常識を覆す川島高、“確率向上”で挑む甲子園=センバツ高校野球・直前リポート
グラウンドにそろう不利な条件
21世紀枠での甲子園出場を決め、喜ぶ川島高ナイン 【寺下友徳】
2月12日、雨上がりとなった取材日。「ここは県内でも1、2を争う水はけの悪さなんですよ」と苦笑いする北谷雄一監督の目の前には、内野ノックができる足下の確保すら不可能な軟弱なグラウンドがあった。しかも、一二塁間の10メートル後ろにはサッカーボールが飛び交い、レフト側奥深くにはソフトボール部の姿も。川島高の所在地は満々と水をたたえる吉野川流域の狭あい地にある徳島県吉野川市川島町であるが、硬式野球部は学校の立地条件同様、ほとんどの活動日がスモールスペースでの練習を強いられているのだ。
「狭いグラウンドの効率的練習」の実態
リートブロックに軸足を乗せるティー打撃で「インサイド・アウト」を体感 【寺下友徳】
さらに、この日フリーバッティングと同時進行で行われたレフト方向への外野守備練習におけるノッカーは、なんとOBの服部泰卓(現・千葉ロッテ)から寄贈されたピッチングマシン。スタート地点を3箇所にとった外野手たちは、上向きに置かれたマシンが放つボールの落下点へ次々と走りこみ、ソフトボール部の邪魔にならない位置でさまざまな形での捕球を繰り返していた。
確かに、高校生の一流クラスの打球スピードで、かつほかの部活の邪魔にならないように、同じ場所に飛ばす芸当はピッチングマシンでなければできないもの。「マシンでの捕球は後ろへの打球を捕るのに役に立っています。球際にも強くなりました」と川島高打線の切り込み隊長である大西学(3年)も話すように、着眼点を変えたピッチングマシンの有効活用は、紅白戦を行うのも困難な選手たちの実戦勘を養成する助けになっている。
全国モードの練習加え、いざ夢舞台へ!
「例えば、野球のエラーは内野守備のミスがほとんどですよね。だから、ウチが内野守備練習しかできないことも、エラーを防ぐ確率の高いことができたと考えればいい。僕は攻撃も守備も確率をいかに上げるかを考えて、そのためにどんな準備をできるかを考えています」。
野球は、確率の向上が勝利に直結するスポーツ。個々の実力は高くない川島高であるが、右横手の東谷祐希(3年)を大黒柱にした昨秋の快進撃が決して偶然の産物ではないことは、一連の練習と監督、選手たちのコメントを見聞きしても十分にうかがえた。
なお、現在の川島高はピッチングマシンを下に向け、内野ゴロの捕球練習に活用するなど、全国で戦うための新たな練習にもチャレンジしている。主将の藤畠慶祐(3年)も「普段練習していることを出したい」と意気込む春の夢舞台まで、彼らの確率向上への努力は続いていく。
※学年は新学年
<了>
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