金澤慎、大宮の頼もしき若大将=インタビュー
今季途中、副キャプテンに就任した金澤。チームの中心的存在として期待される 【写真提供:大宮アルディージャ】
前節のモンテディオ山形戦での敗戦を受けてメンバーを入れ替えたから、という側面はある。だが、クラブとしての歴史が浅く、移籍選手が中心にならざるを得ない大宮のチーム事情にあって、ユース出身の生え抜き選手がキャプテンマークを巻いてプレーするという事実に、興奮すら覚えた。
そして今回、前キャプテン小林慶行の柏レイソルへの移籍に伴い、空位となった副キャプテンの座に就いた。藤本主税新キャプテンと並び、今季ここまでの公式戦に、出場停止を除きすべて出場している。いちプレーヤーからチームの中心的存在へ。金澤慎が大きく生まれ変わろうとしている。
ボランチを任されることでプレーの幅は広がった
三浦(俊也監督・当時)さんはおれのことをすごく信頼してくれて、調子が悪くても試合には使ってくれていました。でも、自分に自信があってJ1に上がったという感じでもなかったし、試合をやってもあまりうまくいかないし、通用しているところも少ないし、そういう中でいろいろ考えすぎた部分があったのかな、と今は思います。試合には出ていたけど、決していいパフォーマンスじゃなかった。自分の中では自信をなくしていく感じすらあったし、「自分はまだJ1ではできない」と自分の中で感じてしまったのがプレーに出てしまった、とは思ってます。
――2006年から2シーズン、東京ヴェルディへ移籍したことは転機になりましたか?
サッカーをやっていく中で、それまでは試合に出ている選手のいいところを自分でもできるようにしよう、とやっていました。でも、東京Vに行ってラモス(瑠偉監督・当時)さんに、自分には自分の良さがあって、そのプレーができれば試合に出られるんだよ、ということを教えてもらった。自分はどういうプレーが得意なのか、というのを再確認できるいい時期だったし、それで監督も使ってくれたので、自分がどういうふうにしていけばいいのかというのが東京Vでつかめた、というのはありますね。
――昨年大宮に復帰してからのプレーには、何か吹っ切れたようなものも感じられました
そうですね。自分が得意なのはこういうプレーだ、というのが明確になっていたし、そのプレーを監督にも期待されているから、「そのプレーをしていればいい」ということですね。いろいろやらなくていい、自分の良さを出すのがいいことなんだ、と。樋口(靖洋監督・当時)さんも自分の特長、どんどん飛び出すような動きを求めてくれて、それを生かすような使い方をしてくれたので、すっきりできた部分はありましたね。
――今年はボランチです
攻守においてのバランスだったり、守備の部分でほかの周りの選手ができないようなサポート、DFに負担がかかるようなところで少しでも自分がプレーしてあげるとか、そういうことを監督に求められているな、というのは感じます。自分は今こういうポジションにいるけど、どちらかというと前に出て行くタイプだと思っていました。それが今、前へ出て行かずにとどまってバランスを取る、ということを張(外龍/チャン・ウェリョン)監督に教えてもらっている。要求されていることはできている、という試合も多々出てきたので、自分のプレーの幅も広がっているのかな、と感じるところではありますね。
自分が先頭に立つよりも後ろからサポートする
試合前のミーティングで、いつも張監督がホワイトボードにメンバーを書くんですよ。見たらキャプテンのところにおれの番号が書いてあって、「あ、今日はおれがキャプテンか」って(笑)。監督から特別にキャプテンについての指示はなくて、いつもの流れで「最後にキャプテンから一言」。一言いって試合に行った、という流れでした。
――そのホワイトボードを見た時にどう思いましたか?
先発メンバーにはエズ(江角浩司)さんもいて、「でも、おれなんだ」と思いました。監督が自分を選んでくれたんだから、みんなを引っ張っていくというか、盛り上げていくように、というのは意識して試合に入りました。
――心掛けたのは声を出すこと?
そうですね。主税さんが試合に出ている時は、けっこう声を出してくれる。その試合では、声を出して盛り上げるタイプの選手がいなかったので、おれが代わりにみんなを盛り上げられるように声を出して、というのは意識しましたね。
――描いていた「キャプテンらしさ」はうまく出せたでしょうか?
理想のキャプテンというのがどういうものなのか、というのが分からなくて……。「らしい」ことすらできずに終わってしまいました。よく「キャプテンシーのある選手」という言葉を聞きますけど、自分はどちらかというと、1人でみんなを引っ張っていくというよりも、みんなを盛り上げられるように下から支えるような役割が合っているのかな。自分が先頭に立つよりも、後ろからサポートする。それがいいのか悪いのかすら分からないですけど。