デビュー20周年記念興行 折原昌夫インタビュー(後編) 天龍源一郎の背中を追い続けた20年

安田拡了

折原はデビュー20周年興行で天龍への熱い思いをぶつける 【t.SAKUMA】

 トンパチで知られるプロレスラー・折原昌夫の「メビウス第八章・折原昌夫デビュー20周年記念興行」(2月22日、東京・新宿FACE)の開催が決定した。折原はメーンイベントで、「男の人生」のすべてを教えてもらったという“オヤジ”天龍源一郎とタッグマッチで対決する。
 天龍のハッスル参戦に対して「あれはオヤジじゃない」と反発した折原は、“天龍源一郎の復活”を掲げる今大会に、天龍が持つ本来のすごさを引き出してやるという強い決意で臨む。
 後編では、オヤジと慕う天龍源一郎に対する熱い心情と、デビュー20周年記念興行の見どころについて聞いた。

「僕は天龍源一郎という鎧に守られている気分だった」

付け人時代、折原は天龍の戦う姿を見て天龍が大好きになったと語る 【t.SAKUMA】

 天龍さんの付け人をやらせてもらうようになったのですが、僕は米の研ぎ方も知らないくらいの世間知らずでした。天龍さんにはよくゴツッと殴られました。
 付け人はかばん持ちですから、天龍さんと一緒にタクシーに乗るのですが、いちいち「どこに行かれるんですか?」と聞いてしまうんですね。僕としては、着いたらああしてこうしてとイメージを描いておきたいので事前に知りたい。しかし、そういう質問が天龍さんにしてみればナンセンスなんです。聞いた瞬間にゴツッと殴られる。「お前は黙ってついてこればいいんだ」と。顔じゃねえってことです。上の人に対して質問をするという立場ではないということなんです。

――「顔じゃねえ」は天龍さんの口癖でもありますね。天龍さんに胸を借りる稽古はしましたか?

 一度もなかったです。僕は早く会場について練習をしているんですけど、それも見てくれたことがあるのかなと思うくらい。言葉でも教わったことはなかったですね。
 ただ、僕は天龍さんの試合をセコンドについて食らいついて見ていました。そこで「こうするんだ、ああするんだ」と一人で考えていました。天龍さんの放出しているパワーというのが明らかにほかのレスラーと違うなと思いましたね。
 これまでタイガーマスクしか好きじゃなかった折原昌夫は、それからというものクルクルパーマが大好きになりました(笑)。とにかく、かっこいいんです。派手なことはしないんですけどね。

――天龍さんに殴られて恨んだことはありましたか?

 そんな気持ちは一度もなかったです。天龍源一郎が黒といえば黒。白といえば白なんです。恨むようなことなんて一度もなかった。全面的な信頼感を持っていましたからね。当時の全日本プロレスが「天龍さんに合わせて動いている」ということが僕にも分かったくらいですから。全日本(の顔)はジャイアント馬場と天龍源一郎だと僕は思っていました。
 天龍さんの付け人をやって、急に生活が楽になったなというのは感じていました。金に関しても先輩方の接し方に対しても。僕は天龍源一郎という鎧をまとって守られているような気分でしたね。

「佐山さんとの練習でプロレスラー折原昌夫が復活した」

折原が精神的にプロレスができなくなったとき、声を掛けてくれたのが佐山だった 【t.SAKUMA】

――折原選手は数年前に失踪事件を起こしましたね

 原因は分からないんですが、精神的にプロレスができなくなってしまった。そんな状況があった時に、佐山さんが僕を誘ってくれたんです。なんで僕に電話をくれたのか未だに分からないんですが、佐山さんは僕がプロレスラーとして駄目になったのを記事で見て知っていたようで「リングを去るのは早い。もう一回戻ってこい」と連絡をくれたんです。
「恐怖を感じるようになったから」と言ったら「じゃあ、うちで練習をしなさい」と。だから、とことんまでリアルジャパンで練習をしました。昼まで新宿二丁目で酒を飲んでいても、絶対に道場に行きました。実を言うと酒も飲めないほどだったんですけれど、リアルジャパンで練習をやり始めてから酒も復活したんですよ。

――佐山さんの期待に応えるためにも恐怖を克服しなければいけなかった

 いえ、そうではなかったですね。練習していても、なぜ自分がここで練習をしているのかさえ分からなかった。ただ、またプロレスの世界に戻れるかもしれないという希望があったので、とにかくやるしかないと思っていただけなんです。

――どんな練習をしていたのでしょうか?

 佐山サトルという人は「強いものがプロレスラーになるんだ」という思想の練習ですから、本当に強くなるためのガチガチの練習が始まりました。僕の中では新しく、また厳しかったですね。これまでのプロレスの練習に比べて、痛みは何倍もありました。でも、そういう練習の中でプロレスラー折原昌夫が復活した。

「天龍さんはあの時使った時間を悔やんでいると思う」

折原は天龍のハッスル参戦を見て激怒したこともあるという 【t.SAKUMA】

――折原選手の20年は実に濃いですね

 そう言われれば濃いですね。激しすぎますね(笑)。プロレスは夢を売る商売というけれど、馬鹿なプロレスラーじゃないと夢は売れないような気がしますね。天龍源一郎も佐山サトルも、いい意味で馬鹿だから夢が売れるんですよ。僕、馬場さんにも笑いながら「馬鹿だなあ」と言われましたよ。

――「馬鹿だなあ」はレスラーにとって勲章のような言葉ですよね。ところで、20周年記念興行では天龍さんとタッグ対決を行います。天龍さんのハッスル参戦にも触れることになると思いますが

 天龍さんはそこから逃れることはできないでしょうね。逆に、それについて聞かれないとあの人の性格では嫌だと思う。僕は天龍源一郎のレボリューションの一員でした。革命をやろうとしていたんですよ。天龍さんがハッスルに出た時、「ああ、いままでやってきたレボリューションの革命って何だったんだ」と思いました。
 僕の頭には龍が彫ってあるんですよ。今まで誰にも言っていませんでしたけれど、これは天龍の龍ですから。僕は天龍のオヤジが何らかの事情があったんだと思いますが、ハッスルでやった。僕は「昔のかっこよかった天龍源一郎はどこにいってしまったんだ!」と喪失感がありました。ハッスルのリングで天龍さんが女に踏みつけられていたんですよ。「何をやってるんだ!」と雑誌を見て怒ったこともあった。

――そんなこともありました

 ただ、今の天龍源一郎はそれを深く悔やんでいます。誤解されると困るけれど、ハッスルのことを悔しく思っているんじゃない。天龍さんはあの時使った時間を悔やんでいると思うんです。

――今、天龍さんに対して思うことはありますか?

 まだまだお客さんの心を熱くさせることができると思う。天龍源一郎がこれからやることを見てほしい。そのきっかけをこの興行で出してもらいたい。だから20周年記念興行をやるとなった時、僕から天龍さんに出てくださいと頼みました。僕の思い出の大会ですから、絶対に出てもらわなければいけないと思いましたね。
 僕の20年間を20分くらいの試合の中ですべて出るとは思いませんけれど、思い出の強い人間とやりたくて、僕の中では天龍源一郎、佐山サトルの2人は外せなかったです。佐山さんは今回、猪木さんの興行に参戦することになっていましたので、今回のカードになったわけです。

「この興行の使命は天龍源一郎を復活させること」

折原はこの興行で使命だと語る“天龍源一郎の復活”をどのような形で見せてくれるのだろうか 【リアルジャパンプロレス】

――なぜ天龍さんとタッグを組まなかったのでしょうか?

 天龍源一郎にガンとぶつかっていきたいという気持ちが強かった。天龍さんを動かそうという気持ちでしょうね。ガーッと動く元気のいい天龍源一郎を見てほしい。

――天龍さんの持っているものをすべて出させてやりたい

 出してもらいたいですね。忘れてしまっている動きとか、タイミングとか……。僕が全日本プロレスで天龍さんの付け人をやっていた時、セコンドにいて震えるくらいの試合を見せつけられた。あっという間に試合が終わってしまっているくらいに興奮した毎日でしたからね。そういう天龍源一郎を見せつけたいです。それには僕がガンガンぶつかっていくしかない。

――タッグパートナーの川田選手に対してはどんな気持ちですか?

 川田さんは全日本時代の先輩なんですけれど、体が大きくなれなかった時に、ウエイトのやり方とか必要なことを教えてくれました。同じレボリューションで、川田さんにとっても天龍さんは当たりたい相手だと思いますよ。

――平井選手が天龍さんのパートナーですが

 彼はWARで僕の後輩なんですけれど、彼のお父さんはミツ平井さん。天龍さんの先輩で、レスリングもお父さんに似てオーソドックス。その意味で天龍さんのパートナーになってもらいました。

――レフェリーも和田京平。後楽園ホールの方が良かったのではないですか?

 いろいろな方にそう言われます。でも、僕はたかだかデビュー20年。後楽園はまだまだ“顔じゃない”ですよ(笑)。

――“顔じゃない”ですか。天龍さんの口癖ですね(笑)

 今回はメビウスを旗揚げした時に世話になった選手もいっぱい参加する。IWAジャパンで活躍した竹迫望美もこの興行で引退します。でも、何と言ってもこの興行の大きな使命は天龍源一郎を復活させることですね。

(取材・文:安田拡了/協力:リアルジャパン)

■「メビウス 第八章 折原昌夫20周年記念興行」
2月22日(月)東京・新宿FACE 開場18:00 開始19:00

<メーンイベント 折原昌夫デビュー20周年記念試合 タッグマッチ>
天龍源一郎、平井伸和
川田利明、折原昌夫
※レフェリー和田京平

<セミファイナル エル・メホールデ・マスカラード選手権試合 シングルマッチ>
[王者]エル・サムライ
[挑戦者]ザ・グレート・サスケ

<第4試合 竹迫望美引退試合 シングルマッチ>
竹迫望美
亜利弥

<第3試合 タッグマッチ>
D・東郷、ブオ・モチェロ(エイペックス・オブ・トライアングルチーム)
金村キンタロー、B・B非道(トウキョウスケベボーイ)

<第2試合 J・Rメビウスギャラ争奪バトルロイヤル>
月光vs.ヘラクレスvs.ラテテデモーvs.ドクロマンズ1号・2号・3号
※レフェリー姉崎信康

<第1試合 タッグマッチ>
NOSAWA論外(東京愚連隊)、華名
藤田ミノル、真琴
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