夏の女王・札幌山の手が初の覇者となるか 長岡、宮澤、近平など2年生に有望株が目白押し=高校バスケ女子展望

舟山緑

沖縄インターハイでは札幌山の手(水色)が初優勝。U−17でも活躍した長岡がウインターカップでもその実力を見せるか!? 【写真は共同】

 高校バスケットボール界の今年の総決算となる「JX−ENEOSウインターカップ2010(全国高校バスケットボール選抜優勝大会)」、が12月23日から29日の7日間にわたって東京体育館にて行われる。夏の高校総体(沖縄インターハイ)、10月の千葉国体を経て、高校最後のビッグゲームに臨むのは、地方予選を勝ち抜いた47校に地元・東京枠と高校総体の上位2校を加えた50校。女子の優勝のゆくえと見どころを探り、注目選手をピックアップしてみたい。

エース長岡を軸に札幌山の手に死角なし!?

 優勝候補の筆頭は、沖縄インターハイ、千葉国体の2大大会を制して第1シードに入った札幌山の手(北海道)だろう。国体は選抜チームだったが、主力は山の手の選手なので、チームとしては現在2冠を獲得していることになる。
 チームの柱は、抜群の得点力をもつ長岡萌映子(180センチ:2年)で、今大会ナンバー1の注目選手でもある。インターハイ直前にフランスで開催されたFIBA U−17女子世界選手権では、女子日本代表として初の5位入賞に大きく貢献した。長岡自身は得点ランキングで3位に輝いている。そこで得た自信をバネに、帰国直後のインターハイでは平均得点30.8という破壊力を見せつけ、その存在感を強力にアピールした。

 長岡の持ち味はインサイドのみならず、3ポイントもドライブもできる得点力の高さだ。大事な場面でシュートを決める勝負強さも身についてきた。まだ荒削りな面はあるが、将来性あふれる逸材であることに間違いはないだろう。

 この長岡を軸に、今年の札幌山の手は実にバランスがとれており、圧倒的な得点力を誇る。ガード町田瑠唯はドリブルのうまさ、ドライブからの得点やアシストに優れ、なんと言っても落ち着いたゲームメークが光る。U−18日本代表である本川紗奈生(175センチ)、献身的な働きを見せる高田汐織ら3年生3人の安定力は抜群で、大崩れしない強さがある。

 インターハイでは、1試合の平均得点が92.6点という驚異的な得点力を見せつけて、北海道勢として初優勝を成し遂げた。このウインターカップでの最高成績は昨年の3位。この冬、チームは3つ目の大舞台で初のタイトル奪取に挑戦する。

夏の雪辱を期す中村学園女

 札幌山の手に対抗する一番手として挙げられるのが、第2シードの中村学園女(福岡)あたりか。センターの打越裕梨(176センチ)は柔らかなシュートタッチが光るポイントゲッターだ。

 機動力のあるキャプテン神崎(※)由香、安定したシュート力をもつガード白根栞里という3年生トリオが、センターの谷村里佳(183センチ:2年)、ガード安間志織(1年)の下級生を支えて決勝進出をめざす。インターハイの決勝では、圧倒的な強さを誇る札幌山の手に完敗している。今大会は技術のみならず、気持ちの面でどれだけ果敢に相手に挑んでいけるが大きなカギとなる。
※神崎の「崎」の つくりは、「立」の下に「可」。

逸材・宮澤夕貴に注目が集まる県立金沢総合

 中村学園女と同じく決勝進出を虎視眈々(こしたんたん)とうかがっているのが、第3シードの県立金沢総合(神奈川)だ。チームの中心は、オールラウンドなプレーが魅力の逸材・宮澤夕貴(181センチ:2年)だ。巧みなステップワークから繰り出されるシュートは必見である。ディフェンスとの駆け引きに磨きがかかり、ドライブも身につけるなど、国際試合を経験してプレーの幅も広がってきた。U−17女子世界選手権では、安定したプレーで得点ランキング2位、リバウンド4位という確かな数字をフランスで刻んできた。

 この夏のインターハイでは、準決勝で札幌山の手の前に自分たちのよさが出せなかった。今大会は得意のディフェンスで相手のリズムを狂わせ、エース宮澤をどれだけ生かし切れるかがチームの浮沈の鍵を握る。
 この金沢総合が決勝へ駒を進めることができたら、宮澤vs.長岡(札幌山の手)というライバル対決が実現するかもしれない。

名門・桜花学園など、他チームの巻き返しなるか

 昨年全国大会で3冠を遂げている名門・桜花学園(愛知)は、今年は絶対的な強さがなく苦戦を強いられている。インターハイでは札幌山の手の前に撃沈してベスト8に甘んじ、国体は出場がかなわなかった。その桜花学園が、今大会はベスト4入りの巻き返しを狙っている。
 U−18代表の桂葵(180センチ)、U−17代表のガード陣、ヒル理奈、三好南穂、武田綾華を擁して、どれだけ果敢なプレーを見せることができるかだ。井上眞一ヘッドコーチは全国大会49勝を誇る名将であり、卒業生には日本代表がきら星のごとくいる。下級生をスタートに入れて若い布陣で臨む今大会、名将の手腕でチームを波に乗せていきたいところだ。

 この桜花学園に対抗するのが、沖縄インターハイで初のベスト4入りを果たした明成(宮城)か。夏に得た自信を糧に、今大会も旋風を巻き起こせるかだ。そして、この明成の前に立ちはだかるのが、東京成徳大(東京)あたりか。U−17代表の根岸夢(2年)の思い切りのいいプレーと石原愛子(178センチ:3年)のインサイドでの活躍にチームの命運がかかっている。

 U−17、U−18日本代表の近平奈緒子(180センチ)を擁する聖カタリナ女(愛媛)にも注目したい。近平は派手なプレーヤーではないが、当たりの強さが大きな武器で、ポストプレーやリバウンドに堅実な働きを見せる。聖カタリナ女はインターハイが緒戦敗退だっただけに、1、2年生が中心の若いチームで1つでも上を狙いたいところだ。
 この聖カタリナ女と2回戦で対戦が予想されるのが足羽(福井)である。アンダーカテゴリで共にヘッドコーチを務める足羽・林慎一郎監督と聖カタリナ女の一色建志監督の公式戦初の直接対決となる。日頃から交流があり、互いに手の内を知り尽くしているチーム同士なだけに、好試合が予想される。

 この他、U−17日本代表でスーパーサブとして献身的な働きを見せた池谷悠希(富士学苑/山梨)や大沼美琴(山形商/山形)などの果敢なプレーも必見である。また、岐阜女(岐阜)や大阪薫英女学院(大阪)、京都精華女(京都)などの実力チームの存在も侮れない。今年は2年生に好プレーヤーがそろっており、熱い戦いが予想される。

<了>
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著者プロフィール

月刊バスケットボールで12年にわたりミニバスから中学、高校、大学、トップリーグ、日本代表まで幅広く取材。その後、フリーランスとなる。現在はWEBを中心にバスケットの取材・執筆を続けている。ほかに教育分野での企画・編集なども手がけている

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