辞退者続出もなお強力布陣のアメリカ=WBC出場チーム分析

木本大志

前回の敗因はWBCの認識の甘さ

前回は2次ラウンドで敗退したアメリカ、野球王国の威信を示せるか 【Getty Images】

 前回大会、アナハイムで行われた2次ラウンドでメキシコに敗れた瞬間、アメリカのワールドベースボールクラシック(WBC)敗退が決まったが、およそ半数の米国選手は、ひそかにそれを喜び、胸をなで下ろした。

「これで早くチームに帰って、調整が出来る」

 彼らにとっては、誤算続きだったようだ。前回、多くの選手は当初、もちろんやる気満々で大会に臨んだ。簡単に勝てるとも思っていた。
 ところが、大会が進むにつれ、大会の本質を知る。たとえ所属チームではレギュラーで、スーパースターといわれようと、代表チームのレギュラーは9人。投手にはまだ、比較的均等なプレー機会が与えられたが、野手に関しては、ベンチを温めるだけの選手も必然生まれた。となると、そうした選手は、焦り出す。

「これではまったく調整が出来ない。開幕が心配だ」

 そんな不満がいぶり出てくれば、当然チームの雰囲気は悪くなる。ギクシャクする。同時に透けたのは、多くの選手がWBCを調整の場と考えていたこと。彼らにとっては、エキシビションマッチ――つまり、親善試合との認識だったのである。

スター軍団ゆえの悩み

 1次ラウンドが終了し、アナハイム入りしたころから、すでに雑音が聞こえていた。それを明かしてくれたのは、元マリナーズの選手で、当時はジャイアンツの主力として活躍していたランディー・ウィンだった。彼は、メキシコ戦が始まる前のダッグアウトで、米国チームを覆うネガティブな空気の正体を教えてくれた。

「この時期、野手はコンスタントな打席数が欲しい。もう開幕も近いからね。それを得られなければどうしても焦る。投手にも自分なりの調整法がある。先発投手なら中4日に体を慣らしたい。でも、それが出来ないから、彼らにも焦りが生まれる。残念だが、みんなこの大会よりもシーズンの開幕が気になり始めている」

 彼の言葉は、大会の時期に疑問を投げかけるものではあったが、「ならば開催の時期として理想的なのは?」と聞いても、明確な答えはなかった。

「それは、何人かの選手と話をした。『ワールドシリーズが終わった後の11月はどうだ』という意見もあったが、プレーオフに出られないチームの選手は、1カ月も空く。その間、誰だって体を休めたい。そこでまた、大会のためにキャンプをしたり、ということになれば、さらに出場を辞退する人が増えるだろ。もちろん、大会が終わっても十分な調整期間が得られるよう、大会を3月の上旬で終わらせる手もあるが、そうすると、2月の頭には大会が始まる。そこに合わせて調整することは難しい……」

 これは、アメリカチーム特有の問題でもあった。やはり、あまりにも優れた選手が多い。他国は、ある意味バランスが取れていて、主力と控えの力量差が見えるため、控えは文句が言えない。しかし彼らの場合、頭のてっぺんからつま先までスーパースター。自分のチームでは特別待遇を受けてきた“オレ様”が試合に出られなければ、口をとがらせる選手も当然出てくる。今回デレク・リー(カブス)が辞退を決めたのも、「ケビン・ユーキリスの控えになる」と告げられたからだそうだ。

 故に、今回のメンバーは、役割をはっきりさせた上で、最終の28人を選抜した。控えにまわる選手にはその旨も伝えてある。結果としてリーのようにチームを離れる者も出たが、誤算につながる要素が減ったと見ることもできる。

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