“順当”なMVPと“波乱”のサイ・ヤング賞=2009年MLB賞レースを振り返る
「文句なし」のプホルスとマウアー
3度目のMVPに輝いたカージナルスのプホルス 【Getty Images】
受賞に際し「チームメイトの助けなしには獲れなかった」と口にした29歳のプホルスだが、今季は9年連続の打率3割・30本塁打・100打点に加え、初の本塁打王を獲得。これで3度目のMVP受賞は、通算7度のバリー・ボンズ(元ジャイアンツなど)に次ぐ歴代2位タイの記録となる。過去にはジョー・ディマジオ(元ヤンキース)、スタン・ミュージアル(元カージナルス)、アレックス・ロドリゲス(ヤンキース)ら8名が3度MVPを受賞しているが、30歳前にこれを成し遂げたのは「ザ・マン」ことミュージアルしかいなかった。
ボンズはプホルスと同じく、29歳の時に3度目のMVPに輝いているものの、4度目の受賞は37歳になってから。プホルスが今後もこれまでと同様の活躍を続けていけば、記録更新は決して夢ではないだろう。MVPだけではない。ボンズの持つ通算762本塁打のメジャー記録にしても、ボンズが29歳となった1993年シーズンまでに222本塁打を放っていたのに対し、プホルスは今季終了時点で通算366本塁打。こちらも十分に更新は可能と言える。打撃三部門で常にハイレベルな数字を残していることを考えれば、67年のカール・ヤストレムスキー(当時レッドソックス)以来の三冠王も期待せずにはいられない。メジャーリーグのファンにとって、プホルスはどこまでも夢を抱かせてくれる希望の星なのだ。
3度目の首位打者を獲得したマウアー(ツインズ)がア・リーグのMVP 【Getty Images】
「本命不在」のサイ・ヤング賞レース
今季16勝8敗、防御率2.16の成績で最優秀防御率のタイトルを手にしたグリンキーは、混戦が予想される中、28人中25人の1位票というダントツの支持を得て初のサイ・ヤング賞を獲得。ストライキでシーズン短縮の年を除けば、歴代のア・リーグ先発投手の受賞者では最も少ない勝ち星ながら、33試合の先発で1失点以下に抑えたのが18試合という圧倒的な内容が評価されたのだろう。19勝で最多勝を分け合ったフェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)、ジャスティン・バーランダー(タイガース)、CC・サバシア(ヤンキース)を抑えての意外なほどの圧勝は、より「中身」を重視する最近の傾向に後押しされたものと言える。
一方、ナ・リーグは史上稀に見る大激戦となった。15勝7敗、防御率2.48の成績で2年連続の栄冠を手にしたリンスカムと、17勝4敗、防御率2.24の成績で次点だったクリス・カーペンター(カージナルス)の差は、わずか6ポイント。19勝8敗、防御率2.63のアダム・ウェインライト(カージナルス)は32人中12人の1位票を獲得し、リンスカムの1位票(11票)を上回りながら、2位票が少なく総得点ではリンスカムに10ポイント差の3位。98年のトレバー・ホフマン(当時パドレス、現ブルワーズ)に続いて、1位票を最もたくさん獲得しながら受賞を逃す結果となった。
「元助っ人」3人目の快挙
ナ・リーグの最優秀監督賞に選ばれたロッキーズのトレーシー監督 【Getty Images】
ドジャース監督時代には野茂英雄、石井一久(現埼玉西武)の監督としても知られ、桑田真澄のメジャーデビュー時にはパイレーツ監督だったトレーシーは、現役時代には横浜大洋(現横浜)でプレーした元助っ人選手。日本でのプレーを経てメジャー監督を務めた「助っ人外国人」はこれまで10人を超えるが、最優秀監督賞受賞は89年のドン・ジマー(当時カブス、元東映)、97年のデービー・ジョンソン(当時レッズ、元巨人)に次いで3人目の快挙となった。
現在のメジャーリーグでは、トレーシーのほかにチャーリー・マニエル(フィリーズ、元ヤクルト、近鉄)、ケン・モッカ(ブルワーズ、元中日)と2人の元助っ人が監督を務めているが、マニエルはインディアンズ時代を含め4度、モッカはアスレチックス時代に2度地区優勝しながら同賞とは無縁。トレーシーに続く日は来るのだろうか。
<了>
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ