新市場へとかじを切ったFIFA=ロシアとカタールのW杯開催が意味するもの
カタールのロビー活動
潤沢な資金を持つカタールはロビー活動で威力を発揮した 【Getty Images】
カタールは母国にビッグネームがいない分、他国のスターをうまく利用した。現役時代の晩年、カタールでプレー経験がある現バルセロナの監督のジョゼップ・グアルディオラ、引退後にポロ選手としたカタールでプレーしたアルゼンチンの英雄ガブリエル・バティストゥータ、あるいはアルジェリア系移民の元フランス代表MFジネディーヌ・ジダンらに招致活動への協力を依頼した。ジダンへの成功報酬は1500万ドル(約12億6000万円)とも報じられた。また、FIFA理事でアジアサッカー連盟会長のモハメド・ビン・ハマムも政治力を発揮し、ロビー活動に威力を発揮したと言われる。
リスクはいまだ高いが……
また、カタールも調査報告書ではすべての候補国の中で最低評価だった。特に懸念されたのが、大会が開催される6月、7月の猛暑である。これについては、太陽光発電による冷却システムを利用し、スタジアムの温度を27度以下に保つことが可能だという。とはいえ、キャンプ地、練習場などすべての施設に冷却装置を設置するわけにもいかず、選手をはじめチーム関係者、観客などの健康面でのリスクはあるだろう。また、9会場を新設、3会場を改修するスタジアムなど、インフラ面にも不確定要素が多い。しかし、カタールもまた政府保証がなされている。国の威信をかけて整備するだろう。
それでも、決定はなされた。あとはW杯開催に向けて突き進むだけだ。ロシアとカタールのW杯招致成功を受け、ここにFIFAのメッセージが読み取れないだろうか? 2カ国の共通項があるとすれば、投票権を持つ理事22人に訴え掛ける要素があったことだろう。中東のカタール、東欧のロシアのW杯開催は、共に世界のサッカーチャートを塗り替える出来事である。それぞれの地域で初のW杯開催であり、そこには巨大な新しいマーケットが横たわる。FIFAが市場開拓を重要視しているのは10年南アフリカ大会でも見られたことだが、今回はさらに拍車がかかった印象だ。
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