阪神キャンプで見たブルペンの興奮と味わい=山田隆道のキャンプ見聞録

山田隆道
 2月の数日間、沖縄に行ってきました。目的はもちろん各球団の春季キャンプだ。心地良いさわやかな南風を浴びながら、宜野座村の阪神、北谷の中日、そして名護の北海道日本ハムと全3球団のキャンプを満喫。そこで今回は、そんな各キャンプの中でも特に阪神に照準を絞って、僕なりに気になったことを書き留めたいと思う。

能見と小林宏のイケメンコンビに興奮!

 宜野座村の阪神キャンプでは、ブルペンが最大の注目だった。僕がラジオ番組で共演中の元阪神監督の安藤統男さんが「今季の阪神のポイントは投手。打線は昨年ほど打てないと思う」と常々仰っており、すっかり感化された。なんでも、どの球団も打線が爆発した年の翌年はそれより打てなくなるものらしい。なるほど、思い当たる節がある。

 その日のブルペンは幸運にも豪華メンバーだった。エース格の能見篤史、復活が期待される岩田稔、ベテラン・下柳剛の左腕トリオに加え、鉄腕・久保田智之、千葉ロッテからFA移籍してきた小林宏之といった主力が勢そろい。正直、こんなブルペンは滅多にお目にかかれない。

 能見のピッチングフォームは相変わらず美しかった。ノーワインドアップ全盛の昨今の球界では、稀少になった振りかぶるタイプのサウスポー。甘いマスクと長身痩躯の抜群のスタイルを誇る能見は、長い両腕を天高く突き上げるように美しく振りかぶり、全身を躍動させながら白球を投げ込んでいく。細い左腕はまるで鞭のようなしなやかさだ。
 続いて目を奪われたのは小林宏之だった。隣で優雅に振りかぶる能見とは対照的に、常にセットポジションからの熱投。すでに本番、つまりランナーを背負った状況を想定しているのかもしれない。

 それにしても小林宏は本当にかっこいい。生来のイケメンであることはもちろん、能見と同じくスタイルが抜群で、とにかく足が長い。2人そろってベルトの位置が異様に高いのだ。加えて、小林宏は阪神屈指のお洒落男子だ。ユニフォームを脱いでTシャツ一枚になっても、そのTシャツがいちいち流行のデザインだったりする。これは女性ファンに人気が出るだろうなあ。今季の阪神は能見とコバヒロのイケメンコンビにも注目です。

ブルペンの上座(?)を独占する下柳

元阪神の亀山つとむ氏(左)と山田隆道氏。ラジオ番組でも共演している 【山田隆道】

 ベテラン下柳は終始黙々と投げ込んでいた。ここ数年の阪神のブルペンを見ていて思うのだが、どういうわけか下柳はいつもブルペンの一番隅で投げる。まるでそこが下柳の専用マウンドかのようだ。もしや、ブルペンにも上座があるということか。
 下柳は目を見張るスピードこそないものの、その制球はさすがの精密機械だった。捕手の構えたミットに寸分違わずボールが吸い込まれていく。圧巻の42歳だ。

 今季から導入される統一球は表皮が滑りやすいらしく、下柳のような制球が命のピッチャーにとってはボールをコントロールしにくいというデメリットがあるという。しかしその反面、縫い目が大きいため、変化球が曲がりやすくなるというメリットもあり、それが吉と出るか凶と出るかは、キャンプでの投げ込みにかかっているとかいないとか。
 果たして、今季の下柳はどっちに転ぶのだろう。昨年は2年連続で一桁台の7勝に終わり、いよいよ年齢による衰えがささやかれているものの、本人の情熱は老いてますます盛んな印象を受ける。他の若い投手と見比べてみても、投げ込み量が圧倒的に多いのだ。

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著者プロフィール

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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