新市場へとかじを切ったFIFA=ロシアとカタールのW杯開催が意味するもの
旧ソ連・東欧地域で初となるW杯
ロシアは2回目の投票で18年W杯開催国に決定。同国代表のアルシャービン(左)も駆け付けた 【Getty Images】
結局、ロシアは14年ソチ冬季五輪に続き、旧ソ連・東欧地域で初となる18年W杯の切符を手にした。22年にはこちらも初開催となるカタールが選ばれた。
当日の最終プレゼンテーションでは、これまで積極的に招致活動に参加してきたロシアで最も影響力を持つ人物――元大統領で現在は首相のウラジーミル・プーチンが急きょ、出席を取りやめるという奇妙な出来事が起こった。表向きは「招致レースが過熱する中、投票権を持つ理事たちに過度なプレッシャーを与えたくない」というものだったが、本当のところは分からない。いずれにしても、ソチ五輪招致でも大きな役割を果たした最高実力者の不在は、ロシアにとってマイナスになると思われた。
しかし蓋を開けてみれば、意外なことにロシアの圧勝だった。下馬評の高かったイングランド、スペイン・ポルトガルという二大巨頭を抑え、決選投票を待たずに2回目の投票で招致を決めたのだ。22人(24名のうち2人は買収疑惑で活動停止となっていた)による投票のうち、2回目で過半数を超える13票を獲得した。1回目は9票。1順目で脱落したイングランドの2票と、1回目で4票を得たオランダ・ベルギーの半数がロシアに流れたのは間違いないだろう。スペイン・ポルトガルは1回目、2回目共に7票を獲得していたからだ。W杯開催決定を受け、プーチン首相はすぐさま飛行機でチューリヒ入りした。
ロシアへの追い風
とはいえ、それが招致結果に直接反映されるわけではない。ロシアの場合はプーチン首相を頂点に招致活動を推し進め、連邦政府が治安維持や財政保証を確約したことが大きかった。そこが、景気後退に沈むスペイン・ポルトガルなどとは一線を画したところだろう。また、イングランドは英紙のおとり取材によるスクープ、投票直前に放送されたBBCによるFIFA理事の賄賂疑惑の糾弾などで評価を落としたとされる。
もちろん、22人の票がどのように流れたか、正確に知る由はない。票集めや票取引など日常茶飯事だ。その一方で、フリオ・グロンドーナ(アルゼンチン)、ニコラス・レオス(パラグアイ)、リカルド・テシェイラ(ブラジル)の3名がFIFA理事を務める南米サッカー連盟は、スペイン・ポルトガルの共催を支持すると11月26日に発表していた。その理由は「南米にとってスペインは母国のようなもの」だった。一般的には、投票の動機は、商業的あるいは文化的な利害関係によるものとみて間違いないだろう。