城島、メジャーでもブレなかった“2つの信条”

丹羽政善

真っすぐしか待たない打撃

阪神の入団会見でポーズをとる城島。背番号は「2」に決定 【写真は共同】

 毎試合後、「どうぞ〜」で始まる城島健司(元シアトル・マリナーズ)の会見。「今日は、何も話すことがないですよ〜」という日に限って、意外な話が出てきたりと、その日の試合を超えての内容は、いつも機知に富んだ。

 頻度も含め、この2つのコメントが印象に残る。ともに、日本時代から続く彼のプレースタイルの根幹。メジャーに来ても変わることはなかった。

 その2つとは……。

「真っすぐしか待たない」
「野手に申し訳ない」

 打撃、リードにおけるそれぞれの信条――。

「真っすぐしか待たない」とは、もちろん打席での狙いのことで、基本的には、インコースの真っ直ぐに振り遅れない、というイメージでボールを待つそうだ。

「変化球なんて待ったことがない」とも話し、時に、あまりにも見事に変化球をさばくことから、「ひょっとして今日は変化球を狙っていましたか?」と聞かれても、「もう、何べんも言っているじゃないですか。僕は、真っ直ぐしか待ちません(笑)」と即座に否定した。

 となれば、外角に変化球を投げられたら――などと1年目は思ったが、うまく腕を伸ばして適応する。打撃の非凡さがのぞく一瞬だった。

 さすがにメジャーの投手も1年目の半ばからは、初球、簡単にストレートでカウントを稼ぎに来ることはなくなったが、日本の投手とて、そのことは知っているはず。

 5年ぶりに復帰する日本球界で、互いに久々の対戦。いや、リーグが違うだけに、ほとんどが初対戦か。いずれにしても、相手は少なくとも城島の狙いを知る。それに城島がどう対応するのか。打席での注目は、そこか。

ホームプレート外側の出し入れで勝負

「野手に申し訳ない」は、終盤のリードの話。

 例えば、1点差、2点差で勝っている終盤、本塁打を警戒するため、内角への要求は少なくなるというより、ほとんどなくなるといっていい。投手には、ホームプレートの外側を使った出し入れでの勝負を求める。

 それは、仮に内角を要求して失投となり、本塁打でも許したらそれまで点を取ってくれた「野手に申し訳ない」と感じるとのこと。

 常々、「本塁打は防げる」とも話し、終盤になればなるほど、防げるミスは絶対に犯さない、との思いがそんなリードに透ける。
 おそらく阪神に移籍しても、終盤の勝負どころでは、外角の配球で打者を攻めることになるのだろう。

日米両球界で捕手として活躍した唯一の男

阪神入団が決まった城島。日米両球界で捕手として活躍した男にかかる期待は大きい 【写真は共同】

 彼が日本の技術として誇り、認めさせたのはスローイングか。ことしと2年前に盗塁阻止率がリーグのトップになったが、ボールを捕ってから右手に持ち替え、リリースするまでの時間は、他の捕手と比較しようのないほど素早かった。

 もちろん、盗塁阻止率は投手との共同作業だが、精度まで考えれば、やはり率のアップは本人の技術によるところが大きいのではないか。それは、対戦したエンゼルスのマイク・ソーシア監督も認めていた。

 送球の時間短縮を優先すれば、当然、握りを気にしている時間はない。「(きちんと)握れるのは、年に何回か」だそうで、握れなくても、この握りならどの程度曲がる、というのを正確に予測してスローイングができるのが、彼の経験のなせる業といえよう。

 さて、その経験といえば、城島が日本球界に復帰することで一番興味深いのは、やはり「経験」がどう出るかといえる。

 何しろ、日米の両球界で捕手として活躍した選手は、日米の長い野球の歴史をひも解いても、城島たった一人しかいないのである。

 特にリード面。アメリカで培った経験を日本に持ち帰ったとき、それはどんな形で現れるのか。日本球界を離れていたことで、ギャップを感じる面もあるのではと思うが、ことし3月、ワールドベースボールクラシック(WBC)に参加したことで、案外、ブランクはないのかもしれない。

 いずれにしても彼の阪神デビューはまだまだ先だが、興味が尽きることはない。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント