松井秀喜、メジャー7年目の役回り=4年契約最終年の立場と役割とは!?
DH専門の役回り
休養を挟みながらのシーズンを送っている松井だが、要所で結果を残している 【Getty Images】
今季、松井はスタメン出場の機会がめっきり減った。約7割はスタメンでの出番があるとはいっても、松井をメジャー1年目からカバーしている筆者には相当少なく感じてしまう。全試合に出場することが当たり前で、代打出場それ自体が記事になっていたころが懐かしい。
「試合にはいつも出たいと思っている。選手とはそういうもの」
松井の思いは常に同じだ。2試合連続本塁打を放ちながらスタメンから外れた7月6日(現地時間)のブルージェイズ戦では、自分の名前がないオーダー表を見て驚きを隠せなかった。しかし、チームの方針に口を出すつもりはない。どういう布陣で臨めばチームのプラスになるか、それは監督をはじめとした首脳陣が考えること。選手として考えるべきは、与えられた場で自分の持つ100%の力をどう出すか。
「(首脳陣は)チームの全体的なことを考えてオーダーを組む。自分は試合に出たときにしっかりプレーできるような準備をしていくだけ」
松井がそう言う以外にないのは、当然といえば当然だろう。
DH専門の役回りは、昨年9月に手術した左ひざの状態を考慮されて導き出されたものだ。後半戦に入った時点でも、ジラルディ監督は「ヒザの状態はまだ懸案事項」と明かしている。そういった首脳陣の判断に、松井の出場機会は制限されてきた。
レギュラークラスの野手が軒並み30代のヤンキースには、それぞれの選手に休養を与える必要がある。使えるカードは「スタメンから外れる」か「DH起用での“半休養”」。ヤンキースにとってのDHは「打撃専門家のポジション」よりも「半休養を取る選手ためのポジション」であった方が好都合なのだ。松井が来季はヤンキースに残留しないという地元紙の記事は、この点が唯一ともいえる根拠となっている。
出場機会が限られている今季、本塁打や打点といった絶対値で計られる成績が低くなっているのは仕方がない。だからといって「2年目のように出場し続けていれば……」といった仮定は空想でしかない。
少なくとも、ヤンキース首脳陣の考えはこうだ。
「本人が休みたくなくても、休養は松井の体調にいい影響を与えていると思う。9試合休んだ後、松井は爆発した。あれからずっといい状態が続いている」
2試合連続でスタメンから外れた10日のブルージェイズ戦。試合前の会見でジラルディ監督はそう話した。
「メジャーリーガー松井秀喜」の評価
代打でも今季は18打数6安打で出塁率4割7分8厘。昨季までは通算で9打数2安打だった。ベンチスタートでも終盤に代打で出場するための流れにも慣れてきたようだ。
「今年はこういう感じが多いから、気にならない」と松井は言う。首脳陣にとっても、与えた持ち場で期待に応えられる選手は、使い勝手のいい“駒”として重宝する存在だ。A・ロッドやジーターだけではなく、全軍躍動のためにはロールプレーヤーも必要なのだ。指揮官が「松井は必要な存在」と言い続けるのには、こういった意味もある。
ただし、松井という駒には「守備」という役割がない。練習中にはノックを受け、勘が鈍らないようにはしている。それでも、今季中に首脳陣が松井を守備に就かせようと本気で思ったことはないはずだ。ヒンスキー、ヘアーストンと外野を守れる選手を続々と補強した。
「守れと言われれば今でもやれるとは思う。でも、守れって言われないから」
打つだけの選手が松井の描く理想の選手像ではない。いまでも常に守備への意欲を見せ続けている。半面、ジラルディ監督は「リスクを負う価値があるとは思わない」と否定的だ。準備は怠らないが、今季中に守備に就く姿を見ることは現実的ではないだろう。
今季でヤンキースとの4年契約が切れる。守備に就かないことは「メジャーリーガー松井秀喜」の評価に大きく影響するとみて間違いない。もう少し早く左ひざにメスを入れておけば、違う結果になっただろうか……。それもまた空想でしかないのだが。
来季に関しては「まだ考えてない」と言う。何かを成し遂げようとしている最中に、その先のことを考えるのはナンセンス。そんな気持ちは伝わってくる。7年前、メジャー移籍を決断したのもシーズンが終わってからだった。
ヤンキースにこれほどの強さを感じるのは2003年以来かもしれない。久々に狙えるチャンスがやってきたと思う。そして立場も役割も7年前とは違う松井が目の前にいる。シーズンは残り50試合を切った。
<了>
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ