ヤンキース、地区優勝へカウントダウン態勢=2年ぶりシャンパン・ファイトのXデーは?

畑中久司

松井「え?もうマジック出てるの?」

着実に地区優勝へのマジックを減らしているヤンキース。松井は中軸の役割を果たしている 【写真は共同】

 アメリカンリーグ東地区の首位に立つヤンキースが、地区優勝へのマジックを「30」とした翌日の8月28日(現地時間)、クラブハウスでユニホームに着替える松井秀喜に聞いた。

 マジックに対する選手の意識とは――。

 見る側にとっては、チームがどの位置にいるかの目安として役に立つ数字ではある。シーズンが終盤に入るとマジックがどこで点灯するかを計算するのもメディアの仕事の一部だといっていい。

 一方で毎日、試合を消化していく当事者としてはどう考えているのか。

 「この時期にはあんまり考えたことはないなあ。あと何勝かで優勝とかいう状況になれば、周りの雰囲気が自然と変わってくるのはある。ただ自分から逆算してプレーすることはないよね」

 マジック点灯には頓着しない様子の松井。ポーズではなく本心だと感じたのは、こう聞いたときだ。

 マジックいくつでゴールが近いと感じるのか。実際「30」になっているが――。

 「え? もうマジック出てるの? ホント? 知らなかった」

 ……。

 その日のホワイトソックス戦で両リーグ80勝一番乗りを挙げたヤンキースは、9月6日のブルージェイズ戦終了までの10試合で8勝2敗と大きく星を伸ばす。地区2位レッドソックスとの差は6ゲームから、7.5ゲームに広がった。レッドソックスも着実に貯金を増やしてはいるが、ヤンキースのペースには及ばない。マジックは一気に11も減って「19」になった。

  松井が挙げた“ゴールが近いと感じる”具体的な数字は「5」。「残り45試合で5、6ゲーム差くらいなら(追い付かれるときは)あっという間だよ」と話すように、常に気を緩められないという自戒の意味もあったとみる。ただ、衰えないペースを前にすれば、いまやセーフティーゾーンに入っていると誰もが感じているだろう。

「松井を中軸から動かす必要はまったくない」と監督

 星勘定にこれだけ余裕があれば、起用法にも余裕が出てくる。8月25日から16日間で17試合を戦う過密日程でも、選手に負担をかけず、休養を取りながら出場させられるのはヤンキースにとって大きなプラス材料だ。「とにかくケガをしないで乗り切らなきゃいけない」と話す松井自身にも同じ事がいえる。

 実際、松井は5番に定着した上でスタメンを外れることはあるとはいえ、ロドリゲスが休養する際には4番を任されており、好不調の波がある中でも信頼感を得ている。フェンウェイ・パークの3試合(8月21日〜23日)で4本塁打した後、デレック・ジーターが「松井は自分が今一番気に入っている選手」と言えば、ジョー・ジラルディ監督も「中軸から動かす必要はまったくない」と話した。

 公式戦が残り1カ月を切り、ポストシーズンを見据えた戦いに移行していく中で、何としても避けたいのがアクシデント。最近ではマリアーノ・リベラが左足の付け根を痛めたが幸い軽症だった。シーズン全体を見渡しても、レギュラー戦力とみられながら長期離脱したのは、当初のアレックス・ロドリゲス以外ではゼイビアー・ネイディーくらいか。1年間ほぼ同じメンバーで戦うことで生まれたチームとしての長期的なリズムが崩れなければ、10月の戦いには自然に入れるはずだ。もちろん、戦術的な“引き出し”が多いほど公式戦以上に有利になるポストシーズンで、ヤンキースが勝ち進んでいけるかどうかはまた別問題ではあるが。

 9月7日以降の残り25試合で、どこが地区優勝の“Xデー”になるかは気になるところ。最速は17日。ヤンキースの勝ちペースがレッドソックスを上回る場合(ゲーム差が開く展開)なら18日からのシアトル、アナハイム遠征中になる。1日ひとつずつ減っていく計算なら、25日から始まるレッドソックスとの直接対決の初戦――。

 本拠地で宿敵相手に決める。盛り上がりという点では、これがベストシナリオか。

 こんな机上の空論を言えばきりがないし、おそらく松井は苦笑いするだろう。ただ、2年ぶりのシャンパンファイトは確実に近づいている。それだけは間違いない。

<了>
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