ウインターカップを盛り上げた高校生が日本一に挑む!=天皇杯・皇后杯バスケ オールジャパン2010

渡辺淳二
 29日に幕を閉じた「JOMOウインターカップ2009」を大いに盛り上げた高校生が、元日から始まる全日本総合バスケットボール選手権、通称「オールジャパン」に出場する。男子はウインターカップで3年連続準優勝と健闘が光った福岡第一高(福岡)、女子はウインターカップで3連覇、そして高校三大大会(インターハイ、国民体育大会、ウインターカップ)のすべてを制し3冠を達成した桜花学園高(愛知)や、東海予選を勝ち抜いた岐阜女子高(岐阜)。さらにウインターカップには出られなかったものの、九州予選を勝ち抜いた中村学園女子高(福岡)の姿が見られるのも楽しみだ。

年上の選手を相手に経験を積んできた福岡第一高

高校推薦枠で出場できるにもかかわらず、九州予選をも制覇した福岡第一高。#6和田直樹(写真中央)のゲームコントロールに期待したい 【(C)JBA】

 男子大会には、今夏のインターハイで5年ぶり2度目の優勝を飾り、高校推薦枠でオールジャパンへの出場権を初めて手にした福岡第一高。予選に出なくても本戦に出場できるにもかかわらず、福岡第一高は福岡予選と九州予選に姿を現した。福岡県予選決勝で九州電力(福岡)に敗れたものの、2位で九州予選に進出。そして、ライバル延岡学園高(宮崎)を1点差で退けると、決勝では鹿屋体育大(鹿児島)にも勝って優勝を飾っている。

 福岡第一高の井手口孝コーチは、予選に出場した理由についてこう語る。
「インターハイ優勝でウインターカップ出場も決まっており、公式戦が少なかったんです。そこで県やブロックの予選を通じてチームを強化したかった。実際に高校生にとっては、自分たちより年上の選手、チームと対戦することがとてもいい経験になります」
 福岡第一高は公式戦以外でも、大学生やトップレベルのチームに胸を借りることがある。「レベルの高い選手でも監督に怒鳴られながら、必死に頑張っている姿を見せたいから」(井手口コーチ)である。

 その中で体感していることを選手たちはこう表現する。
「当たりの強さが違います。それに高校生よりも状況判断がよくて、まわりをどう使っているのかがすごく勉強になります」(ポイントガード#6和田直樹)
「高校生より体の使い方がうまくディフェンスも強いので、シュートをいつもより速く打たなければ入らないんです」(シューティングガード#8玉井勇気)
 そうした厳しい状況を、なんとか工夫して打開しようとする高校生の姿がオールジャパンで見られるわけだ。緒戦は社会人チームの横河電機(東京)。もしその試合で番狂わせを起こせれば、大谷拓也(大学2年)のいる天理大(奈良)と対戦することになる。

女子には岐阜女子高、桜花学園高などが出場

2008年、オールジャパンで初勝利をあげている岐阜女子高。今年のキャプテン#4中村早希(写真右)はその試合に途中出場して経験を積んだ 【(C)JBA】

 一方、女子の東海予選で準優勝を飾ったのが岐阜女子高である。決勝で対戦した愛知学泉大(愛知)が大学推薦枠での出場となったため、繰り上げで2年ぶりの出場がかなった形だ。実は岐阜女子高は東海予選が始まる1週間前にも、愛知学泉大に練習試合を申し入れ、胸を借りている。岐阜女子高の安江満夫コーチがこう説明する。
「相手が大学生でもやるべきことは変わりませんが、自分たちがやってきたことが正しかったかどうかを見られることで、大学生や実業団と戦う意味を感じます」

 それだけに過去のオールジャパン出場は、チームにとって貴重な財産になっている。2006年には学生3位で出場した筑波大(茨城)を相手に12点差(57−69)と善戦。2008年には北海道のクラブチーム・WithSpiritsと戦い、オールジャパン初勝利(100−61)をあげた。その時、1年生ながら試合に途中出場したのが、今年のキャプテン#4中村早希である。
「その大会で先輩から『落ち着いてプレーして』というようなことを言われたのを、まだ覚えています。突っ込んでいこうとするのを先輩に止められたんです」
 そうした積極性を大切にしながら試合経験を重ね、年上の選手とも戦えるようになってきたようだ。

「大学生と対戦する時には、パワーや高さに負けず、リバウンドやルーズボールで頑張ること。そしてパスする時にチームメートが強いプレッシャーをかけられているので、いつもよりディフェンスをよく見てプレーするようにしています」
 中村を中心に岐阜女子高らしく、ディフェンスを頑張って走るスタイルを思う存分に披露してほしい。余談だが、緒戦の相手である関西外語大(大阪)には、ウインターカップで岐阜女子高が破った相手、精華女子高(福岡)のエース・金原彩姫の姉、金原沙織(4年生)が所属する。そんな人間模様が垣間見えるのもオールジャパンの興味深いところではないだろうか。

ウインターカップで3冠を達成した桜花学園が、早稲田大との戦いに挑む。#4本多真実(写真右)や#15渡嘉敷来夢がチームを引っ張る 【(C)JBA】

 そして何といっても注目は、今夏のインターハイで4連覇を果たし、オールジャパンへの出場権を手にした桜花学園高。ウインターカップ優勝直後の記者会見で「まだ仲間とプレーできるのがうれしいです」と目を輝かせるのは、キャプテンの#4本多真実。さらに191センチのエースセンター#15渡嘉敷来夢は、言っていいものか迷うようにしながらこう発した。
「先輩には絶対に勝ちたいです。早稲田大には勝ちにいきます!」

 初戦の相手である早稲田大には、桜花学園高のOG丹羽裕美(1年生)が所属する。丹羽と渡嘉敷、両者がマッチアップして火花を散らす可能性が高いのだ。日本女子代表を背負って立つことが期待される逸材、渡嘉敷の高校生活最後の勇姿をぜひ、元日の東京体育館で見て欲しい!

<了>
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著者プロフィール

1965年、神奈川県出身。バスケットボールを中心に取材活動を進めるフリーライター。バスケットボール・マガジン(ベースボール・マガジン社)、中学・高校バスケットボール(白夜書房)、その他、各種技術指導書(西東社)などで執筆。

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