「THE OUTSIDER」前田日明代表インタビュー、“成長・進化”の2年目総括と3年目への展望

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前田代表にアウトサイダーの2009年総括と今後の展望を聞いた 【スポーツナビ】

 前田日明氏の呼びかけで始まった、日本全国の不良たちが集結してケンカ最強を決める総合格闘技イベント「THE OUTSIDER(ジ・アウトサイダー)」。旗揚げから2年目の2009年は、東京・両国国技館「THE OUTSIDER SPECIAL」(3月15日)で開幕し、3大会にわたる大型企画、65−70キロ級トーナメントを大成功で終えた。プロ選手の出場する総合格闘技大会と比べれば、技術レベルで劣るアマチュア大会にもかかわらず、常に満員のファンを魅了するアウトサイダーの原動力とはいったい何なのだろうか?

 前田氏は若い世代のアマチュア選手たちが将来の格闘技界に夢を見ることができるように、大会を通してさまざまなメッセージを投げ掛けている。来年には大成功を収めたトーナメント企画の第2弾、60−65キロ級トーナメント開催も予定されている。UWF、HERO’S発足などに携わってきた前田氏は今後、新たな局面を迎えているアウトサイダーをどのような方向へと導いていくのだろうか。前田氏に2009年の総括と来年以降の展望を聞いた。

「逃げようとする自分をぐっと抑えて戦うことが大事」

前田氏はアマチュア大会の運営はプロとは違う安全管理が必要だと語る 【スポーツナビ】

――「THE OUTSIDER 第9戦」では安全管理の苦労はありませんでしたか?

 第1回大会からトーナメントという考えがあって、アマチュアはプロとは違う安全管理が必要で、ちゃんとしたトレーニングを10年くらい積んでいる人と、まったく積んでいない人が戦う可能性があるわけです。それでも安全に運営しなければいけない。プロでもレフェリングの問題が話題になっていますけれど、何が危険で何が安全なのかを見極めた上で、自分で育てる選手をプロにしてやろうと思うとパウンドは外せない、パウンドありの大会でアマチュアがやるための安全性とはどういうものなのかを1年くらい考えてきました。毎大会、レフェリーにジャッジの安全性を確認して、議論してきた結果が今大会につながっていると思いますね。

――ひとつの大会でシングルマッチとワンデートーナメントがうまく融合していたように感じました

 そうですね、トーナメント制なので選手の回復に時間が必要というのと、25試合がギリギリだと思いますが、試合数が多いのでシングルマッチを多くして同じような試合が固まらないようにしています。

――それでは、印象に残った出場選手についてお聞かせください。第1回大会から出場している菱沼郷選手は負けが続いていましたが、最近は2連勝と好調を維持しています

 彼の努力の賜物だろうね。彼は当初リングに上がってダメだと思って逃げてしまうようなところがあったんだけど、それが一番危ないですからね。第1回大会のときに後ろを向いて負けてしまったのが彼も屈辱だったみたいで、一生懸命トレーニングを積んで、ラッキーパンチかもしれないけど(第6戦で)花道にKO勝ちしましたからね。下がらなければ何とかなるんだということだと思います。後ろを向いたらファイティングスリットがあっても何もできないですから。引かずに、逃げようとする自分の気持ちをぐっと抑えて戦うことが大事ですよ。人生も同じじゃないですか。

――第22試合に出場した庵野隆馬選手も華のある選手ですが、大会終盤にラインアップしたのは前田さんの判断だったのでしょうか?

 うん。試合のビデオを見なくても裸の写真と顔の雰囲気を見れば、どのくらいできるというのが分かるんですよ。

――シングルマッチでは清水征史郎選手vs.中澤達也選手の一戦も気持ちがぶつかり合ういい内容の試合だったと思います

 中澤くんは負けが続いてますけど、負けん気の強さがあって大化けすると思いましたよ。

――ルックスもすごく良いですし、今後が楽しみな選手の一人ですね

「アウトサイダーの選手たちは勝負所が分かっている」

「THE OUTSIDER第9戦」を振り返って試合を解説する前田氏 【スポーツナビ】

――では次に、激闘の続いたトーナメントについてお聞かせください。トーナメントの準決勝では、前田さんが大会後の総括で野村剛史選手が「ああいう負け方をするのは意外だった」と言っていました

 野村くんは慌てましたね。途中で三角絞めが極まったと思って、オレはレフェリーに「落ちたんじゃないか」と言ったんだけど、レフェリーが「大丈夫」ということで続行しました。プロの試合だったら止めていたかもしれないですね。あそこでレフェリーが止めなかったので野村くんはどうしようと迷ってしまって佐野くんにやられてしまいましたね。あれが明暗を分けました。佐野くんは試合中の一瞬の判断を冷静に考えながらできる頭の良さがあるので、将来大物になれますよ。

――試合後に野村選手と何か話をしましたか?

 いや、してないですね。天下一武闘会(九州で行われているアマチュア格闘技大会)の人に聞くと(野村選手が格闘技を)やめると言っていたんですけど、今後も続けるみたいですね。

――準決勝のもう1試合、武井勇輝選手vs.吉永啓之輔選手も衝撃的な決着でしたけど、前田さんは予想していましたか?

 武井くんはけがをしていたんだけど、医者に直談判して無理やり(出場)OKを出させたと思うんですよね。本人にとっては落ち着いて間合いを計ってやろうとしていたと思うんだけど、ロープを背負ってしまったのが彼の一番の失敗だったね。吉永は(武井選手が)ロープを背負ったのを見て一気に飛びひざを出したのがドンピシャだったと。試合はすぐ終わってしまいましたけれど、2人の心理戦がありましたね。でも、もし武井くんが決勝に勝ち進んでも手がもたなかったと思いますよ。
 武井くんは以前に少し教えたことがあるんですけど、ワンポイントアドバイスですぐに変わるんですよ。すごいセンスの良さがあるので、今回負けたことで彼もこれから伸びるんじゃないですかね。

――武井選手は打撃一辺倒のイメージでしたけど、最近はタックルもうまいですよね

 武井に言ったのは「タックルは駆け引きだよ」と。相手を打ち気にさせておいて、重心が上に行った瞬間に入り込むというのが大事だという話をしましたね。彼はそれを聞いてすぐにできるようになりましたからね。

――飛び込むには勇気も必要ですよね

 彼を含めてアウトサイダーの選手たちは勝負所が分かっているんですよね。たとえ玉砕しようとも一気に攻めるという、そこいらへんのプロの選手にはない勘所をよく知っていますね。だから現在のプロの総合格闘技の世界には魔裟斗のようなカリスマがなかなか出てこないんですよ。舟木ヒクソン戦の前座に出ていた、若い頃の魔裟斗の試合を見たときに「日本にもこんなにすごい選手がいるのか」とすごく驚いていたんですよ。当時からすごい力を持っていましたからね。

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