レブロンに始まり、コービーに終わったシーズン=NBA2009−10シーズン総括

宮地陽子

ファイナルMVPの獲得で挽回したコービー

ファイナルのMVPを獲得したコービー(右)。レブロンとのどちらが上かという論争にも、最終的には優位に立ったようだ 【Getty Images】

「MVPのトロフィーを得ることはとても名誉なこと。優勝を追うことと両方のバランスをうまく取ることが必要」
──レブロン・ジェームズ(10年5月、レギュラーシーズンMVP受賞に際して)

「(シーズン中は)故障を抱えていただけだった。だからこそ、みんなから年を取ったと言われたことは頭にきていたし、そして今(優勝してファイナルMVPを取ったことが)さらにうれしい」
──コービー・ブライアント(10年6月、ファイナルMVP受賞後)

 レギュラーシーズン後のリーグMVP投票ではレブロンが1位、ケビン・デュラント(オクラホマシティ・サンダー)が2位、そしてコービーは1位票を1票も獲得できずに、総得点でも3位に終わった。その時、コービーは「正しい結果だったと思う。レブロンはすばらしいシーズンを送ったし、ケビンもすばらしかった」と2人をたたえたのだが、内心は、まわりから「世代交代」を言われるたびにかなり悔しい思いをしていたのだろう。その思いを、優勝後に初めて口にした。

 2年連続レギュラーシーズンMVPに選ばれたレブロンにとっては、その2つのトロフィーと引き換えで、コービーが得たファイナルMVPを得ることができるのなら、喜んで交換したはずだ。
 シーズン中から幾度となく繰り返されたレブロンとコービーのどちらが上かという論争。シーズン中にはレブロンがコービーを越えたという意見も多かったが、最終的に、チームを優勝に導いたコービーが一歩リードでシーズンを終えた。

レブロンはFA行使で、移籍の可能性も

「レーカーズに残ることができてうれしい。選手キャリアを通して1つのチームでプレーできるのはとても珍しいこと。どこにも行く気はなかったので(交渉中も)てんびんにかけたことがあったわけではなかった。チームも自分もそれは分かっていた。いろいろなうわさが聞こえてきたけれど、それに邪魔されることなく、こつこつと進めてきたことがよかった」
──コービー・ブライアント(10年4月、契約延長時)

「自分にとって究極の目標は優勝すること。優勝しない限り、自分が歴代に名を残すような選手として認められることはない。だから、一回だけでなく、複数回優勝できるようなチームに行きたい。自分も、成長し続けて、そのチームが勝つ助けとなりたい」
──レブロン・ジェームズ(10年5月、ラリー・キング・ライブのインタビューにて)

 コービーもレブロンも、それぞれのチームとの契約には2009−10シーズン後にFAになるオプションを持っていた。
 しかし、シーズンが終わるまでの間に、2人はまったく違う選択をした。コービーはシーズンが終わる前(4月2日)に、レーカーズとの契約を3年延長(2013−14シーズンまで)した。すでにレーカーズで5回の優勝を果たし、まだ近い将来の優勝を狙い続けられるチームだと思えたからこその契約延長だった。

 レブロンはコービーとは違い、7月1日にフリーエージェントになる可能性が大きい。優勝候補だったキャブスは、レギュラーシーズンでリーグ最高の成績を残しながら、一年前に続き、またも力を出し切れずにプレーオフで敗退、シーズンを終えている。レブロン自身、このままキャブスに残ったとして、コービーがレーカーズでしたように、何回も優勝することができるのか、優勝を競えるチームであり続けることができるのかに疑問を持ち始めたかのようにも見える。

 シーズンが終わった今、7月1日のフリーエージェント解禁日に向けて、リーグ中のレブロン獲得合戦が水面下で早くも始まっている。まだしばらくは、レブロンの話題が続きそうだ。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

東京都出身。国際基督教大学教養学部卒。出版社勤務後にアメリカに居を移し、バスケットボール・ライターとしての活動を始める。NBAや国際大会(2002年・2006年の世界選手権、1996年のオリンピックなど)を取材するほか、アメリカで活動する日本人選手の取材も続けている。『Number』『HOOP』『月刊バスケットボール』に連載を持ち、雑誌を中心に執筆活動中。著書に『The Man 〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。現在、ロサンゼルス近郊在住。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント