負の連鎖にはまったアルディージャ=不調脱出へもがいた3月

土地将靖

スタートは順風満帆だったが……

「泰史のために」と臨んだ開幕戦では白星スタートとなったが……。 【写真は共同】

 スタートは順風満帆だった。しかし、1つのピースが欠けた途端、次から次へと負の連鎖反応が巻き起こる。指揮官自ら「まるで呪われたかのようだった」と語った3月、大宮アルディージャは苦難の中、その先に差し込むかすかな光を目指してもがいていた。

 登録選手の3分の1を入れ替えた今季、開幕戦のセレッソ大阪戦の先発メンバーには、守備陣を中心に実に5人の新戦力が名を連ねた。心配されたコミュニケーションも、グアム、宮崎とキャンプでトレーニングを積み不安はない。主戦クラスの選手が出場した練習試合では、PK以外では失点していないという事実が自信の裏づけとなった。
 橋本早十のコーナーキックが直接ゴールに吸い込まれるという幸運な先制点で優位に立つと、石原直樹、ラファエルが加点し、昇格チームにJ1の力を見せつけた。「今までも自信はあったけど、本番でどこまでやれるのか、という不安ももちろんあった。みんながハードワークすることがこうやって勝利に結びつくということを再認識できたので、これを続けることができれば、ずっといい状態でいけるんじゃないかなと思います」。キャプテンの藤本主税は成果を語った。

 何よりも、この試合は塚本泰史のために勝利をささげる必要があった。「泰史を元気付けてやろうと、とにかくあいつの笑顔が見たいという一心でやってきた」(藤本)。そのモチベーションの大きさは計り知れない。「泰史に力を与えようとみんなで誓ったゲームだったけど、逆にわれわれが泰史に力をもらった感じだな」(ラファエル)。チームと塚本が、一緒につかんだ勝利だった。

 だが、好事魔多し。試合終了間際のロスタイム、スペースへ抜け出ようとしたラファエルが、右ふとももの裏側を押さえながら転倒。試合後に下された診断は、右ハムストリング肉離れで全治2カ月。張外龍(チャン・ウェリョン)監督は「基本さえできれば、誰が代わりに入っても問題ない」と強がったが、決定力だけでなく、攻撃の過程において非常に重要な役割を担うエースの戦線離脱は、痛くないはずがなかった。

エース、ラファエルの負傷が響く

 第2節、対戦相手は開幕戦に続きやはり昇格チームのベガルタ仙台。昨年、天皇杯3回戦で敗れた借りを返さんと、敵地ユアテックスタジアム仙台に乗り込んだ。
 負傷のラファエルに代わり藤田祥史が入った以外は開幕戦と同じメンバー。「ラファエルが抜けたから、と言われるのは自分も悔しい」(藤田)。今季初先発に、そう意気込んで臨んだ試合だった。

 だが、仙台もアルディージャを研究していた。「ちょっとプレスに行くとすぐ前へ大きく蹴られて、間延びした形になることが多かったですね」(藤本)。こぼれ球の奪い合いで主導権を握られ、そこからカウンターを繰り出される。なかなかペースをつかめないまま、PKで仙台に先制を許してしまった。
 すぐさまマトが同点ゴール。橋本がちょこんと蹴ったフリーキックを、左足で豪快にゴールに突き刺した。
 しかし、直後にセットプレーから再逆転。後半にもセットプレーで追加点を与えてしまった。「1点目のPKの判定で、この程度でPKになってしまうのか、という気持ちになってしまって、体の寄せがルーズになってしまっていたかもしれません」(アン ヨンハ)。そもそも、PKを与えたファウルもセットプレーの中。梁勇基というプレースキックの名手を擁す仙台を相手に、注意していたはずのセットプレーですべての失点を喫したことは、屈辱的だった。

 後半は押し込んでいた時間帯もあり、攻撃がまるで機能しなかったわけではない。「負けた気がしない」という内田智也の気持ちも理解できる。だが、勝ち点0はまぎれもない事実。「自分たちのサッカーを構築している段階でもある。今日は今日で1つ勉強になったので、絶対に次に生かしたい」(藤本)。次節の王者・鹿島アントラーズ戦へ、決意を新たにした。

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著者プロフィール

1967年1月28日、埼玉県生まれ。93年、現在のWEB版「J's GOAL」の前身である試合速報テレホンサービス「J's GOAL」にて、試合リポーター兼ライターとして業界入り。2001年よりフリーランスとなりライターとして本格活動を開始、大宮アルディージャに密着し週刊サッカーマガジン(ベースボール・マガジン社)ほか専門誌等に寄稿している。

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