田村vs.桜庭とはなんだったのか?

格闘技通信

因縁の一戦を終えた桜庭は何を思う 【(C)保高幸子/格闘技通信】

 いまだにまったりとした残り香を漂わせている大晦日の“謎の一戦”。桜庭の胸に、あの闘いは何を刻み込んだのか。桜庭いわく、物語は完結したのだという。

「素手で顔面あり」というのはネタですから

――田村選手がああいう闘い方でくることは予想できていましたか。

 なんとなく。でも、PRIDEのときに田村さんは「俺たちにしかできない試合をやりたい」っていっていたんです。それは、今回でいうなら、所選手と中村選手がやったような試合だと思っていた。その点では、想像していたものとは違っていました。

――桜庭選手も「殴りたい」と語っていながら、試合ではあまり殴りませんでした。

 嫌なパンチ、やりましたよ。下から、相手の鼻をこするような嫌なパンチを出しました。2、3発くらいしか届かなかったですけど。それを田村さんが嫌がって、ドン!と殴り返してきた。

対戦発表記者会見では「素手で殴りたい」と言っていた桜庭だったが… 【t.SAKUMA】

――桜庭選手のなかでは、きれいな試合をしたいという気持ちと、殴りたいという気持ちが混ざり合っていた?

 混ざり合ってはいないです。いつもといっしょで、まずはきっちりと(試合を)終わらせる。「殴りたい」っていったのは、すべてネタです。柴田(勝頼)選手とやったときのような、流れのなかで殴れる場面が出てきたら、殴ろうかなとは思ってました。ただそれは、ルールで認められている行為なので、ムカつくから殴るというのではないんです。ひとつの技術として、そういう場面になれば殴ろうと思っていたんです。

――戦前に語っていた、田村選手に対する感情はリアルなもの? いまになって種明かしをしてみると?

 種明かしをすると、自分のなかにある小さな感情を、膨らませてしゃべっていました。それはプロレス的な部分で。だから、(田村戦が決まって)最初のころに受けたインタビューではいろいろいいましたけど、最後のほうになると面倒臭くなって。直前の取材では「あれはネタですから。(心境は)いつもといっしょです」っていってたんですけど。最初の「素手で顔面あり」というのもネタですから。――本当は、田村選手のことはそれほど嫌いではない?

 リングインして田村さんが四方に礼をしたあと、ぼくは(睨んでくる田村を)すかしたんです。「あっ、きた」と思ったから、自分のコーナーをすうっと離れました。振り返ったら、田村さんはぼくがいないコーナーを睨んでいた。よし、一本取ったと(笑)。

――もっと攻めたかった、という気持ちは?

 もっと動きたかったというのはありました。でも、身体が動かなかった(苦笑)。2ラウンドもローをもらってふらつきましたけど、あれは疲れていてフラフラだったんです。

――どのくらいの時点でガス欠を起こしたのですか。

 1ラウンドの半分くらいで(苦笑)。かなりはやい段階で疲れてしまいました。やっぱり大晦日は身体が動かない(苦笑)。大晦日は休んだほうがいいと、神様がそういってるんですよ。2ラウンドの最後に、ぼくが上になりましたよね。ぼくは脚にテーピングしてるんで、抜けないんですよ。田村さんにがっちりと脚を挟まれて、抜くことができなかった。「あと、10秒しかない!? どうしよう?」って。ゴングが鳴ったときは、「あ〜あ」と思いました。だから、試合中に思ったのは、「田村さん、いってることとやってることが違うじゃん」って。

――垣原(賢人)さんは、「なぜ笑顔で握手をしたのか」と。「『なんだよ!』という感じで、握手を拒否してほしかった」と語っています。

 あ〜、垣原さん、それさきにいっといてくださいよ! 垣原さんがそういってくれていたら、(いわれたとおりに)やったのに。そうか。握手したから“完結”しちゃったんですね。握手しなきゃよかった!(笑)

――桜庭選手は「またお願いします」と。

「2回でも3回でも、またやりましょう。ぼくらもトシなんだし」って。田村さんも「うん、うん」って頷いていました。

――気持ちとしては、あの一戦で終わりにしたくない?

 あれはあれで“終わり”でいいと思います。

※大晦日の一戦について、また田村個人について、桜庭がまだまだ激白。続きは『格闘技通信』3月号でチェック!

(文=藤本かずまさ)

格闘技通信』 2009年3月号(No.455)

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柴田勝頼「田村潔司と闘いたい」
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■特集(2)田村vs桜庭とは何だったのか?
田村潔司「殴ってやろうと思ってましたから」
立嶋篤史が綴る「控室の田村潔司」
桜庭和志「これで“完結”。終わりにしましょう」
高山善廣「認識の差があの試合を作りだした」
垣原賢人「桜庭、お願いだから休んでくれ」
金原弘光「あれで完結したらダメですよ」

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《大好評!! 連載コラム》
桜庭和志の本音コラム「やっぱり面倒臭い」
前田日明コラム「酔生独言」
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長南 亮のカリフォルニア発MMA通信
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