地力を見せたJOMOとトヨタ自動車が決勝へ=天皇杯・皇后杯バスケ オールジャパン2010 第6日

舟山緑

富士通を破って決勝進出を決め、喜ぶJOMOの大神(中央)、諏訪(右)ら=国立代々木競技場 【写真は共同】

 全日本総合バスケットボール選手権(オールジャパン)の大会6日目、決勝進出をかけた女子4強の戦いが行われた。準決勝第1試合では、JOMOが、当たりの強い守りと勝負強さで、勢いに乗る富士通をねじ伏せた。一方、悲願の優勝を狙うトヨタ自動車は、日本航空を一蹴(いっしゅう)し、創部以来初の決勝進出を決めた。

攻守で着実な伸びを見せてきた富士通

 富士通・岡里明美ヘッドコーチはJOMOとの準決勝を前にかなり手応えを感じていた。今季Wリーグでは同カードを3勝1敗と勝ち越し、開幕戦では2連勝を飾った。3戦目は完敗したが、中一日でチームを立て直し、4戦目は延長の末に競り勝っている。「選手に任せていたフリーランス・オフェンスを少し手直しした」というこの一戦を機に、チームにリズムが戻り、オフェンスの調子が上がってきた。
 リーグが中断した12月は、ディフェンス強化に取り組んできた。「午後の練習ができないぐらい、午前中から走り込んできた」という。その結果、大幅な体力アップ、脚力強化につながり、その成果は、準々決勝のデンソー戦での見事な守りに如実に出た。

 今季の富士通は若手の#51中畑恵里、#45名木洋子、#8鈴木あゆみをスタメンに据え、これら3人をベテランが支えることで伸びてきた。パッシングから流れを作って確率のいい外角シュートを沈めるというチームスタイルは、今季から指揮をとる岡里ヘッドコーチのもとでさらに磨かれている。目下、Wリーグでは平均得点79.50で1位、平均失点66.20もトヨタ自動車に次いで2位である。攻守で着実な伸びを見せている中で迎えた今大会の準決勝だったのだ。

JOMOのディフェンスの前に失速

速いパッシングからの外角シュートで流れを作りたかった富士通だったが……。写真は#45名木洋子 【(C)JBA】

「調子がいい諏訪(裕美)選手とキーマンの大神(雄子)選手をどう抑えるかがポイント。うちは若さで勢いに乗りたいが、乗り切れなかったときの突破口をどうするかがカギになる」と、語っていた岡里コーチ。

 試合は、JOMOがマンツーマンとゾーンを併用して富士通のリズムを封じ込んだ。立ち上がりから当たりの強いJOMOに対してパスも人の動きも止まりがちな富士通は、得意の外角が決まらず、ペースがつかめない。第1ピリオドはJOMOの#15諏訪、#1大神らの活躍で14−22とリードを許した。
 一方、富士通も第2ピリオドで中畑や名木、#5畑恵里子らの踏ん張りで反撃。34−35と食い下がって勝負を互角に戻す。

 だが、一気に突き放しにかかった第3ピリオドで、富士通は逆に大きく失速してしまう。立ち上がりこそ鈴木のスリーポイントで逆転したが、ここからJOMOの#8田中利佳に思い切りのいいミドルやスリーポイントを許してしまう。さらに当たりの強い相手ディフェンスに決め手を欠いて、7分近くもノーゴール。「サイドから崩していくように指示し、もっとスクリーンを使ってシュートを狙うように話したが、うまくいかなかった」という岡里コーチ。起死回生で敷いたゾーンも、うまく機能しなかった。

 ベテラン#1三谷藍 にファウルがかさんだことも痛かった。第4ピリオドは思い切りのいいシュートが要所で出たが、JOMOを切り崩すには至らず。リーグNO.1を誇る得点力も、この準決勝では完全に封じられ、61−70の完敗となった。

これからの課題が見えてきた富士通

「失点61は満足。マンツーマンとゾーンの併用が機能した。富士通の外角シュートを狂わすことができた」と勝因を語ったJOMOの内海知秀ヘッドコーチ。これに対して岡里ヘッドコーチは、「ゾーンは想定内だったが、十分に対応できなかった」と敗因を語った。「JOMO相手に失点70は覚悟していたが、うちのオフェンスが予想以上に伸びなかった。選手がテンパってしまい、勝負どころの第3ピリオドで受け身になってしまいました」

 結局、富士通にとっては、不安材料に上げていた“若さ”が大きく出てしまった一戦となった。JOMOはこの3年、オールジャパンとリーグでの大一番で、敗戦をバネに勝負強さを身につけてきた。対する富士通は、スタートの3人が初の大舞台。我慢強さ、試合運びの巧さで、JOMOに一日の長があったといわざるをえない。

「ここ一番で力を発揮する集中力がまだまだ足りないのかもしれない。勝ちたいという気持ちも、JOMOがほんの少し上だった」と話す岡里ヘッドコーチ。「この準決勝という舞台も、1つ1つの戦術にはまって負けることも、すべてが経験。今は、負けるたびにそれを次へつなげるための糧にしていくだけです」

悲願の初Vへ挑むトヨタ自動車

日本航空はトヨタ自動車に完敗。果敢に攻めた#8岩村裕美のがんばりが目を引いた 【(C)JBA】

 準決勝第2試合は、トヨタ自動車が日本航空に80−64で完勝した。シャンソン化粧品との激闘に競り勝って4年ぶりに準決勝へと駒を進めてきた日本航空だったが、#8岩村裕美が22得点を上げたものの、#11矢代直美や#21永石春奈、#1高橋礼華、#5山田未来らの得点が伸びず、トヨタ自動車を苦しめることができなかった。

 決勝戦は、トヨタ自動車対JOMOという初顔合わせとなった。トヨタ自動車は1963年の創部以来初の決勝進出だ。この数年、ベスト4止まりで涙をのんできたが、今大会は危なげなく勝ち上がった。目下、Wリーグでは首位を走り、JOMO戦との相性もいい(2戦2勝)。「今季は十分に力がある。チャンスなので何としても実現したい」と、悲願の初優勝へ闘志を燃やす丁海鎰ヘッドコーチ。

 3年連続25回目の決勝進出で、V2を狙うJOMOも、きっちりと調子を上げてきた。対するトヨタは、優勝経験があるのは今季移籍した#12矢野良子のみ。
「ほかは決勝の大舞台での経験がまったくない。そこはJOMOにアドバンテージがあるが、クロスゲーム(接戦)ならば勝機はある。ファイナルを意識しないようにしてトヨタのバスケットをしたい」と丁ヘッドコーチは抱負を語った。

 運命のティップオフは、10日(日)午後2時に行われる。

<了>
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著者プロフィール

月刊バスケットボールで12年にわたりミニバスから中学、高校、大学、トップリーグ、日本代表まで幅広く取材。その後、フリーランスとなる。現在はWEBを中心にバスケットの取材・執筆を続けている。ほかに教育分野での企画・編集なども手がけている

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