ウオッカ劇勝V7! ルドルフ、ディープに並ぶ涙の戴冠=ジャパンC

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あの08年天皇賞・秋と同じ、着差はわずか2センチの死闘

その差2センチは、あの08年天皇賞・秋と同じ着差だった 【スポーツナビ】

 ルメールのこの“我慢”は、最後の最後にウオッカを踏ん張らせる起死回生の好プレーとなる。というのもラスト1ハロン、外から猛然と差してきたのがリーディングジョッキーの内田博幸が駆る昨年の菊花賞馬オウケンブルースリ。ゴール手前でとうとう馬体を並べられ、脚の勢いも完全に外だ。女王、万事休すか――。

 「追い出してからのウオッカはすごくいい反応だった。でも、きっと後ろから何かが来ると思っていたし、実際にファンの歓声とともに何かが来ている感触があったんだ。最後の100メートルでステッキを1回使って、『頑張ってくれ!』と思って追ったんだけど、そこで踏ん張ってくれるところが本当にファンタスティックな馬だよ!」
 ゴールの瞬間を思い出し、興奮気味にルメールは語る。だが、実際はハーツクライでのハナ差敗戦(2005年)の苦い思い出がよぎるくらい、「ネガティブになっていた」という。

 着差はハナ、距離にして約2センチ。ルメールとウオッカ、人馬の“我慢”が生んだこの2センチは、競馬史に残る死闘と言われている08年天皇賞・秋と、同じ着差だった。

“チーム・ウオッカ”“チーム・角居”の勝利

“チーム角居”の勝利だ、と谷水オーナー(右)は厩舎スタッフの仕事ぶりを絶賛した 【スポーツナビ】

 「5」の数字が1着に上がった瞬間、検量室では角居厩舎のスタッフが一斉に抱き合い、そしてバンザイ。厩務員、調教助手は人目をはばからずに号泣した。
 同じように「私もレース後には涙が流れました」と感涙した谷水オーナーは、この勝利は角居調教師をはじめとした“チーム・ウオッカ”“チーム角居”の努力あってのものだとも語った。
 「これまでもそうでしたが、今日に至る結果におきましても、一番の功労者は角居厩舎のスタッフのみなさん。華やかな話題になるのはジョッキーたちですが、スポットの当たらない人たちが本当に努力してくれたおかげで、今日のウオッカがあると思います」

 一方、「凱旋門賞には鎖骨を骨折して騎乗することができなかったから、このジャパンカップの勝利で、その悪い思い出を払拭できたね(笑)」と、人懐っこい大きな笑顔で喜びを語ったのはルメール。そして、完ぺきな仕事をまっとうしたこのフランス人ジョッキーとも抱擁を交わしたオーナーは、噛みしめるように、ひと言ひと言丁寧な言葉を並べて、改めて喜びをつづった。
 「写真判定の結果が出た瞬間は、ホッとした、というのが本当のところです。それに、JRAがパートI国入りをして初年度のジャパンカップ。そういう中でのジャパンカップの位置づけはさらに重くなると思いますし、パートI入りして最初の年のジャパンカップを勝てたという意義を重く受け止めています」

レース後に鼻出血、今後に関しては未定

レース後には鼻出血を発症、現役続行か引退か――今後の動向にも注目があつまつ 【スポーツナビ】

 日本牝馬が勝ったのはJC史上初、ウオッカの通算JRA・GI勝利はシンボリルドルフ、ディープインパクトらに並ぶ最多タイの7勝目となり、獲得賞金もテイエムオペラオー、ディープインパクトに続く史上3位となった。
 数々の記録と、鮮烈な記憶と――。女王の7つ目の戴冠式は、再び競馬史に深く刻まれ、人々の記憶に色濃く焼きつけられる。

 なお、ウオッカの今後の予定についてだが、「まずは何をおいても厩舎関係者の方と相談して決めたい。そして、抽象的な言葉になりますが、ウオッカと相談して決めたいと思います」と谷水オーナーは話し、「決断の時期に来ているのかな」ともコメント。
 また、レース後、ウオッカが鼻出血を発症したことがJRAから発表され、規程により1カ月間はレースに出走することができず、12月27日のGI有馬記念(中山競馬場2500メートル芝)は出走不可能となった。
 これにより、ウオッカの2009年シーズンはジャパンC勝利で終了。来年も現役続行か、この日の勝利を花道に引退か、今後の動向にも注目が集まる。

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