フェデラー「僕のテニスに問題はない」=テニス
その状況に、元王者はいら立ちをあらわにした。僕は何も変わっていない――。
ミルカとの結婚、移り行く男子テニス界、ラファ(ラファエル・ナダル)、自らの将来、そしてローラン・ギャロス(全仏オープン)について、テニス界のカリスマが大いに語ってくれた。
(インタビュー=クライブ・ホワイト 翻訳=木村かや子)
最近、試合に負けると、奇妙な記事を目にする まったく見当外れなね
僕のテニスに問題はないよ。自分のゲームに満足している。問題なのは、誰もが「フェデラーはすべての試合に勝って当然だ」と思っていること。そんな怪物を、自分自身で生み出してしまったことだ。すべてのブレークポイント、すべてのマッチポイントを取るのが当たり前だと思っているが、そんなことはもちろん不可能だ。僕らはノックアウト方式のトーナメントで戦っている。ほんの数ポイント調子が狂っただけで、負けにつながってしまうんだ。だから、僕はちょっと驚いている。5、6年の間、覇権を築いた時代があったけど、そのあと突然、誰もが僕のことをこき下ろし始めたことにね。
――具体的にはどういったことでしょうか
昨年の全豪オープンで、僕は体の不調(伝染性単核症)を押してプレーしていた。本当に体調が悪くて、ほとんど放心したような状態で何とか踏みとどまっていたんだ。でも、みんなそのことを考慮に入れさえしなかった。ウインブルドンでは、わずかなポイント差でラファに敗れたけど、素晴らしい試合だったと思う。それなのに、内容の素晴らしさを口にする代わりに、まるで僕がストレートで敗れたかのようなネガティブな反応を見せた。
このところ、試合に負けたときにはそういった奇妙な記事を目にすることがあまりにも多い。記者たちは「なぜフェデラーが負けたのか」をすべて分かっているかのように気取って分析しているが、その言い草はときにまったく見当外れだったりする。あまりに多くの友人たちが、「いまにきっとよくなるさ、ロジャー。心配するな」と言って慰めにくるんだけど、僕は「いったい何だっていうんだ? 問題なんて何もないよ」という感じだ。友人たちさえ新聞に書かれていることを信じ始めているんだよ。だからもう、新聞には目を通すべきじゃないと悟ったんだ。
――では、問題は何も抱えていないということでしょうか
プレーヤーとして重要なのは、何が起こっているかをきちんと自覚することだ。僕は、自分の何が悪く、何が正しいかを自覚している。それは自信を持って言える。重要なのは、ハードワークを積み重ね、自分のベストのプレーに戻るということだ。そして今、ようやくベストの状態に近づいてきていることが僕には分かっている。
――かつて常勝を誇っていただけに、あなたが今、敗北をより重く受け取り、精神的に苦しんでいるように見えるのですが
いや、その意見にはまったく同意できないな。自分がそういった状態に陥っているとは思わない。そういった見方にはちょっとがっかりしているし、うんざりさえしている。というのも、あらゆる種類のクレイジーな連中が、僕には精神的、肉体的な助けが必要だと勝手に主張して、いきなり手紙を送りつけてきたり、実際に僕とコンタクトを取ろうとしたりし始めたんだ。彼らは、突然どこからともなく現れ、自分たちには僕を助けることができると思っているようだ。そういうのは、ただただ不愉快だよ。
――では現在、メンタル面はどのような状態なのでしょうか
僕はこれまで、いつもポジティブで前向きだった。一心不乱に練習に打ち込み、いつも練習コートにいる。決して本当の意味で落ち込んではいなかった。なぜなら、練習コートにいるときがはっきりと手ごたえを感じ取れるときだからなんだよ。練習コートに行って、自分が何をしたいのか、あるいは何か変えるべきなのか、あれこれ考えることはあっても、自分がメンタル的に苦しんでいるとか、落ち込んでいると感じたことは一度もなかった。僕はいつも、前向きで健全な精神状態を保ち続けてきたんだ。確かにこの12カ月の間に、僕は落とすべきではなかった試合を落としたかもしれない。でも、それで耐え難いような気持ちになったことは一度もなかった。
(この後、フェデラーはナダルや、マレーなどライバルたちについても語っています。続きは本誌『テニスマガジン』7月号をお読みください)
テニスマガジン7月号は、全仏オープン特集
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