似た者同士、がっぷり四つのスコアレス=<3回戦 日章学園(宮崎) 0(4PK3)0 静岡学園(静岡)>

中田徹

無得点でも寒さを忘れるほどの熱戦

両チーム譲らず、スコアレスながらも白熱した好ゲームだった 【鷹羽康博】

 この時期、たとえ暖かな日であっても、午後3時近くになると三ツ沢は急に冷え込んで来る。ちょうど第2試合の後半が始まるころだ。しかし、日章学園対静岡学園の戦いの真っただ中にいたせいか、その冷え込みの訪れは試合終了直前まで感じることがなかった。0−0というスコアレスドローながら、両者の戦いはそれだけ熱く、ハイレベルだった。
 ポゼッション型の攻撃サッカーを志向する、似た者同士の戦いだった。しかし決して忘れてはならないのは、両チームとも守備の強さも兼ね備えていたことだ。前半、チャンスの数では静岡学園が上回ったが、全体としては膠着(こうちゃく)状態の時間が長かった。それはやはり早稲田進平、山田貴文を中心にした日章学園の中盤の守備が堅かったからだろう。派手さこそなかった前半だったが、トップゲーム特有のピーンと張り詰めた緊張感あふれる40分間だった。

 後半は静岡学園のプレスが緩み、日章学園がチャンスを作り始め、逆に静岡学園にも積極的な攻撃が生まれるようになった。こうして試合はオープンなものになり、シュートの数は後半だけで静岡学園が11本、日章学園が8本と打ち合った。

 華麗なスルーパスやコンビネーションパス、スキーのスラロームのようなドリブル突破といった派手なプレーのみならず、泥臭い局地戦もあったエンターテインメント性の高い後半の40分。静岡学園の右ウイング、廣渡剛太と日章学園の左サイドバック、深山和哉は小中学校時代、地元福岡の選抜チームのチームメートで、非常に仲もいい間柄。この2人が激しくボールの奪い合いを演じたが、深山の“判定勝ち”に終わり、「僕の出来が悪かった。次のステージでは絶対に勝ちたい」と廣渡は大学での再戦に気持ちを切り替えていた。

 また、前半存在感の薄かった日章学園の左MF福満拓人は、ハーフタイムに早稲田監督のゲキを受けてからよみがえり、本来対面でないはずの静岡学園のエース、大島僚太と激しい一対一の戦いを繰り広げた。
「大島は全国的に名を知られ、Jにも進む選手。チームとしても負けられなかったが、個人としても大島に負けたくなかった」という言葉通りのパフォーマンスを福満は見せてくれた。

 試合は結局、PK戦の末、日章学園が4−3でベスト8に駒を進めた。両校はチームとしても魅力的であり、個々の選手もキャラが立っており、非常に印象深いゲームだった。

静岡学園戦もあくまで優勝への通過点

PK戦勝利の立役者、GKの河野敦人(右)は、全国制覇という目標に向けて気を引き締めた 【鷹羽康博】

 日章学園は4度目にして「3回戦の壁」を初めて越し、ベスト8に進出した。次の滝川第二戦に勝てば国立進出となるが、日章学園の目標はさらに高く全国制覇である。静岡学園を下した直後、「これで浮かれているんじゃないぞ。お前たちの目標はなんだ」と早稲田監督。「全国です」と選手たち。「じゃあ、次のゲームだ。そこに向けてコンディションを作って臨もう」と言って早稲田監督は選手の気持ちを締め直した。

 準々決勝の相手はやはり攻撃力のある滝川第二だ。この試合もまた魅力あふれるものとなりそうだ。PK戦でヒーローとなったGK河野敦人はこう語る。
「自分たちの目標はあくまで全国。今日はあくまでその通過点。次の試合に向けて気を引き締め直す。滝二の10番(樋口寛規)はシュートもFKもすごいが、自分が止めてやるという気持ちです」

 FWの得点力が光る今大会の滝川第二と比べると、日章学園は決定力が湿り気味。早稲田監督は「マグレでもいいからは入ってほしいという気持ちも強いです。攻撃というのはひとつのラッキーなシュートから飛躍的に得点力がアップするということもありますから。なんかそういったものにすがりたい気持ちも半分あります」と苦笑まじりに語る。
 全国の頂点を目指す日章学園。その鍵はFW陣の覚醒(かくせい)である。

<了>
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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