UFCファイター長南亮が語る日米ドーピング事情

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UFCファイター長南亮が日米ドーピング事情を斬る 【(c)菊地茂夫/kamipro】

 現在は海の向こう、UFCを主戦場としている長南。かつては『PRIDE武士道』のリングで世界を相手に闘ってきたが、そこには目の前の敵以外にも“ドーピング”というもう一つの得体の知れない敵の影が――。ここでは第一線で闘うファイターの立場から日米のドーピング事情、そして“薬の力”に対する本人の見解を赤裸々に語ってもらった。

――長南さん、今日はドーピングについてお話を聞きたいんですよ。

長南 なんでまた俺になんですか?

――以前、日米のMMAイベントの違いについて聞いたときに「日本は外国人選手のドーピングチェックをきっちりしたほうがよかった」って言ってましたよね?

長南 あー、言ってましたね。確かにそれはいまでも思いますよ。

――そこで実際に日米両方で試合を経験している長南さんに、ドーピングをめぐる環境の違いを中心にお話してほしいなと。

長南 なるほどね、わかりました。

――まず、長南さんの日本の主戦場だったPRIDEでは、ドーピングチェックはどのように行なわれてました?

長南 いつの頃からか、試合前後の尿検査で誰かしら一緒にトイレに入ってチェックするようになりましたね。それをどこまで、どうやってチェックしてたかはわからないですけど。もしかしたらかたちだけなのかも知れないし。

――かたちだけと言うと?

長南 結局日本の場合、ドクターは団体が雇ってるわけですよ。ドクターはチェックの結果をイベント側に言うまでであって、それを公表するかどうかは団体の自由と言うか。アメリカの場合はアスレチックコミッションっていう独立した機関がチェックの結果を公表して、イベント側はそれから対応するわけですから。日本とアメリカとは根本的に仕組みが違いますよね。

――別機関が目を光らせている、と。チェックの方法自体はアメリカも日本も同じように尿検査なんですか?

長南 一緒ですよ。尿を取って、どこがチェックするかっていう違いだけで。

日本で試合をしていた当時、長南はドーピングチェックに関して不満を感じていてたと語る 【(c)乾晋也/kamipro】

――長南さんは日本のドーピングチェックでどんなところに違和感を覚えました?

長南 違和感と言うか、そもそも俺が言いたかったのは膠着状態のときの「アクション」だったり、ブレイクがどうとかルール云々騒ぐ前に、ドーピングチェックの部分もしっかりしてくれよってことなんですよね。もともと外国人とは体格差があるうえに薬まで使ってくる選手もいるのに、結果を出せとかおもしろい試合しろとか好き勝手言うんだったら、少しでも試合条件がフェアになるように俺はしてほしかったです。83キロという階級で闘うにあたって、そういう面ではずっと不満がありましたよ。たとえ、なんらかのドーピングチェックがあったとしても、それはあってないようなものだったのかも知れないし。

――憤りがあったわけですね。

長南 俺が初めて『PRIDE武士道』に出たときは通常体重が82キロだったんですよ。ところが直前で契約体重86キロで(ヒカルド・)アルメイダとやることになって。そのときは体重差を聞いてビビりましたね。真面目にステロイドやるしかないのかなとも思いましたよ。けれども、その手の詳しい人に「ドーピングなんか知識のないやつがやるものじゃない。やることで逆効果になる場合もあるし、わかったうえで使うのとわからないで使うのは大違いだから」って言われて。『PRIDE武士道』に出るまではドーピングせずに結果を出してきたわけだから、いまのままやっていったほうがいいのかなって思ったんです。

――実際、UFCは日本と比べてドーピングのチェック体制はどうですか?

長南 やっぱり厳しいですよ。日本ほどやりたい放題はできないでしょうね。ただUFCでもコミッションのないエリアがあって、そういうところではやる選手もいるんじゃないですかね。

――完全にチェックされてるかたちではない、と。

長南 そうですね。でも、UFCは抜き打ち検査があるらしいんですよ。まだ自分は受けたことないですけど。だから怖くてできないという部分はあると思います。それに比べて、日本じゃ尿検査を拒否してた外国人選手もいるみたいですからね。

――そんなわがままはUFCじゃとおらないですよね(笑)。外国人選手はドーピングに対して、日本人選手と比べて抵抗ない部分はあるんですかね?

長南 そうだと思いますよ。チェックでファールにならなければOKという感覚なんでしょうね。薬の力を使って勝つことに、反則だっていう意識がないというか。けっこう有名な選手で成長ホルモンを打ってるって話を聞くこともありますし、チームぐるみでそういう薬物に取り組んでるというのも聞いたこともあります。

――チームぐるみって凄まじいですね……。

このあとも日本とアメリカで試合経験のある長南が日米ドーピング事情を赤裸々に告白。その他、プロトレーナー、リングドクター、さらにはアメリカMMA“法の番人”ネバダ州アスレチックコミッション・エグゼクティブディレクターの“魔法の薬”ドーピングに対する見解は『kamipro』No.132をチェック!!

【09年2月2日/都内・某所にて収録】
(聞き手/鈴木祐 撮影/菊池茂夫 試合写真/乾晋也)

『kamipro』No.132

【(c)kamipro】

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発行/エンターブレイン

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