高校生プレーヤーを成長させる「超えたい相手」の存在=高校選抜バスケ ウインターカップ2009 第5日

北村美夏
 大会5日目まで終了した「JOMOウインターカップ2009」。女子は第1シード・桜花学園(愛知)と第2シード・東京成徳大(東京)が順当に決勝に進む一方、男子は準々決勝の4試合すべてがクロスゲームとなり、シード校が崩れた。
 試合の中でも成長を重ねる伸び盛りの高校生プレーヤーたちは、インターハイからレベルアップした姿をここ1番の舞台でそれぞれ披露した。その中で明暗を分けたのは、明確な「超えたい相手」がいたかどうかかもしれない。

福岡大大濠の執念に呑み込まれた藤枝明誠

藤枝明誠も夏より成長していたが、福岡大附大濠のそれが上回った。写真は藤枝明誠#6藤井祐眞 【(C)JBA】

 男子準々決勝第1試合、ノーシードから勝ちあがった福岡大附大濠(福岡)と第3シードの藤枝明誠(静岡)とのカードはインターハイ3回戦の再現となった。そのとき勝ったのは藤枝明誠。この試合も、1ピリオドで藤枝明誠が37点をたたき出して15点差をつけ、その力関係は覆らないかと思われた。
 だが、福岡大附大濠のメンバーも黙っていなかった。「1度負けた相手に2度は負けたくなかった」と#5永野俊輔は言う。インターハイでは劣勢になると雰囲気が暗くなってしまったが、今大会ではメンバー同士が声を掛け合ってビハインドをはね返し、逆転に成功した。藤枝明誠のエース・#6藤井祐眞も「相手の方が気持ちの面で上回っていた」と認めるほどの精神的成長だった。
 こうして洛南(京都)との3回戦に続くリベンジに成功した福岡大附大濠は、2006年以来のベスト4となった。しかし、「まだ負けたままのチームがあるうちは復活とは言えない」と永野。その相手とはもちろん、同じ福岡県のライバル・福岡第一だ。両校が対戦するとしたらその舞台は決勝になるが、成長した姿を見せつける場を福岡大附大濠のメンバーは切望している。

大きな存在である先輩を超えられるか

将来が期待される延岡学園#7永吉佑也の高校ラストシーズンは無冠に終わってしまった 【(C)JBA】

 続く第2試合でも、第2シードの延岡学園(宮崎)が逆転負けを喫した。勝利を収めた明成(宮城)は、サイズでは延岡学園に劣り、事実リバウンドは倍の本数を取られているが、代名詞とも言えるルーズボールでその差を埋めてみせた。
 明成の佐藤久夫コーチは、「3回戦を勝って卒業生に並んだが、この準々決勝を勝って卒業生を超えないといけない」と選手たちに語りかけたという。明成は2005年の創部以来、出場したインターハイとウインターカップですべてベスト8に入っている。その一方で、決勝進出はまだない。現在は大学で活躍する歴代の卒業生たちの良さを受け継ぎつつ、その先輩たちを超えての“優勝”も視野に入ってきた。

 逆に決勝に7度も進みながらまだ優勝はないチームもある。第4シードの北陸(福井)だ。準々決勝は京北(東京)に1点差の辛勝だったが、「最後は気持ちしかなかった」とは北陸#4占部賢人。その「気持ち」には、あと1歩で栄光から見放された卒業生たちの遺していったものも含まれるだろう。OBたちはその悔しさをバネに、日本代表やトップリーグを代表する存在となってみせた。現役メンバーはその歴史を超えて行くべく、明成と同じく“先輩超え”での初優勝を目指す。

 このほか、第1シードの福岡第一(福岡)も3ピリオドに一時同点に持ち込まれる薄氷の展開も、そこからの集中力で初出場の東海大相模(神奈川)を凌駕(りょうが)した。福岡第一は2年連続で準優勝という1番悔しさの大きい結果で終わっているだけに、ほかの3チームに劣らない決勝への思いを持って準決勝に臨むだろう。最後は、より強く「これまでの歴史を超えたい」「目の前の相手を超えたい」と思った方に勝利の女神が微笑むシンプルな戦いになるに違いない。

<了>
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

 1983年生まれ。バスケットボール男子日本代表を中心に、高校、大学からJBL・WJBL、ストリートや椅子バス、デフバスまで様々なカテゴリーのバスケットボールを取材。中学・高校バスケットボール(白夜書房)などの雑誌、「S−move」「JsportsPRESS」等のウェブ媒体で執筆。2009年末に有志でポータルサイト・「クラッチタイム」創設

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント