東海大相模が成功した“イメージ戦略”=タジケンのセンバツリポート2011 第12日

田尻賢誉

高い走塁への意識を生み出す練習

東海大相模が佐藤(右)、近藤らの活躍で11年ぶり2度目の優勝を果たした 【写真は共同】

 準々決勝では無死一、三塁から三塁走者の森下翔平がサードゴロで“ゴロ・ゴー”。アウトにはなったものの、インパクトから本塁到達まで3秒09は、2007〜08年にゴロ・ゴーを得意にして躍進した常葉菊川高に匹敵する数字。高い走塁への意識を見せつけた。
 また、二塁走者がシングルヒットで本塁を取る走塁も徹底。単打での二塁から本塁へのタイムはほぼ全国レベルの7秒以内をクリアした(抜けたのを見てスタートした1度を除く)。

    タイム 
臼田 6秒25(対関西高、前進守備のためリードかなり大)
臼田 6秒86(対大垣日大高)
田中 7秒06(対履正社高)
田中 6秒89(対九州国際大付高)

 練習ではインパクトに合わせてスタートするための“イメージ練習”を取り入れている。リードを取り、ボールを持った係がボールを上に上げ、捕ったらバック、落としたらゴーという反応練習。これを毎日行い動きを覚え、実戦での判断力を養う。「あの練習は試合に直結していると思います」(菅野剛士)

「相模の足はすごい」と思わせてストレートを狙い打つ

 東海大相模高、九州国際大付高、日大三高と強打のチームが上位を占めた今大会。その一方で、走塁への意識がもう少しあれば……と惜しまれるチームが多かった。7安打を放ちながら完封された大舘鳳鳴高(対天理高戦)や9安打で1点しか奪えなかった北海高(対天理高戦)、15残塁を記録した横浜高(対波佐見高戦)などもったいない攻撃が目立った。中継プレーの途中でまだボールが動いているにもかかわらず、エルボーガードやフットガードを外してボールを見ていない選手も見受けられた。

 3試合でチーム打率2割2分8厘しか打てなかった加古川北高が積極的な走塁で2勝を挙げたように、走塁への意識があれば、少ない安打でも点が取れる。安打数と得点の差をいかに少なくするか。それは走塁技術と意識にかかっているといっても過言ではない。

 史上初の1試合2満塁本塁打、大会通算塁打113、大会通算安打74の新記録をマークした打線ばかりが注目されるが、東海大相模高の武器は足。毎試合果敢に走り、試合前から足を警戒させる。序盤から仕掛けて、重圧をかける。「相模の足はすごい」と相手に印象づけたところでストレートを狙って打つ。塁に出れば“アグレッシブ・ベースボール”のテーマ通り、次の塁を積極的に狙う。機動力と攻める姿勢が生んだ攻撃力。

「東海大相模高=足」
 イメージ戦略で勝ち取った優勝だった。

<了>

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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。1975年12月31日、神戸市生まれ。学習院大卒業後、ラジオ局勤務を経てスポーツジャーナリストに。高校野球の徹底した現場取材に定評がある。『智弁和歌山・高嶋仁のセオリー』、『高校野球監督の名言』シリーズ(ベースボール・マガジン社刊)ほか著書多数。講演活動も行っている。「甲子園に近づくメルマガ」を好評配信中。

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