高知高、“魔球”操るエースと豊かな個性で甲子園へ=第82回センバツ高校野球・直前リポート

寺下友徳

大胆不敵なナックルを手に夢の甲子園へ

エース・筒井はナックルだけでなく、スライダー、カーブを操る頭脳派左腕 【寺下友徳】

 米大リーグではティム・ウェイクフィールド(ボストン・レッドソックス)、最近では女性プロ野球選手・吉田えりが決め球としていることで一躍脚光を浴びるようになった“魔球”ナックルボール。打者の前で不規則に揺れて落ちるこの変化球の使い手が、実は今回のセンバツにも登場する。
 大会第3日の第1試合で神港学園高(兵庫)と対戦する高知高(高知)の筒井太智(3年)だ。島田達二監督から背番号1を託される筒井は「コースはホームベースの端とバッターボックスのラインとの間に、高さはひざ下に投げることを目指している」。
 最速135キロのストレートとスライダー、カーブを駆使し打たせて取る頭脳的ピッチングが最大の持ち味だが、同時に高知市立愛宕中3年時の5月に「梶原大輔監督(現・高知商高コーチ)から『こんな球を投げてみたら?』と言われて」始めたナックルを操る技巧派サウスポーだ。

 とはいえ準優勝でセンバツ行きを確実にした昨秋の四国大会でも今治西高(愛媛)との決勝で1球を投じたのみと、これまでは「相手を惑わせておいて色々な球種で勝負できる」見せ球としての側面が高かったナックルボール。だが、この冬には前監督である中村敏彦部長などからの助言を受け、連日150球以上の投げ込みに20球程度ナックルボールを混ぜるなど、筒井はセンバツに向け、見せ球を「打者を悩ませる」決め球へと変える地道な努力を続けてきた。
「小さいときから夢見ていた場所」甲子園で、筒井は果たしてナックルボールをいつ、どのカウントで投じるのか? 「今できることをやって、いい調子で試合を迎えたい」と最後まで殊勝な言葉に終始した左腕の大胆不敵なナックルボールには要注目である。

一線を画す異色のチームカラー

試合中の島田監督の雷に、ナインは闘争心を思い出した様子だ 【寺下友徳】

 さらに高知高における“異色”は筒井だけではない。例えば昨夏甲子園で1番・レフトで常葉橘高(静岡)のエース・庄司隼人(現・広島)から3安打を放つなど活躍した池知佑也(3年)は、166センチ70キロの小兵ぶりを全く感じさせない「積極的に一発で仕留める」フルスイングが魅力。池知自身も夏の常葉橘高戦で1点を追う9回に左中間を破る長打で三塁を狙い、寸前でタッチアウトになったシーンをあえて引き合いに出し、「次は三塁打でセーフになりたい」とセンバツでのリベンジに闘志を燃やす。

 またライトの山崎隼司、ショートの亀井雅人、筒井に続く2番手右腕の西川大地の2年生トリオは、高知中3年時に第25回全日本軟式野球大会で全国制覇を成し遂げている、いわゆる「黄金年代」。個性と実力を兼ね備えたタレントが随所に散りばめられていることで、高知高はチーム全体が通常の高校野球とは一線を画す異色のチームカラーを醸し出している。
「ウチは上がったら上がりっぱなし。誰にも止められない」(池知)一方、「個性が豊かすぎるので、チームをまとめるのは大変です」とキャプテンの坂本大志(3年)が苦笑いを浮かべるように、これまでの練習試合における成績と内容は浮き沈みが激しいものになっている。だが3月16日、高知商高との雨中の練習試合後に島田監督から落とされた雷によって、選手たちは高校野球の原点である“闘争心”を再び思い出したようだ。

 あとは「雑誌を見ると力も技術的にも(相手が)上なので引かないようにやる。接戦を制したい」(坂本)と神港学園高戦に向けて突き進むのみ。順調に日程を消化すればその成果を見せる時は3月23日・火曜日である。

*学年は新学年

<了>
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著者プロフィール

1971年、福井県生まれの東京都東村山市育ち。國學院久我山高→亜細亜大と進学した学生時代は「応援道」に没頭し、就職後は種々雑多な職歴を経験。2004年からは本格的に執筆活動を開始し、07年2月からは関東から愛媛県松山市に居を移し四国のスポーツを追及する。高校野球関連では「野球太郎」、「ホームラン」を中心に寄稿。

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