デビュー17年目の中西が悲願のIWGP初戴冠=新日本

高木裕美

デビュー17年目、6度目の挑戦でついにIWGPヘビー級ベルトを巻いた中西 【田栗かおる】

 新日本プロレス・後楽園ホール2連戦2日目となる6日の「Dissidence」では、IWGP2大シングルタイトルマッチなどが行われ、前日に続き超満員札止めとなる2050人を動員した。
 メーンイベントで行われたIWGPヘビー級王座戦では、中西学が王者・棚橋弘至をジャーマンスープレックスで破り悲願のIWGP王座初戴冠を達成。デビュー17年目、6度目の挑戦でついに新日本の頂点に立った。

観客の大「中西」コールを力に棚橋を粉砕

【田栗かおる】

 中西は永田裕志、天山広吉、小島聡(現全日本プロレス)ら「第三世代」と呼ばれた同期の中ではもっとも早く99年に「G1クライマックス」優勝を果たし、新日本のエース候補として期待されながらも、これまでIWGPヘビー級ベルトを巻くことはできず。実に5年ぶりの挑戦となった昨年の武藤敬司戦でも「なんでベルトを巻いたことがないのか分からない」と武藤に評されながらも敗退し、ベルトにたどり着くことができなかった。 しかし、3日前の5.3福岡で後藤洋央紀を退け、3度目の王座防衛に成功した棚橋が、急きょ中西を挑戦者に指名。当初から発表されていたこの日のシングルマッチがタイトル戦として行われることになった。

「新日本のエース」としての地位を不動のものとし、V4防衛に向けて勢いに乗る棚橋は、中西の巨体とパワーに対抗すべく、徹底したヒザ攻めへ。ドラゴンスクリュー、テキサスクローバーホールドで中西を足元から崩しにかかると、スリングブレイド、ハイフライフローといった必殺技を繰り出していくが、中西も剣山でカットするなど、棚橋にペースを握らせない。
 観客の大「中西」コールに力を得た中西は、パワーを生かしたアイアンクローを随所に繰り出して棚橋の動きを止めると、一本足ハンマー、雪崩式ブレーンバスターといったダイナミックな技を炸裂。さらにアルゼンチンバックブリーカー、ヘラクレスカッターから大☆中西ジャーマンにつなげると、トドメのジャーマンで勝利。3カウントが入った瞬間、超満員の観客は総立ちとなって中西を祝福した。

中西の勝利を超満員の観客が総立ちで祝福

必殺ジャーマンで棚橋を粉砕 【田栗かおる】

 試合後は同期の永田と抱き合い、喜びを分かち合った中西は、リング上に勝利者インタビューでもまずは応援してくれたファンに感謝。「今はこのベルトのことを噛み締めたい」と静かに喜びにひたった。
 しかし、「体全体がダルくなってる」という厳しすぎる戦いでようやくつかんだ、「応援してくれる皆さんの重さとベルトの歴史」の重みを実感してか、試合後も笑顔はなし。前王者・棚橋からの「次はオレの挑戦を受けてくれ」という対戦要求に対し「素晴らしい元チャンピオンとオレもやりたい」と再戦を了承したものの、具体的な防衛プランについては「中西学らしいチャンピオンでいたい」と話し、現在対抗戦真っ最中のノアについても「今は他団体のことは言いたくない」とシャットアウトした。

タイガーが宿敵ブラックタイガーを粉砕

タイガーマスクは宿敵ブラックタイガーを破りV3達成 【田栗かおる】

 IWGP Jr.ヘビー級王座戦では、王者・タイガーマスクが“宿敵”ブラック・タイガーをデストロイ・スープレックスホールドで退け、3度目の防衛に成功。2.15両国国技館大会の試合後に奇襲を受けて以来、シリーズ中に幾度となくマスク剥ぎにあった怨みをタイトルマッチの舞台で晴らしたものの、試合後も再びブラックがタイガーを襲撃。両者の因縁は5.30後楽園で開幕する「ベスト・オブ・ザ・スーパーJr」に持ち越しとなった。

 タイガーは、おそらく相当の実力者であるブラックの執ようなマスク剥ぎや、強烈なデスバレーボムに追い込まれながらも、パワーボムは阻止。チキンウィングフェースロックから胴絞めスリーパーに移行し、ミドルキックを連打すると、タイガースープレックス、新必殺技のデストロイ・スープレックスと一気にたたみかけてベルトを守り抜いた。
 試合後はまたもブラックのだまし討ちのエジキとなったものの、タイガーは「ベスト・オブ・ザ・スーパーJr」に向け「最後にリングに立ってるのはこのオレ」と4年ぶり3度目の優勝を予告。プロレスリング・ノアやDDT、DRAGON GATEら他団体勢の参戦についても「他団体の人も新日本のリングに上がってもらって、それで新日本ジュニアが盛り上がってくれればいい」と王者の余裕を見せつけた。

井上が石井に因縁終結宣言

 長きに渡り因縁を続けてきた井上亘と石井智宏は、完全決着をつけるべく、「フォールズカウント・エニウェアマッチ」で激突。リング以外のいかなる場所でもフォール、ギブアップ、KO、TKO決着が認められる完全決着ルールの元、会場全体を使っての大流血戦を繰り広げた末、井上が執念の勝利をつかんだ。
 もはや本人たちですら「抗争の原因がよく分からないまま激化していった」(井上)と語るほど、いつの間にか互いに嫌悪していくようになった2人。3.8名古屋でのNJC1回戦で行われたシングルマッチでは石井がリングアウト勝ちを収めたものの、4.12ROCK UP後楽園大会では井上がリベンジ。1勝1敗となったことで、互いに「これが完全決着戦」との覚悟で臨んだ。

 ラフファイトを得意とする石井は、場外でのイス攻撃で井上を大流血に追い込むと、井上をテーブルに寝かせての場外ダイブや、場外マットをはずした床の上でのツームストン、割れた机板での攻撃、垂直落下式ブレーンバスターといった容赦のない攻撃でたたみかけると、場外ステージへ井上を連れ出し、パイプイスを敷き詰めた床の上へ井上をたたきつけようとするが、逆に井上が切り替えし、大逆転のオラシオンフレイムで勝利。試合後は「石井の豪傑な部分は感じた」と、あくまで1対1の勝負に挑んだ石井の男気を評価しつつも、「もうこれで石井とは終わり」と抗争集結を宣言。今後については「スーパージュニアも始まるけど、俺はヘビー級のトップを目指す」と、あくまでわが道を貫くことを誓った。
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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