真夏の戦いを決めた“開き直り”=2010年サッカーインターハイ総括
プリンスリーグ終盤の状況から劇的に変化した滝川第二
滝川第二は浜田(左)、樋口の2トップを中心に決勝進出を果たした 【写真は共同】
プリンスリーグ関西の序盤こそ、3勝1分けとセレッソ大阪ユースと首位争いを演じていたが、第5節での直接対決に敗れると、「これまでできていたことが急にできなくなって、それ以降はうまくいかなくなった」と樋口が語るほどチームは失速。そこから3連敗を喫した。高円宮杯全日本ユース代表決定戦では、準決勝でヴィッセル神戸ユースと対戦。序盤こそ2トップを軸に攻勢に出るが、15分にPKで先制を許すと、そこから音を立てて崩れていった。神戸ユースの猛攻を止められず、終わってみれば1−9の大敗。試合後の彼らの表情は打ちひしがれていた。
「ここまで崩れるとは思わなかった。僕自身も高校チームには点が取れるけど、Jユースが相手だとまだまだ通用しない。相手のレベルが高くてもプレーできるようにしないと……」と樋口はうなだれたが、まだ悪夢は続いた。その後、チームは兵庫トレセンU−15と練習試合を行った。ベストメンバーで挑んだにも関わらず、結果は1−1の引き分けに終わった。
「中学生を相手に勝てなかった。選手たちは『何で勝てへんのや』、『何でこうなるんや』と思ったと思う。でも、選手たちに『それは違うぞ!』と言いました。おれたちはやれるとちょっと勘違いしていた。そこで『おれたちはうまくない』と気づくことができた」(栫裕保監督)。
「チームは本当にどん底でした。正直、プリンスの序盤は首位争いをしていたから、自分達の中で変な自信を持っていてしまったのかもしれない。でも、どん底になって、そこからはもうやるしかないと思うようになりました」(樋口)
滝川第二も市立船橋同様に、この大会に開き直って臨むことができた。初戦の2回戦・室蘭大谷(北海道)を浜口のゴールで勝利すると、3回戦では地元・那覇西、準々決勝ではルーテル学院(熊本)、準決勝では好調の西武台(埼玉)を下して、決勝まで駒を進めた。どの試合も樋口と浜口のどちらかがゴールを決めた。準決勝では樋口がハットトリックを達成、浜口も決めてアベック弾を記録した。
この結果は単純に2トップの調子が良かっただけではない。その周りがプリンスリーグ終盤の状況から劇的に変化をしたからこそ、生まれたものであった。どん底の時期は、縦に急ぎすぎて、2トップを走らせたり、ドリブルでの単独突破に任せてしまうことが多かったが、今大会では中盤がうまくサイドと中央をバランス良く使って、2トップとより近い位置でプレーし、バリエーションあるパスを供給していた。特にボランチの谷口智紀、右MF濱田量也の成長は著しく、谷口の展開力と縦への突破力、濱田のボール奪取力と精度の高い右足は、今大会でもトップクラスであった。
自分達の状況を受け入れての躍進
両チームにとっては確かな成長の場となったインターハイ。だが、プリンスリーグで結果を残しているチームが必ずと言って結果を残せるわけではない。この2チームの影では、プリンスリーグ東北王者の青森山田が初戦敗退、同関東2位の流通経済大柏が3回戦敗退で大会を去るなど、早期敗退。同北信越優勝の富山第一(富山)、同中国2位の広島観音(広島)などは予選で涙をのんだ。
準決勝に進んだ西武台もプリンスリーグには参加していないし、桐光学園も実力はありながら、プリンス関東で苦戦を強いられ、8位に終わっている。このベスト4に残った4チームのように、一度気持ちをリセットして、開き直って戦ったチームが、結果を残した大会となった。
<了>