地力を見せたJOMOとトヨタ自動車が決勝へ=天皇杯・皇后杯バスケ オールジャパン2010 第6日
富士通を破って決勝進出を決め、喜ぶJOMOの大神(中央)、諏訪(右)ら=国立代々木競技場 【写真は共同】
攻守で着実な伸びを見せてきた富士通
リーグが中断した12月は、ディフェンス強化に取り組んできた。「午後の練習ができないぐらい、午前中から走り込んできた」という。その結果、大幅な体力アップ、脚力強化につながり、その成果は、準々決勝のデンソー戦での見事な守りに如実に出た。
今季の富士通は若手の#51中畑恵里、#45名木洋子、#8鈴木あゆみをスタメンに据え、これら3人をベテランが支えることで伸びてきた。パッシングから流れを作って確率のいい外角シュートを沈めるというチームスタイルは、今季から指揮をとる岡里ヘッドコーチのもとでさらに磨かれている。目下、Wリーグでは平均得点79.50で1位、平均失点66.20もトヨタ自動車に次いで2位である。攻守で着実な伸びを見せている中で迎えた今大会の準決勝だったのだ。
JOMOのディフェンスの前に失速
速いパッシングからの外角シュートで流れを作りたかった富士通だったが……。写真は#45名木洋子 【(C)JBA】
試合は、JOMOがマンツーマンとゾーンを併用して富士通のリズムを封じ込んだ。立ち上がりから当たりの強いJOMOに対してパスも人の動きも止まりがちな富士通は、得意の外角が決まらず、ペースがつかめない。第1ピリオドはJOMOの#15諏訪、#1大神らの活躍で14−22とリードを許した。
一方、富士通も第2ピリオドで中畑や名木、#5畑恵里子らの踏ん張りで反撃。34−35と食い下がって勝負を互角に戻す。
だが、一気に突き放しにかかった第3ピリオドで、富士通は逆に大きく失速してしまう。立ち上がりこそ鈴木のスリーポイントで逆転したが、ここからJOMOの#8田中利佳に思い切りのいいミドルやスリーポイントを許してしまう。さらに当たりの強い相手ディフェンスに決め手を欠いて、7分近くもノーゴール。「サイドから崩していくように指示し、もっとスクリーンを使ってシュートを狙うように話したが、うまくいかなかった」という岡里コーチ。起死回生で敷いたゾーンも、うまく機能しなかった。
ベテラン#1三谷藍 にファウルがかさんだことも痛かった。第4ピリオドは思い切りのいいシュートが要所で出たが、JOMOを切り崩すには至らず。リーグNO.1を誇る得点力も、この準決勝では完全に封じられ、61−70の完敗となった。
これからの課題が見えてきた富士通
結局、富士通にとっては、不安材料に上げていた“若さ”が大きく出てしまった一戦となった。JOMOはこの3年、オールジャパンとリーグでの大一番で、敗戦をバネに勝負強さを身につけてきた。対する富士通は、スタートの3人が初の大舞台。我慢強さ、試合運びの巧さで、JOMOに一日の長があったといわざるをえない。
「ここ一番で力を発揮する集中力がまだまだ足りないのかもしれない。勝ちたいという気持ちも、JOMOがほんの少し上だった」と話す岡里ヘッドコーチ。「この準決勝という舞台も、1つ1つの戦術にはまって負けることも、すべてが経験。今は、負けるたびにそれを次へつなげるための糧にしていくだけです」
悲願の初Vへ挑むトヨタ自動車
日本航空はトヨタ自動車に完敗。果敢に攻めた#8岩村裕美のがんばりが目を引いた 【(C)JBA】
決勝戦は、トヨタ自動車対JOMOという初顔合わせとなった。トヨタ自動車は1963年の創部以来初の決勝進出だ。この数年、ベスト4止まりで涙をのんできたが、今大会は危なげなく勝ち上がった。目下、Wリーグでは首位を走り、JOMO戦との相性もいい(2戦2勝)。「今季は十分に力がある。チャンスなので何としても実現したい」と、悲願の初優勝へ闘志を燃やす丁海鎰ヘッドコーチ。
3年連続25回目の決勝進出で、V2を狙うJOMOも、きっちりと調子を上げてきた。対するトヨタは、優勝経験があるのは今季移籍した#12矢野良子のみ。
「ほかは決勝の大舞台での経験がまったくない。そこはJOMOにアドバンテージがあるが、クロスゲーム(接戦)ならば勝機はある。ファイナルを意識しないようにしてトヨタのバスケットをしたい」と丁ヘッドコーチは抱負を語った。
運命のティップオフは、10日(日)午後2時に行われる。
<了>
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