宿敵との3連戦で際立った松井秀の存在感=レッドソックスvs.ヤンキース総括
ジラルディ監督が見せた自信
3連戦で2度の1試合2本塁打を記録するなど活躍が光った松井秀 【Getty Images】
8月15日に1日だけ点灯していたマジックが、このカードで1試合でも勝てば再点灯する。今回のボストン3連戦はすでに「首位攻防戦」ではなくなっていた。
「ほかのチームに頼る必要はない。直接リードを広げられる絶好のチャンスがきた」
初戦を控えたジラルディ監督は言った。ヤンキースとしては3連敗さえしなければ十分だったはずだ。それでも指揮官が強気でいられるのは、現在のチーム力に自信を持っているからにほかならない。
8月に入って貯金11。投打を問わず日替わりヒーローが誕生する中、この3連戦でもっとも存在感を示したのは松井秀喜だった。
1試合2本塁打を2度記録した松井秀
5回の右越え20号3ランに続き、9回にも右翼ポール際21号3ラン。内野ゴロでも打点を稼いでおり、1試合7打点。ヤンキースの選手がフェンウェイ・パークで1試合7打点以上を挙げたのは、1930年のルー・ゲーリック(8打点)以来2人目だった。
第3戦
2回に右越え22号ソロを放つと、8回には右翼ポール際に23号ソロ。1954年以来、フェンウェイ・パークでの1カードで2度、1試合2本塁打を記録したヤンキースの選手は松井で4人目。残り3人には1966年のミッキー・マントルも含まれている。
「甘いボールをしっかり打てている」
松井はいつものせりふで振り返るが、この4発はまさに真骨頂。相手投手ががストライクを取りに来たところをはじき返している。「打ち損じない確率」が高くなっているのは、状態がいい証拠だ。シアトルで左ひざにたまった水を抜く処置を施して体にキレが戻ったことも大きな要因で、ロング打撃コーチも「スイングスピードが速くなった」と証言している。
気になるのは、宿敵相手の4発が松井の来季にどの程度影響するか。第3戦が終わって取材に向かう際、地元メディア最古参の某記者にこう聞いてみた。
「これでマツイは来年もヤンキーじゃないの?」
その答えはこうだった。
「じゃあ賭けるか? オレはノーだ」
ヤンキース残留かどうかは、あくまでもチームの戦略や構想という外的要因に左右される。タイトル獲得などよほどのことがない限り「何本打てば」のような絶対値は存在しない。ただ、この結果がすべての球団に対して強いインパクトをもたらしたのは間違いないだろう。
バーネットとポサダの相性に不安も
7点をリードされた5回二死。先発A・J・バーネットは、デービッド・オルティーズに投じた外角の速球を左翼席に軽々と運ばれた。その直後、ホームに背を向ける格好で両手を広げ「Why!?」と何度も絶叫した。捕手ホルヘ・ポサダのリードと関係がある――。試合後の2人とジラルディ監督への質問は、ほぼこの一点に集中した。
「彼(ポサダ)に向けてやったんじゃない。自分の思うようなボールを投げられなかったんだ」
自らの制球難に腹を立てていたと主張するバーネットに対し、ポサダはバッテリーの呼吸に問題があったと認めている。
「(打たれた直後の)あの姿には動揺させられた。きょうは同じページにいなかった。合うときと合わないときがある」
この2人は前半戦から相性の悪さを指摘されてきた。6月20日以降、この試合までで10試合コンビを組んでクオリティ・スタート(6回3失点以内の内容)を9度決めている。とはいえ、8月17日のアスレチックス戦では先制された直後にボークで追加点を許すなど、不用意な失点も目立つ。8月に勝ち星がない事実も、バーネットが欲求不満を募らせる原因になっているようにも見える。
1試合が「162分の1」という公式戦と違い、ポストシーズンは1試合で流れが大きく変わる。大事な試合で再現がないことを祈るしかない。
「まだ先は長い。前に進めるようにプッシュしていくだけだ」
ジラルディ監督はそう言って気を引き締めた。半面、ポストシーズンを見据えた言葉も口にしている。
「ホームアドバンテージは重要。ウチは本拠地で大きく勝てているから」
15本塁打以上の選手8人。ヤンキー・スタジアムがフライ打ち打者の多いチームを優位に導くのは疑う余地がない。レッドソックスの位置は、もう視界にはない。狙うはリーグ最多勝利。3連戦を終えた時点で、勝利数2位エンゼルスとの差は4勝だ。
<了>
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