久御山・松本悟監督会見「3点が今日は限界だった」

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うまくなってこそ、次に強い相手に何かやれるんじゃないか

互いの健闘をたたえ合う久御山(えんじ)と滝川第二(白)イレブン 【鷹羽康博】

――ひとつのスタイルを貫く中で、相手も貫いてきた方がやりにくいのか、それともこちらの特徴を消してくるチームの方がやりにくいのか?

 かなりボールを取りに来るチームでも、(追ったり囲んだりして)形で取りに来るチームと、野洲高校さんのように個人のうまさで取りに来るのとでは違います。(相手に自陣に)引かれる場合にしても、今日の(滝川第二)と1回戦の中京大中京さんとではやっぱり違います。どんな状態にも適応しようとすることが、子どもたちの力量を伸ばすということだし、安定して力を発揮することにつながります。
 最後はボール扱いのうまいチームが勝つ。ゴール前でうちのディフェンスより、相手がうまかったからたくさんゴールが入ったし、相手のディフェンスと総合力で考えると(自分たちは)3点が今日は限界だったということだと思います。どんな場面でも、苦手意識を持たずにやりたいですね。

――このスタイルを選んだ理由は?

 高校(での指導)は15年目なのですが、以前は中学の教師を12年やっていまして、全国大会も経験させてもらいました。ただ、限られた地域の選手層の中から(選手が)来るもので、京都府がジュニアで全国3位なんていうときには良いのですが、あまり能力が高くないときには、(チーム力が)ガタッと落ちてしまいます。指導者のプロ意識として、選手をうまくして良い指導者だろうと自分で思っているので、能力のない下手な子たちでも、ボール扱いで相手をかわしたりするのは楽しいよとしてあげないと、なかなか選手たちは中学に入って(サッカーを)やってくれません。

 うまくなってこそ、次に大きい相手や強い相手に何かやれるんじゃないかと12年間(このスタイルを)続けてきました。サッカーはボールゲームだし、体が当たるコンタクトもスキルのうち。ボール扱いがうまいと、球際でどちらのボールか分からない場面でもむしり取って来るぐらいの執着心が芽生えます。選手をうまくすることが、頭を使ってボールを運ぶことにつながって賢くなると思っています。常日ごろからうまさを追求していかないと(試合で)出せないし、小さなものでもうまさで大きなものをひねるロマンのようなものを追い続けているので、こだわり通したいですね。

――このサッカーだからこそ、大会中に上手になった、選手がうまくなったという実感があるのでは?

 うちのチームは選手のちょっとした力量のうまさや、堂々とプラスに物事を考えてへこたれないことでやってこられた。弱かったんですが、土台を持っている技術の高さというか、技術やパスワークを信じたから強くなってこられたという印象です。

――準決勝後の会見では、フィジカル能力の高くない選手だがボール扱いがうまいので、別の部分で勝負ができると言っていた。(自分のチームの選手の能力が高くないので)久御山のようなサッカーはなかなかできないんじゃないかと思っている指導者に、そうではないということを示せたのでは?

 まだまだできていない部分があります。ハンディにはしたくないのですが、公立高校なので限られた地域であり、勉強のこともあります。たくさん来られても困るし、どうしたらいいか分からなくなる。でも、力量のある子が来ても、さらに伸ばせるかが指導者の醍醐味(だいごみ)。今回出てこないチームでも、わたしたちよりうまい選手を育てたり、こだわりすぎてパスをしないでドリブルばかりするようなチームでも、うまい選手はいっぱいいる。そのちょっとした代表として、野洲さんであったり、昔からずっとあこがれていた井田のおっちゃん……井田監督さんの静岡学園、強いて言えば恩師である京都商業(現京都学園高校)の林監督のおかげで、わたしはここに座っている。ボールを大事に扱うんだと、自分が思ったところにボールを運んでいけるという選手を今後も育てていきたいし、一緒に育っていきたいと思います。

――試合後、選手にはどんな言葉をかけたか?

 ちゃっとしてくれよと。あいさつして握手もして、笑顔でできるだけ泣かないでと言ったんですけど、ちゃんとやってくれました。周りの人からよくやったぞと言われることがうれしかった。

<了>

取材:平野貴也

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