イチロー「気持ちのいいチームでしたね」=2009シーズンを終えて
出遅れた4月、チームは好調もその後は…
最終戦で1安打を放ち、今季の安打数を225安打に伸ばしたイチロー 【写真は共同】
現地時間10月4日、今季最終戦。
WBC(ワールドベースボールクラシック)で連続優勝を飾って、キャンプに合流したものの、胃潰瘍(かいよう)で開幕に出遅れたイチローのシーズンが終わりを告げた。
午後1時9分30秒――澄み切った青空の下、グラウンドに飛び出していったイチローはどんな思いで、緑鮮やかな芝を蹴ったか。
4月15日――イチローにとっての今季開幕戦では、満塁本塁打を放つなど派手な活躍で遅れを取り戻し、張本勲氏の持つ日本最多安打に並ぶ。翌日の試合でそれを更新すると、破顔した。
「張本さんが見ていた景色はどんなものなのか。頂に上ったときの景色がどんなものなのか見てみたかった。そこに上ってみたら、まあ、すごく晴れやかな感じで、いい景色でしたね」
ただ、4月を終えて地区首位だったチームは5月に入って低迷。6月の頭には、地区トップのレンジャーズに7ゲームの差を付けられる。
今年もか……の声は、いやでも聞こえてきた。
しかし、ジワリジワリとその差を詰めたマリナーズは前半を地区首位のエンゼルスまで4ゲーム差で折り返す。
このときのイチローにも、充実感が漂っている。
「ストレスはないよね。久しぶりに野球をしている感じ。ゴルフで言うなら、もうOB連発だったやつらがさ、2オンで来ちゃって、バーディーにするのか、パーにするのか。あ、ゴルフやってるな、って感じがするでしょ? そういうのって」
ところが、後半戦が始まって間もなく、エンゼルスに突き放される。7月24日からインディアンスに地元で3連敗を喫し、ブルージェイズとの初戦も落として4連敗となると、エンゼルスとの差は7.5ゲームとなり、7月の終わりにはその差が9ゲームにまで広がった。
イチローにならってゴルフに例えるなら、残り200ヤードの第2打。フェアウェイにボールはあるものの、3番、4番アイアンがゴルフバッグに入っていない――という状況。
5番で打ってはみたものの、やはりグリーンには届かなかった。
アイアンの番手は、そのままマリナーズの打順と重ねてもいいだろう。
安打記録前にはふくらはぎの故障
ただそこでは、例年にない展開が待っていた。
敵地で行われた8月18日のタイガース戦で4安打を放ち、大リーグ通算2000本安打まで16本、9年連続200安打まで21本として8月中の両記録達成、しかも地元での達成が見えた。
しかし、胃潰瘍から復帰して以来、無休でプレーを続けた体がイチローにストップをかける。その遠征の最終戦――クリーブランドでの最終打席で一塁に向かって走り出した瞬間、イチローの左ふくらはぎが、異常を伝えた。
当初は、「3試合でと思っている」と早期復帰を口にしたが、欠場は8試合に延びる。
「最初は、時間が見えなかったので、ちょっと憂うつになった」
イチローも、未知のケガだっただけに、慎重にならざるを得なかった。
ただそこで、それまで1試合あたり約1.7本ペースでヒットを重ねてきた貯金がものをいう。
残り試合は30試合以上。復帰を焦る必要はなかった。