東海大相模が成功した“イメージ戦略”=タジケンのセンバツリポート2011 第12日

田尻賢誉

徹底していた積極的な走塁

決勝戦で3安打と活躍した東海大相模・渡辺。好走塁でもチャンスを広げた 【写真は共同】

【東海大相模 6−1 九州国際大付】

 イメージ戦略――。
 東海大相模高は完全にこれに成功した。とにかく序盤の3回までに積極的に仕掛ける。1回戦の関西高戦は3盗塁。エンドランも3回試みた。2回戦の大垣日大高戦では1盗塁、2エンドラン。準々決勝の鹿児島実高戦は1エンドラン、準決勝の履正社高戦では1盗塁死のみに終わったが、決勝の九州国際大付高戦では1盗塁、3エンドランと、どんどん攻めた。走者二塁のみでも仕掛ける。ストレートなら打ってエンドラン、変化球なら見逃すか空振りをして盗塁というケースが多かった。

 序盤にこれだけ動けば、相手バッテリーは嫌でも足を警戒せざるをえない。決勝の5回、無死一塁。四番の佐藤大貢の打席でも一塁走者の田中俊太が大きなリードで重圧を与える。カウントが2ボールと動きやすい状況になると、バッテリーは足を警戒してストレートを選択。佐藤はフルスイングで完ぺきにとらえ、打球は左中間スタンドに飛び込んだ。

「常に次の塁を狙う意識を持っている」

 もちろん、そのほかの走塁も抜け目がない。決勝では3回に左中間を破った渡辺勝が、二塁をオーバーランして相手中継を確認。センターからの送球がワンバウンドになり、ショートがはじいた瞬間、再スタートして三塁を奪った。準決勝では初回1死二塁からファーストファウルフライを一塁手が後ろ向きで捕球したのを見て、すかさず二塁走者の田中がタッチアップ。同じく三塁を奪っている。

「いつも通りのプレーです。常に次の塁を狙う意識を持っている。ボールは最後まで見て、スキがあれば行くようしにしています」(渡辺)

 決勝の4回1死一塁では初球に一塁走者の橋本拓磨がスタートして長田竜斗がバントするバントエンドラン。三塁ベースが空いているのを見逃さず一気に三塁を奪う走塁もあった。
「あれはサインミスです。エンドランと思って走ったんですけど間違えました(苦笑)。送りバントで(一塁は)絶対アウトなので、相手は絶対油断するところ。(二塁)ベース手前でサードとピッチャーのベースカバーが遅れてたのが見えたので、躊躇(ちゅうちょ)しないで行きました。普段から次の塁を意識して、スキあれば行こうと思っていた成果だと思います」(橋本)

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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。1975年12月31日、神戸市生まれ。学習院大卒業後、ラジオ局勤務を経てスポーツジャーナリストに。高校野球の徹底した現場取材に定評がある。『智弁和歌山・高嶋仁のセオリー』、『高校野球監督の名言』シリーズ(ベースボール・マガジン社刊)ほか著書多数。講演活動も行っている。「甲子園に近づくメルマガ」を好評配信中。

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