宮田会長インタビュー 亀田vs.内藤が成功した理由 内藤を世界王者に押し上げた宮田会長の戦略と覚悟

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亀田vs.内藤戦を実現させた宮田会長にプロモーターとしての心境を聞いた 【矢内耕平】

 日本中が注目した内藤大助vs.亀田興毅の日本人同士によるWBC世界フライ級タイトルマッチから約半年。トレーナーとして内藤を育て、プロモーターとして世紀の一戦を手掛けた宮田博行会長率いる宮田ジム・スポーツクラブ「MGプロモーション」は、3月26日にWBC(世界ボクシング評議会)から業績を評価され特別表彰を受けた。
 誰もが目を釘付けにして勝負の行方を見守った王座戦。興行を主催した宮田会長は、どのような戦略でこの試合を成功へと導いたのか。
 宮田ジム設立から23年。これまでにない発想で難局を乗り越え、日本ボクシング界屈指のプロモーターへと駆け上がった宮田会長に、亀田戦実現までの経緯、今後の日本ボクシング界の進むべき方向性について、熱い胸の内を語ってもらった。

細い糸をつないで何とか実現した亀田戦

さまざまな経緯を経てやっと実現した内藤vs.興毅戦 【矢内耕平】

――内藤vs.興毅を振り返って、大会を成功させたプロモーターとして率直な感想を聞かせてください

 試合を仕組んだのはMGプロモーションなんですが、僕たちが種を植えて日本のマスコミとボクシング関係者の方々が水をやって出てきた花を上手に咲かせたのだという感覚があります。皆さんの力があって、初めて大輪の花を咲かせたのだと思っています。
 ただ僕たちにも戦略があって、こう書いてほしいと思っていたことと次の日の新聞では逆の方向が出たりする。自分たちが意図することを伝えようと、気を使ってしゃべってきたのは事実です。亀田大毅戦では、花火がドーンッと上がってしまうこともあったので(笑)。

――亀田興毅戦実現までの経緯を教えていただけますか

 内藤vs.興毅戦に辿り着くまで、4年のスパンをかけてやってきました。僕たちは小さなジムですから、内藤が世界挑戦するためにいろいろな苦労がありました。
 あのときは、世界戦の権利を手に入れることが大変だったですね。何とか試合まで辿りつけたというのが感想です。ファンの後押しがあって、やっとの思いで内藤がリングに上がることができました。

――07年10月に王者・内藤vs.大毅の一戦が行われました

 内藤vs.大毅戦もすごい紆余曲折がありました。あの試合ができたことで亀田家と宮田ジムとの因縁ができて、その因縁を本当に細い糸が消えないように慎重につないで、こういうことの繰り返しの中で、やっと辿り着いたのが内藤vs.興毅戦の試合だったと思います。
 ホセ・スライマンWBC会長の後押しが一番大きかったと思いますが、神様が守ってくれたとしか言いようがないです。

興毅くんの一言は、ものすごく大きい

注目度が高く報道陣も多い世界戦、宮田会長は冷静に周囲の状況を見ていた 【矢内耕平】

――亀田戦の前にはプロモーターである宮田会長自身がさまざまなパフォーマンスを披露されていましたが

 大きなものに小さなものが挑戦していくという形の方が、見ているお客さんが一番感情移入し易いんじゃないかと。大きな鯨に向かっていく小さな船を漕いでいる宮田ジムの姿を、皆さんに見てもらう。内藤も大きなことを言う子ではないですし、僕らも「オレらはビッグやねん!」と言うタイプとは違います。だから、むしろ一生懸命に努力を重ねて勝負するという立場です。
 試合を作っていく過程が本当に難しかったですが、いろいろな人の力を借り、たくさんの方々に応援いただき、ギリギリの中で試合に漕ぎつけたというのが実感です。

――マスコミの過熱報道を客観的に見ているように感じましたが

 世界タイトルマッチを5、6年やってきたキャリアですかね。本当は一昨年に内藤vs.興毅戦がクローズアップされて、結果として実現しませんでしたが、そのときにやっていたら(過熱報道に)巻き込まれていたかもしれません。
 僕らは上海(09年5月、熊朝忠との防衛戦)で失敗して(JBCから厳重注意処分)、ゴタゴタの中でどうやってリカバリーしていくかというノウハウができているのかもしれません。
 僕は亀田家を応援しているんですよ。興毅くんが内藤と対戦するときに、記者会見で内藤を挑発する発言をされたんですが、帰るときに僕のところに来て「しょうもないことを言ってすいませんでした。盛り上げようと思って言いました」と言ってくれました。ポンサクレック戦の前には、僕が興毅くんに勝ってほしいと思っているのを察して「絶対に勝ちますから、任しといてください」って興毅くんは言ったんですよ。
 時には敵味方なんですけど、助けられてきたし、僕らに何かできることがあれば力を貸したい。プロモーターとして一番苦しかったときに声を掛けてくれてた興毅くんの言葉は、ものすごく大きかったですね。

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