負の連鎖にはまったアルディージャ=不調脱出へもがいた3月

土地将靖

意思疎通の乱れから王者・鹿島にも敗戦

エースと主将の負傷離脱、不運な退場と、大宮にとっての3月は負の連鎖が続いた。 【写真は共同】

 早くも迎える王者との一戦へ、暗雲が立ち込める。左サイドバックの村上和弘がひざの不調から一時離脱した。「長丁場のリーグ戦の間にはいろんなことが起きる」と指揮官は意に介さない。むしろ、これまで試す機会に恵まれなかった坪内秀介をテストする絶好の機会と、ポジティブにとらえた。
 今季初めて布陣も変更。「鹿島の中盤を抑えるために」(張監督)とアンと橋本、金澤慎を中盤に置き、石原・内田・藤本を3トップ的に並べる4−3−3で王者への対抗を図った。

 最終ラインの裏を1本のパスで狙う鹿島のダイレクトプレーに対し、前半はよく耐えた。だが、後半15分足らずで藤本が左ひざを負傷し交代。代わって投入されたのがFWの市川雅彦で、布陣も自然と4−4−2へと変わっていく。さらにその10分後には、そこまで左サイドをしっかりと固めていた坪内が足をつり、直後にピッチを後にする。決して守備型とは言えない土岐田洸平も守備に奮闘したが、その左サイドからのクロスで鹿島に決勝点を許す。0−0という均衡の中、積極的に点を狙いにいく攻撃陣と、まずは勝ち点1を念頭に置いていた守備陣とで、試合に対する狙いの食い違いも垣間見えた。
「クレバーに守ってそこから、という形で良かったのではないか。強豪相手に大金星を取ることはもちろんいいことですけど、ああいう試合ではまずは連敗を避ける、まずは断ち切るということが大事」。最後尾からチームを見守っていた北野貴之はそう振り返る。
「まずは断ち切る」――次のFC東京戦でこそ、連敗を断ち切らなければいけない。だが、断ち切るどころか、とんでもないことが待ち受けていた。

ルーキー金久保順の台頭が一筋の光明

 第4節のFC東京戦では村上が左サイドバックに復帰。今季初先発の市川が石原とコンビを組み、藤本を欠く中盤は内田と橋本が攻撃を担う。狙いは連敗脱出ただ1つ。だが、そんな出はなをくじくようなことが、キックオフ後わずか10分足らずで起こる。
 中盤でボールを持った羽生直剛に対し、アンのタックルが鋭く狙う。すぐさま審判の笛。少しラフだったかもしれない――本人も、周りの選手もそれぐらいの気持ちだったろう。だが、提示されたカードの色を見て皆がく然とする。黄色ではなく赤。一発退場だ。
 さらに前半終了間際、マトがこの日2度目の警告を受ける。またも退場。0−0ではあったものの、残り45分間を11対9という数的不利の中で戦わなければならなくなった。

 通常10人でカバーするピッチを8人で守ることになり、1人当たりの運動量は必然的に多くなる。しかも、相手に合わせて動かされる守備時の疲労は、自発的に動く攻撃の場合よりも大きく、消耗の度合いは相手の比ではない。北野や深谷を中心にFC東京の攻撃を跳ね返し、攻撃陣も少ない人数の中カウンターを狙う。しかし、2人の数的不利はいかんともし難く、自陣に張り付く時間が多くなった。北野の好セーブがなければいったい何点取られていたのだろうか。必死に守ってはいたが2点を失い、3連敗を喫した。

 主力、しかもエースストライカーと主将という重要な選手をけがで失い、1試合で2人退場という大きなダメージを受け、3連敗を喫した3月。だが、その最後の日に行われたヤマザキナビスコカップの京都サンガF.C.戦で一筋の光明が見えた。ルーキー金久保順の台頭である。
 デビュー戦とは思えない大胆さで、積極的にゴール前へ飛び出していく。オフサイドであるとして取り消されたが、その正確なフリーキックから放たれた坪内のヘディングシュートは、ゴールネットを揺らした。
 藤本の負傷で石原が回っている右サイドハーフを埋めることができれば、石原は本職のFWに専念できるため、さらなるバリエーションが期待できる。この試合で公式戦での連敗をストップしたことで、早い時期に指揮官の英断が下されるかもしれない。
 藤本の復帰は流動的で、ラファエルの復帰も5月初旬の予定。だが、そこまでにリーグ戦は少なくとも4試合はある。アルディージャは、ラファエルのワンマンチームではないはず。残された選手の奮起に期待したい。

<了>

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著者プロフィール

1967年1月28日、埼玉県生まれ。93年、現在のWEB版「J's GOAL」の前身である試合速報テレホンサービス「J's GOAL」にて、試合リポーター兼ライターとして業界入り。2001年よりフリーランスとなりライターとして本格活動を開始、大宮アルディージャに密着し週刊サッカーマガジン(ベースボール・マガジン社)ほか専門誌等に寄稿している。

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