日本GPのスタンドには昨年以上の観客が詰めかけることになるだろう。
<了>