フェデラー「僕のテニスに問題はない」=テニス

テニスマガジン

全仏オープン直前のマドリッドオープンで優勝したフェデラー。テニス界のカリスマに今の心境を聞いた 【Getty Images】

 王位から失脚した“ナンバー2”のロジャー・フェデラーを、まるで面白がるように周囲がはやし立てる。
その状況に、元王者はいら立ちをあらわにした。僕は何も変わっていない――。
 ミルカとの結婚、移り行く男子テニス界、ラファ(ラファエル・ナダル)、自らの将来、そしてローラン・ギャロス(全仏オープン)について、テニス界のカリスマが大いに語ってくれた。

(インタビュー=クライブ・ホワイト 翻訳=木村かや子)

最近、試合に負けると、奇妙な記事を目にする まったく見当外れなね

――この数か月、以前に比べてやや苦しんでいるように見えます。現在の調子はいかがですか。また、タイトルから遠ざかっている現在の状況をどのように分析していますか

 僕のテニスに問題はないよ。自分のゲームに満足している。問題なのは、誰もが「フェデラーはすべての試合に勝って当然だ」と思っていること。そんな怪物を、自分自身で生み出してしまったことだ。すべてのブレークポイント、すべてのマッチポイントを取るのが当たり前だと思っているが、そんなことはもちろん不可能だ。僕らはノックアウト方式のトーナメントで戦っている。ほんの数ポイント調子が狂っただけで、負けにつながってしまうんだ。だから、僕はちょっと驚いている。5、6年の間、覇権を築いた時代があったけど、そのあと突然、誰もが僕のことをこき下ろし始めたことにね。

――具体的にはどういったことでしょうか

 昨年の全豪オープンで、僕は体の不調(伝染性単核症)を押してプレーしていた。本当に体調が悪くて、ほとんど放心したような状態で何とか踏みとどまっていたんだ。でも、みんなそのことを考慮に入れさえしなかった。ウインブルドンでは、わずかなポイント差でラファに敗れたけど、素晴らしい試合だったと思う。それなのに、内容の素晴らしさを口にする代わりに、まるで僕がストレートで敗れたかのようなネガティブな反応を見せた。

 このところ、試合に負けたときにはそういった奇妙な記事を目にすることがあまりにも多い。記者たちは「なぜフェデラーが負けたのか」をすべて分かっているかのように気取って分析しているが、その言い草はときにまったく見当外れだったりする。あまりに多くの友人たちが、「いまにきっとよくなるさ、ロジャー。心配するな」と言って慰めにくるんだけど、僕は「いったい何だっていうんだ? 問題なんて何もないよ」という感じだ。友人たちさえ新聞に書かれていることを信じ始めているんだよ。だからもう、新聞には目を通すべきじゃないと悟ったんだ。

――では、問題は何も抱えていないということでしょうか

 プレーヤーとして重要なのは、何が起こっているかをきちんと自覚することだ。僕は、自分の何が悪く、何が正しいかを自覚している。それは自信を持って言える。重要なのは、ハードワークを積み重ね、自分のベストのプレーに戻るということだ。そして今、ようやくベストの状態に近づいてきていることが僕には分かっている。

――かつて常勝を誇っていただけに、あなたが今、敗北をより重く受け取り、精神的に苦しんでいるように見えるのですが

 いや、その意見にはまったく同意できないな。自分がそういった状態に陥っているとは思わない。そういった見方にはちょっとがっかりしているし、うんざりさえしている。というのも、あらゆる種類のクレイジーな連中が、僕には精神的、肉体的な助けが必要だと勝手に主張して、いきなり手紙を送りつけてきたり、実際に僕とコンタクトを取ろうとしたりし始めたんだ。彼らは、突然どこからともなく現れ、自分たちには僕を助けることができると思っているようだ。そういうのは、ただただ不愉快だよ。

――では現在、メンタル面はどのような状態なのでしょうか

 僕はこれまで、いつもポジティブで前向きだった。一心不乱に練習に打ち込み、いつも練習コートにいる。決して本当の意味で落ち込んではいなかった。なぜなら、練習コートにいるときがはっきりと手ごたえを感じ取れるときだからなんだよ。練習コートに行って、自分が何をしたいのか、あるいは何か変えるべきなのか、あれこれ考えることはあっても、自分がメンタル的に苦しんでいるとか、落ち込んでいると感じたことは一度もなかった。僕はいつも、前向きで健全な精神状態を保ち続けてきたんだ。確かにこの12カ月の間に、僕は落とすべきではなかった試合を落としたかもしれない。でも、それで耐え難いような気持ちになったことは一度もなかった。

(この後、フェデラーはナダルや、マレーなどライバルたちについても語っています。続きは本誌『テニスマガジン』7月号をお読みください)

テニスマガジン7月号は、全仏オープン特集

 ラファエル・ナダル、ロジャー・フェデラー、アンディ・マレーと世界ランキング男子ワンツースリーのロングインタビューを一挙掲載。読めば、全仏オープンの優勝争いをさらに楽しめること間違いなし。「緩急ベリーマッチ」と題した巻頭の技術特集は、勝負球をより効果的にするための揺さぶり方を解説しています。また、4月18日に亜大の堀内昌一監督を講師に招き開催した「第7回テニマガ公開講座」の模様も一挙紹介。緊張するとフォールトしてしまうなど、再現性の低いサービスを打っている人は必読です。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1970年創刊の最も長い歴史を誇るテニス専門誌。国内トップクラスのコーチ陣が解説する技術特集は、上級者からビギナーまで全てのプレーヤーにとって、上達のヒントが散りばめられている。グランドスラム4大会をはじめ、試合報道が充実しているのも特徴。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント