男子決勝、勝負の鍵を握る注目選手たち=天皇杯・皇后杯バスケ オールジャパン2010
準決勝のパナソニック戦を逆転で勝利をおさめたアイシン。抜群の安定感で連覇を狙う 【(C)JBA】
とは言え、選手個々のプレーもチームの状態も決して昨年のままではない。両チームに新しい風を吹かせている2人の選手に焦点を当て、決勝の行方を占ってみたい。
新加入のシックスマン、朝山正悟の存在感
準決勝での朝山のスタッツ(個人成績)は、ベンチから約20分の出場で4得点だった。だが、この数字以上に、コートやベンチでさまざまな表情を見せる彼の存在感は大きい。特に、昨シーズンは天皇杯とリーグの2冠を達成し、今シーズンもリーグで断トツの首位と、王者の貫録が漂うアイシンにとっては、新鮮なキャラクターと言える。
「いい雰囲気を作ることがシックスマンの役割ですし、何よりアイシンは優勝に向かって一丸になっているすごくいいチーム。だから自然にそういうプレーや表情が出るんだと思います」と朝山は言う。先述の成績から分かるように、アイシンには役者はそろっている。そこに、いい流れを増幅させ、悪い流れのときはそれを断ち切れるように振舞う朝山が加わった王者は、3連覇に向けまさに死角なしの状態だ。
ジャーニーマンが決勝で得る“答え”とは
今季からアイシンに移籍した#6朝山正悟。シックスマンとして重要な立場を担う 【(C)JBA】
「もちろん慣れるのは大変ですが、一方で人との新しい出会いによってここまで成長させてもらったとも思います。だから辛い部分より楽しいところを探してやるようにしていますし、今の自分の立場にもすごく満足しています。あとは、目標のチャンピオンをつかめれば――。自分がアイシンに来た答えが出る、そんな気もしています」
王者・アイシンの中で、逆に言えば朝山だけが天皇杯、JBLでの優勝経験を持たない。主力として40分プレーできる力を持ちながらも、強い所でやりたい、その一心で行き着いたチームで悲願の結果をつかむことができるか。決勝でのプレーに期待がかかる。
急成長を遂げスタメンに抜てきされた日立・近森裕佳
「決勝では欲を出さず、ディフェンスを頑張りたい」と語った日立#27近森裕佳 【(C)JBA】
では、残る3番ポジションはというと、2年目の#22近森裕佳が奮闘している。レギュラーシーズンでコツコツとプレータイムを伸ばし、オールジャパンでは満を持してスタメンに抜てき。小野秀二ヘッドコーチも「1年間アウトサイドのプレーを学んできたことが、ここにきて非常に良くなってきた」と目を細める成長ぶりを見せているのだ。
特に日立はパワーフォワードの竹内譲が外からのシュートを積極的に放っていく分、学生時代にペイントエリアで身体を張ってきた近森のリバウンド力は大きな武器になっている。
「前回のオールジャパンは準々決勝と準決勝の、勝負の決まった残り数分しかコートに立てなかった。正直、自分の中で“オールジャパンを戦った”という感覚はゼロに近かったです。それに比べたら、プレータイムが短いのは悔しい部分なんですが、今年はスタートで出してもらっているので、決勝でもしっかり自分の力を出してチームに貢献したい」と近森自身も意気込みを口にする。
ディフェンスのキーポジションで切磋琢磨する若手3人衆
近森はポジションを争う3人の中で、「自分が1番経験も実績もない。ヘッドコーチの信頼を得て2人の中に割って入るには、2人以上に努力しなければならない」と練習に励んできた。ここまでは、「大屋も含めて3人で切磋琢磨(せっさたくま)しながら、力を上げてくれれば」という小野ヘッドコーチの思わく通りに来ているというわけだ。
小野ヘッドコーチがこのポジションに求める役割は、「リバウンドと走ること、そして身体で負けないディフェンス」の3つだ。準々決勝、準決勝とシュータータイプの選手とのマッチアップが続いたが、決勝を戦うアイシンは身体能力もパワーもある#7ジョシュ・グロスを3番ポジションに据える。「僕らのディフェンスの出来が試合に影響する」とは酒井。一方の近森も「決勝で1番求められるのはディフェンス」と自覚している。彼らの伸びがアイシンの想定を超えたとき、それは日立を初の頂点へ導くキーになるかもしれない。
注目の男子決勝は、11日の14時より行われる。
<了>
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