レッドディザイアついに逆転! ブエナビスタの三冠阻止=秋華賞
レッドディザイア(左)がブエナビスタとの凄絶な叩き合いを制し、ついにラスト一冠を奪取 【スポーツナビ】
四位は秋華賞初勝利で、同馬を管理する松永幹夫調教師はこれが2007年3月の厩舎開業から3年目でのうれしいGI初勝利。現役騎手時代に“牝馬のミキオ”と呼ばれた松永幹調教師にとっては、自身がファビラスラフインで1996年第1回を制した思い出の秋華賞でのビッグタイトル初戴冠となった。
一方、ハナ差で敗れ史上3頭目の牝馬三冠制覇がならなかったブエナビスタ(牝3=松田博厩舎)だが、4コーナーで外側に斜行し、3位入線したブロードストリート(牝3=藤原英厩舎)の走行を妨害したとして、3着に降着。後味の悪い結果となった。なお、ブエナビスタに騎乗した安藤勝己は10月24日から11月1日まで、開催4日間の騎乗停止処分。10月25日のGI菊花賞、11月1日のGI天皇賞・秋への騎乗が不可能となった。
好騎乗光った四位「攻める競馬をして、それで負けたら仕方ない」
「とにかく強気に乗った」と四位、その好騎乗が光った 【スポーツナビ】
「僕だけじゃなくて、松永幹夫先生や厩舎スタッフのみんな、オーナーもみんな悔しい思いをしていました。だから、今回勝てたのは本当に良かったです」
殊勲のエスコートを果たした四位が、晴れやかな表情で語った。
ブエナビスタとの着差は、オークスと同じ「ハナ」。しかし、春とは違った意味での大きなハナ差だった。四位が、ゴール前攻防を振り返る。
「オークスと同じ感じでしたから、また負けたのかな?って思いましたね。勝った確信もなかったし、ゴール後は『どっちかな?』って、僕も安藤さんも分からなかった」
両ヒロインにまたがるジョッキー自身すら、確信がもてないわずかな差。四位の脳裏にはオークス大逆転劇の再現も頭をよぎった。しかし、今度はレッドディザイアに軍配が上がる。
この薄氷を踏む勝利を引き寄せた大きな要因、その1つが四位の好騎乗だった。
「レース前からトレーナーと色々と話し合って、“攻める競馬”をしようということになりました。京都の内回りはやっぱりゴチャつくから、後ろから行くと最後はさばき切れない。攻める競馬をして、それで負けたら仕方ない。思い切って乗りました」
真のライバルストーリーへ「もっと強くなる馬です」
もう引き立て役ではない! これからは本当の「ライバル関係」へ 【スポーツナビ】
「後ろにいるだろうなとは思っていましたけど、相手を意識しないで、今回はとにかく強気に乗ろうと思っていたので」
その結果、懸念していた“ゴチャつき”に巻き込まれることなく、最後の直線でズバリと開いたVロード。そして、スムーズな追い出しができなかった女王との間に生まれた差を、ゴールまで死守してみせたのだった。
「もう、勝つならアレしかないという乗り方でした。四位が本当にうまく乗ってくれました」
厩舎開業3年目で初GI制覇となった松永幹調教師もうなった会心の手綱。しかし、四位自身は自らの騎乗よりもまず厩舎スタッフの努力をたたえる。
「ローズSの後、自分は調教にはノータッチだったんですが、厩舎スタッフの方に渾身の仕上げをしてもらった。僕はいい形でバトンを渡されて、馬の力を出せるように誘導しただけ。強気に乗ったことに馬も応えてくれましたし、今回の勝利は厩舎の力の後押しだと思っています」
悲願のブエナビスタ打倒を果たし、手にしたラスト一冠と秋の3歳女王の座。この勝利で、『引き立て役』ではなく、本当の意味での『ライバル関係』になったと言える。
「伸びる余地はまだまだあります。もっと、もっと強くなりますよ」と、大きな笑顔でうなずいた四位。春のブエナビスタ時代から、秋はレッドディザイアへ――。3歳牝馬勢力図は、大きな変動を迎えつつある。