ナダル「年間グランドスラムは僕のゴールではない」=全仏テニス
(インタビュー=クライブ・ホワイト 翻訳=木村かや子)
年間グランドスラムはほとんど不可能
どの大会に挑むときも、僕は1回戦を戦う、ということ以外は何も分からないんだ。もちろん、そこで勝てるかどうかもね。だからローラン・ギャロスでも、ウインブルドンでも、ニューヨーク(全米オープン)でも何が起こるかなんて分からない。1年を通じてずっと同じレベル、自分のベストのプレーを維持するのはとても難しいんだ。それに、もし僕がベストのプレーができたとしても、たとえばアンディ(・マレー)が絶好調の日だったら、彼は僕だけじゃなくロジャー(・フェデラー)やノバク(・ジョコビッチ)、ほかのどんなトップ選手たちも倒す可能性を秘めている。
グランドスラムはすべて本当にタフなんだ。一つの大会に勝つことさえ簡単ではないのに、年間グランドスラムを考えるなんて――それがどれほど難しいことかは言うまでもないよね。だから、年間グランドスラムはほとんど不可能なこと、というのが僕の率直な感想。もし達成できたらどんなに素晴らしいかとは思うけど、やっぱりそれはほとんど不可能なことだと思うな。
――しかし、ローラン・ギャロスで連覇を達成すれば、年間グランドスラマーにまた一歩近づきます。あなたにとって年間グランドスラマーとは何を意味しますか
ロッド・レーバー(注1)が成し遂げたことは、本当に驚くべき偉業だ。でも当時は、今よりほんの少しだけ簡単だったとも言えるんじゃないかな。あのころ、サーフェス(コート)は二つだけだったと思うけど(注2)、今は3つだからね。全豪オープンと全米オープンのサーフェスはまったく同じではないけど、同じハードコートに分けられるから、とにかく今は3種類だ。3つの違うサーフェスで僕が年間グランドスラムをやってのけるチャンスは、本当に小さい。これまでも年間グランドスラムのことなんて考えてもいなかったから、特にプレッシャーはないけどね。とにかく、それは僕のゴールではない。年間グランドスラムが目標じゃないのは、それが目標にはなり得ない、あまり現実的じゃないからなんだ。
――それでも全豪オープンでは多くの人が、あなたのテニスの進化、特に攻撃面での進化に気づきました。自分ではどのようにその進化を分析していますか
サービスはとても重要だと思う。今シーズンの序盤はサービスの調子がすごくよかったんだ。特にセカンドサービスが大きな武器になっていた。今はちょっと調子が落ちているから、ローラン・ギャロスまでには戻さないといけない。
全体的なことを言えば、すべての面において向上しようといつも努力している。よりアグレッシブにプレーすることもそうだけど、僕が目指しているのはただ一つ、より完成されたプレーヤーになることなんだ。スライスショットを打つことができればプレーの幅が広がるし、ネットに出ることができれば、それも一つのオプションだ。結局のところ、オプションが多ければ多いほど、より多彩な戦略を手にすることになる。調子がいいときの僕は、以前よりもずっとネットに近いところでプレーしている。そうだろう? 昔は今よりもずっとコートを走り回っていたと思う。でも今は、ポイントをコントロールするための時間が持てるようになった。
(注1)
全豪オープンが開催されるナショナル・テニスセンターのセンターコートにその名が冠される、オーストラリアの伝説。男子で年間グランドスラムを達成したのは1938年のドン・バッジと、62年と69年に男女を通じて唯一2度達成したロッド・レーバーの2人だけ。
(注2)
当時は全豪オープンと全米オープンもサーフェスは芝だった。
(この後、ナダルはサッカーに夢中になっていた幼少時代や、ライバルのフェデラーについても語っています。続きは本誌『テニスマガジン』7月号をお読みください)
テニスマガジン7月号は、全仏オープン特集
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