最強女子高生「東龍」が見せた快進撃=バレーボール天皇杯・皇后杯全日本選手権
“必然の勝利”とバレー界への警笛
V・プレミアチームにも果敢(かかん)な姿勢で挑んだ栄 【坂本清】
「プレミアの選手は、みんなブロックが高い。サイド(へのトス)に逃げたら簡単に捕まってしまうので、まずはセンターを通そうと。ラリー中も積極的にセンター線を使うように意識しました」
的確に攻め、なおかつミスが少ない。格下であるはずの高校生が繰り広げる完成したバレーに、格上であるはずのプレミアリーグの選手たちは、要所でミスを連発した。
フルセットまでもつれた激戦は、14−14でジュースへと突入。ここでも栄は冷静に、センターの芥川愛加のクイックでマッチポイントを得ると、最後はレフトの1年生鍋谷友理枝を使った。
「思った通りの攻撃が通用したし、やりたいことができた。高いブロックも怖くありませんでした」
金星ではない。実力を出し切った必然の勝利だった。
だがその痛手を受けとめなければならないのは、敗れたチームに限ったことではない。東龍がNECに勝利した同日、同じくプレミアリーグの豊田合成を下した東海大の積山和明監督が試合後に発したのは、勝利の喜びではなくバレー界への警笛だった。
「学生チームはプレミア(リーグの)チームにはこてんぱんに負かされなければならないんですよ。ボロボロに負けて『自分たちの力はこんなもんなのだから、もっともっと練習しなければダメだ』と思い知らされるようでなければ、日本のバレー界のためにはなりません」
歴史的快挙を成し遂げた東龍の強さは本物だ。そして、そんな希望の光を育(はぐく)むためには、トップはトップであり続ける使命がある。NEC、パイオニアが喫した2敗は、たかが、と呼べない重さがあることを忘れてはならない。
準決勝での敗戦後、涙を拭う長岡 【坂本清】
準決勝では久光製薬からも1セットを奪う善戦を繰り広げたが、快進撃もここまで。試合終了の笛の音とともに、平成生まれの少女たちの目から大粒の涙が溢れ出した。ラリーを制したときをはるかに上回る、温かな拍手が会場を包む。
「最後まで自分たちのバレーができたので、悔いはありません。3年間頑張ってきたことに、神様が味方してくれたのかな」
テーピングをしたままの左手で、長岡が涙を拭(ぬぐ)う。
最強東龍の戦いは終わった。爽(さわ)やかな感動と、これからへ向けた大きな課題を残して。
<了>