「THE OUTSIDER」前田日明代表インタビュー、“成長・進化”の2年目総括と3年目への展望

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「アマチュアの選手層を作るのが大事」

前田氏は若い世代の選手たちの可能性を信じている 【スポーツナビ】

――吉永選手vs.佐野選手の試合を見てどのような感想を持ちましたか?

 吉永は冷静に、彼が本来得意としているグラウンドで勝負してやろうとしていて、グラウンドに持ち込んで一瞬パウンドになりかけたけど、このままじゃダメだなと作戦を切り替えて打ち合っていましたね。打ち合うとリーチの差や身長差があるから有利に試合が進められて、回転の速い打撃で佐野くんを圧倒していましたね。

――吉永選手は激しい練習を積んできたのが実践で生かされている試合内容でした

 アウトサイダーに関わっていると、勝っても負けてももっと強くなってやろうと練習するので街に出れなくなるんですよ。不良を更正させようという意図はないんですけど、自然とまともになってくるんです。どんな世界にいようと、人生で一番大事なことは「必要なときに必要な努力をすること」なんですよ。必要な努力をしなければいけないのに腐ったり落ち込んだり、家に引きこもったりしている場合じゃないよと。この大会に出場すると、そのことを身をもって思い知るんです。
 自分たちも主催者として頑張らなければいけないのは、彼らは目立ちたい人たちばかりですから、プロのような興行をやってプロのように注目を集めるために動画やメディアに出す、ここに出ることの意味を選手たちに対して責任を持って示す事ですね。

――アウトサイダーでは負けても次にチャンスが与えられるのが素晴らしいですね

 いつ出場させるかが重要ですね。出場を見送っている間に腐っちゃう選手もいるんですけど、大会に出たときに力を発揮できるようにしています。菱沼も復帰戦で花道と戦ったときに、オレは1Rで花道に連打をもらって終わっちゃうんだろうなと思っていたんだけど、勝ちましたからね。花道は花道で菱沼に負けたのが悔しくて、直談判して次に出してくれって言ってきて。

――ところで、前田さんはこれまでUWFやRINGS、HERO’Sなどさまざまな団体を企画され、ユニークなアイディアをたくさん成功させています

 HERO’Sでは石井(和義)館長に直々にマッチメーク、選手のスカウトなどをする様に依頼されていましたが、なぜか全くさせてもらえませんでした。その疑問の答えは、いろいろな状況を把握した結果、残念な理由とともに了解しました。
 自分を中に入れると困ることがあった様です。自分にとっては過去に同じ様な事を経験した事なので館長に同情しましたが、格闘技界に有り勝ちな問題とは思いましたがまさか、K−1にも有るとは。非常に残念ですね。

 アウトサイダーでは、トーナメント第1回戦は同じ消耗度になるような同レベルの選手を組んでいます。リングスの時代に総合格闘技の選手層が薄かったし、そこで選手を育てなければいけないと思ってやっていたので、その経験が今に生かされていると思います。
 UFCのような巨大の資金力を持った団体が外国人選手を呼んで試合を組んでいると選手が育たないですよ。日本人選手を磨き上げるのと、アマチュアの選手層を作るのが大事なんです。

――前田さんの独創的な発想はどこから生まてくるのでしょうか?

 先入観なしでものを見るという訓練をしています。刀鑑定の勉強を10数年やっているんですが、刀を見る前に先入観を持ったら普段では分かることでも違う見方をしてしまうんですよ。先入観がどれだけものを見えなくするかということです。
 アウトサイダーの選手たちについても、ワルだとか不良だとか、1回負けたら試合をしなくなるとか、勝ったら格好つけて戻ってこないとか、会場で暴れてルールを守らないと言われるんですが、やってみないと分からないじゃないですか。海外を見渡してみると、ヤンチャ出身の選手が何人いるかということです。海外では刑務所の更正プログラムに格闘技を取り入れていると聞いたことがあります。日本ではゼロじゃないですか。日本はすごい才能を持った層に目をつぶっているんです。将来の総合格闘技界に貢献したいんですよ。

「日本の総合格闘技界の層を厚くしたい」

前田氏は「新しい才能にどんどん出会いたい」と語った 【スポーツナビ】

――では、来年以降のアウトサイダーについてお聞かせください。1年目が誕生、2年目は成熟・進化といった表現がふさわしい発展だったかと思いますが、3年目はどのように考えていますか?

 まずは60−65キロ級のトーナメント開催ですね。この層は65−70キロ級の次に層が厚いので。2010年2月にセレクションバウトを開催します。来年は4〜5大会を開催する予定で、そのうち1〜2大会は大きな会場で行いたいと思っています。

――65−70キロ級では吉永選手が王者になりましたが、防衛戦やトーナメントを開催する予定はありますか?

 会議でもいろいろと話し合いましたけど、アウトサイダーは不良の子たちを広く集めることを目的としているので、毎年同階級のトーナメントを行うことも検討しています。

――1回やって解散・封印ではもったいないですもんね。トーナメントの山組みが違えばまったく順位にはならないでしょうし。これまで外国人選手が出場していないのは体重の問題があったからでしょうか?

 アウトサイダーはアマチュア選手によるファイトマネーのない大会ですから、それで海外から参戦するのが難しいということです。日本にいる外国人選手は米国軍人などですから司令官の許可が必要です。沖縄の大会では米国軍人vs.日本人選手の対戦が開催されていましたけれど、一般の外国人ではいろいろな問題があって出場するのが難しいですね。米国軍の中にはMMAやボクシングなどのクラブがあって、彼らは軍の大会には出場していますけれど、もしアウトサイダーで日本人選手との対戦が実現したらおもしろいですね。外国人選手の瞬発力を経験することは必要ですから、日本人とは次元が違いますからね。

――今大会で準決勝に出場した選手たちにはプロの試合に向けたプランがあると言っていましたが

 リトアニアでプロモーターをしているドナタス(シマネイティス)がベラルーシなど旧ソ連の4カ国で試合を開催していて、そこに日本人選手を呼んでもいいということで、海外遠征で出場させようと思っています。そこで選手たちが勝ったり負けたりすることでレベルが上がっていけばいいですね。もし組むことになったら、彼らにはパンチの打ち方とか基礎から教えたいと思います。

――来年以降の大会ではどのような選手に出てきてほしいですか? 非不良系の選手も数多く出場を望んでいますよね

 今のアウトサイダーは不良中心ですけど、非不良系の選手出場も全然気にしてないですよ。不良にリベンジしたいヤツ、不良を更正させたいヤツなど、いろいろな選手に出場してもらいたいです。新しい才能にどんどん出会いたいです。ただ、メーンに考えているのは誰にも見向きもされない人たちですね。日本の総合格闘技界の層を厚くしたいですね。

――前田さんがアウトサイダーのような普通とはちょっと違った総合格闘技の大会を開催するのは使命感を感じておられるからでしょうか?

 使命感というか、自分のやったことを後世に残したいですね。途中でつぶれたりしないような、問題点を精査しながら10年、20年と残っていくようなものを作りたいと思います。リングスが活動停止になって選手たちにはかわいそうなことをしましたけれど、ずるずると運営してまったく再生できなくなるまでダメージを受けてやめるより、余力を残してやめた方が良かったんじゃないかと思います。総合格闘技に夢を持っている若い世代の選手たちにチャンスを与えていきたいですね。

■「THE OUTSIDER 第10戦」
2月14日(日)東京・ディファ有明 開場14:00 開始15:00(予定)

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