松井「またここに戻ってこれてうれしい」=ヤンキース、5年ぶりの地区シリーズ突破
ア・リーグ優勝シリーズ進出を決め、祝勝会で笑顔のヤンキース・松井秀喜外野手(右)とジーター内野手=11日、米ミネアポリスのメトロドーム 【共同】
ツインズファンが「夢をありがとう」と思うのか、それとも「また地区シリーズで負けた……」と思うのかは正直分からない。とはいえ、ここで敢えて書いておく必要があると思うのは、戦力差の前に2連敗という圧倒的不利な状況でも、メトロドームに詰め掛けた5万人を超えるファンが、まったく意気消沈していなかったことだ。8回までは――。
ホームがホームでないような感覚を何度も経験してきた。例えば2003年のワールドシリーズ。2勝3敗で迎えた第6戦はヤンキー・スタジアムでの一戦だった。しかし、なぜかファンがおとなしい。一緒に取材する同僚が「負けを受け入れているようだ」と漏らしたことは忘れられない。また翌年のリーグ優勝決定戦第7戦。3連勝の後3連敗を喫し、ヤンキー・スタジアムではレッドソックスファンの方が元気だった記憶がある。
メトロドーム最終年という付加価値があるとはいえ、ツインズファンの熱意は伝わってきた。ロン・ガーデンハイヤー監督の下、8年間で5度目のポストシーズン進出。そのうち4度で地区シリーズ敗退。新球場に移ってこの壁をクリアできるか、注目したいと思う。
松井秀、4年間の思い
「このシリーズ(突破)すら何年ぶりですか? 5年ぶりですよね。ここ数年のヤンキースにとっては大きな山だったってこと。うれしいですよね。次のところに行けるというのは」
松井は自分自身をチームに投影してコメントすることが多い。つまり、この4年間が大きな山だったのは松井自身も同じだ。
<2005年>対エンゼルス(2勝3敗)
20打数4安打(1本塁打)1打点。第5戦は全5打席で走者を置いた場面で打席に立つも凡退。シリーズ最終打者にもなった。
<2006年>対タイガース(1勝3敗)
16打数4安打1打点。4安打はすべて走者なしの場面。チームとしても先勝しながら3連敗を喫した。
<2007年>対インディアンス(1勝3敗)
11打数2安打0打点。安打は第3戦での2本のみ。5四球(1敬遠含む)を選んだ。
<2008年>プレーオフ進出できず。
メジャー移籍元年の2003年から、松井は2年連続でリーグ優勝決定シリーズに進んでいる。それ以降、地区シリーズで敗れることがいわば普通になっていた。だからこそ、松井の言葉には実感がこもっている。
「またここに戻ってこられてうれしい」
今回の地区シリーズで、松井が個人的な打撃に関しても壁を越えたところがある。前述した走者がいる場面での結果だ。
第1戦の第3打席、5回2死一塁で松井は中越えに2ランを放った。久しぶりに走者がいる場面での安打だった。
一つ前はというと、ずーっとさかのぼって2005年の地区シリーズ第1戦の第1打席。1回2死一、二塁で、適時打ではない右前打を放ってから、26打席もその状況で安打が出ていなかった(うち四球は3度)。ただ、得点圏に走者がいる場面ではここまで14打席連続で無安打(2四球)。今季のリーグ優勝決定シリーズでこの状況を克服して初めて「勝負強さが戻った」と言っていいのではないかと思っている。
後半勝負に持ち込む“ヤンキース野球”
「厳しい試合でしたけど、接戦をモノにできるヤンキースのいいところが出た。失点を最小限に抑えてくれることが、こういう勝利につながる大きな要因だと思う」(松井)
同じ戦いをリーグ優勝決定戦でも続けられるか。相手は今季も含めて6年間、公式戦で勝ち越していないエンゼルスだ。
ヤンキー・スタジアムでは、試合終盤にリードされていると映画「ロッキー」のテーマ曲が流れる。逆転勝ちが多い今季、流れる回数も多かった。確かに「アンダードッグ(勝ち目のない者)」に焦点を当てた映画と、年俸総額1位のヤンキースを重ね合わせることには無理があるような気もする。ただ、相手を考えれば、それくらいの気持ちで臨む必要があるかもしれない。
アメリカンリーグ優勝決定シリーズ(7回戦制)は16日(日本時間17日)にヤンキー・スタジアムで開幕する。
<了>
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