札幌山の手が攻守で圧倒、初優勝に輝く=高校選抜バスケ

舟山緑

インターハイ、国体に続くウインターカップ制覇で高校三冠を達成した女子の札幌山の手 【(C)JBA】

 東京体育館で熱い戦いを繰り広げた「JX−ENEOSウインターカップ2010(全国高校バスケットボール選抜優勝大会)」。女子は前評判の高かった札幌山の手(北海道)が、全試合、圧倒的な強さを見せつけて優勝を飾った。準優勝は中村学園女(福岡)、3位東京成徳大(東京)、4位大阪薫英女学院(大阪)という結果に。12月28日に行われた女子決勝戦を中心に、今大会を総括してみたい。

圧勝で初の3冠を飾った札幌山の手

 札幌山の手が圧倒的な強さを見せて初優勝を遂げた。決勝戦こそ第2クォーター半ばまで中村学園女の粘りにあったが、第3クォーターで持ち前の機動力を爆発させて一気にスパート。97対59と中村を完全に封じ込め初Vに華を添えた。この優勝で、インターハイ、国体と合わせてチームは初の3冠に輝いた。

 札幌山の手の5試合の平均得点は98.8とダントツ。2年生エース#15長岡萌映子を中心に、スピーディーで多彩な攻撃でほかを圧倒した。この攻撃力に加えて光ったのは、堅いディフェンス力である。平均失点51.2も群を抜く数字だ。国体以降、守りがさらに強固になった。この守りを崩せるチームが、今大会はどこにもいなかった。

貪欲にゴールに挑んだ長岡萌映子

2年生エース長岡(#15)は決勝で50点を上げる活躍を見せた 【(C)JBA】

 2年生エース長岡(180センチ)は決勝で50得点をマークした。歴代の最多得点51(1989年、加藤貴子=富岡)にはわずかに及ばなかったが、加藤の数字は2回戦のもの。決勝では文句なしに長岡の50得点が最多得点となる。「大会に入ってからよく身体が動いていた」と話す長岡は、どの試合も貪欲(どんよく)にゴールをねらいにいった。総得点176点、リバウンド74本。1試合平均35.2得点、リバウンド14.8本は、堂々の数字である。

 ゴール下で厳しく守られてもシュートに持ち込む強さ。ダブルチームをされたら、フリーの味方にパスをさばく。その視野の広さと判断力。以前は強引なシュートも目立ったが、今大会はディフェンスとの間合いを見てシュートを放つ冷静さも見せつけた。

 何より際立っていたのが、ゴールへと切れ込みながらパスを受けてシュートに持ち込む巧さだ。パスを入れる味方とのあうんの呼吸もあるが、動きの中でシュートチャンスを生み出すテクニックをもっているのが長岡の大きな武器である。
 180センチは国際舞台ではガードクラス。インサイドでは勝負ができない。それを見据えて上島正光コーチが、こうしたワザを1年時から身につけさせてきたという。「来年はボール運びにも挑戦です」と話す長岡。ドリブルにも定評がある。上島コーチの高い要求にどう応えていくか、ますます楽しみな選手だ。

 札幌山の手の強さを語る上で欠かせないのが、司令塔・#4町田瑠唯の存在だった。157センチと小柄ながら、終始落ち着いたゲームメークでチームをけん引した。絶妙のパスワークに加えて得点面でも活躍。上島コーチも「町田の存在は非常に大きい」と勝因を挙げる。
 この町田や長岡をはじめ、どんな展開になっても自分たちのバスケットができる試合運びの巧さは、判断力の的確さでもあった。

 チームは、長岡のほかにシューター#9佐藤れな、1年生ガードの#16新堀京花が新チームへと残る。来シーズンへ大きな財産が残った。

試合ごとに調子をあげた中村、成徳、薫英

中村学園女の#4神崎由香(左)の個人技も光った 【(C)JBA】

 準優勝の中村学園女は、#4神崎由香の個人技が要所で光り、粘り強い試合運びで決勝へと駒を進めたが、札幌山の手の総合力の前には完敗だった。センター陣の1対1の弱さ、攻撃の組み立てに課題が残った。その中でも1年生ガード#16安間志織の思い切りのいいパスやドライブなど、果敢なプレーが印象的だった。

 東京成徳大は3回戦で夏の4強・明成(宮城)を、4回戦で桜花学園(愛知)をねじ伏せてのベスト4入り。「仕上がりが遅い」と渋い顔を見せていた下坂須美子コーチだが、ディフェンスとリバウンドの強さで3位に食い込んだ。3年の#7石原愛子はリバウンド84本でランク1位、得点118でランク2位と頑張りを見せた。

 大阪薫英女学院は第3シードの金沢総合(神奈川)に快勝しての準決勝進出。堅いディフェンスで2004年に準優勝して以来の4強入り。#4坂井郁香の果敢なシュートがチ−ムをけん引した。

 名門復活を遂げた薫英で一際目を引いたのは、1年の#14畠中春香(185センチ)だ。スリムな身体つきながら積極的な1対1でその素養を大いにアピールした。夏は極度の貧血で倒れてばかりいたというが、それも克服しつつあるという。「将来は日本代表になりうる逸材」と太鼓判を押すのは、日本代表の中川文一ヘッドコーチ。
 魅力は柔らかなシュートタッチで、インサイドでも果敢に勝負する強さも光った。「これまで育てた中で素質はピカイチ。身体をしっかり作って大事に育てたい」と語る長渡俊一コーチだ。

金沢総合の宮澤はベスト8に終わる

 長岡とともにU−17日本代表で活躍し注目された金沢総合2年の#7宮澤夕貴(180センチ)はベスト8で姿を消した。大会直前に高熱でダウンしたためか、4強入りをかけた薫英戦では精彩がなかった。また、宮澤の個人技の高さを生かすチームプレーがあまり見られず、単発な攻めに終わった。夏の雪辱はならなかったが、クレバーでハートも強い宮澤だけに、その成長に大きな期待を込めたい。

 4強入りをねらった桜花学園(愛知)は東京成徳大の前に敗退した。こちらも「3年生がチームを引っ張れなかった」と井上眞一コーチ。2年のガード#6三好南穂を軸に、1年生センター#14河村美幸(183センチ)がさらに育ってくれば、来季は怖い存在になるはずだ。

 また、アンダーカテゴリーのコーチ対決となった聖カタリナ女対足羽の2回戦は、#11近平奈緒子を擁する聖カタリナ女が接戦を制してベスト8入りを果たした。足羽は得意の3ポイントとプレッシャーディフェンスで最後まで食い下がったが、あと一歩及ばなかった。足羽の猛追をカタリナは3年の#6小澤美咲の踏ん張りでしのいだ。

 札幌山の手の強さばかりが目立った今大会。長岡を中心にライバルチームでも下級生の好素材がそれぞれ新チームへと残る。札幌山の手と打倒・山の手に燃えるライバルたちの成長に期待したい。

<了>
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著者プロフィール

月刊バスケットボールで12年にわたりミニバスから中学、高校、大学、トップリーグ、日本代表まで幅広く取材。その後、フリーランスとなる。現在はWEBを中心にバスケットの取材・執筆を続けている。ほかに教育分野での企画・編集なども手がけている

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