高校バスケ女子、桜花学園が2年連続16回目の優勝

渡辺淳二

2大会連続16度目の優勝を決め、記念写真に納まる桜花学園の選手たち=東京体育館 【共同】

 昨年と同じカードとなったウインターカップ女子決勝、桜花学園(愛知)対東京成徳大高(東京)。桜花学園は、昨年の大会で優勝を飾ったのに続き、今夏のインターハイ(高校総合体育大会)でも決勝で東京成徳大高を破っている。まさに宿命のライバル同士の対戦だ。
 前半を終えて43−43という、激しく得点を奪い合う様相を呈したこの決勝は、高校のレベルを超越したプレーが華々しく展開され観客の目をくぎ付けにした。そして桜花学園が第4ピリオド開始直後に一気に東京成徳大高を突き放し、大歓声に包まれる中で2年連続16回目の優勝を決めた。
 この最終決戦には、2008年の11月に第19回FIBAアジアU−18女子選手権で初優勝を飾った12人のメンバーのうち、実に6人もの選手がコートに立っていた。
中でも東京成徳大高のツインタワー・間宮佑圭(184cm)、篠原恵(184cm)と、桜花学園のエースセンター・渡嘉敷来夢(190cm)との間で激しく、しかもテクニックを駆使した攻防がインサイド(ゴール付近)で繰り広げられた。

東京成徳大高・篠原恵と、桜花学園・丹羽裕美が激しくボールを奪い合し、勝利への執念を見せる 【(C)JBA】

 両チームが試合前からポイントとして挙げていたのが、渡嘉敷の足の状態だった。足を負傷している彼女は大会前、チーム練習にほとんど参加できず、不安材料を抱えたまま大会に入った。「足の状態と持久力の維持、その両面を考えながら出場させて、決勝に照準を合わせてきた」(桜花学園・井上眞一コーチ)という。決勝進出を決めた直後、渡嘉敷は自分の足に手を持っていき、うっとうしそうに見ながら不安気な表情を浮かべていた。
「東京成徳大高が相手だから、きついですね。でも痛いとか言っていられない。やるしかない。オフェンスはチームメートが助けてくれるけど、ディフェンスは一人でも欠けてはだめ。試合が終わった後に、立てなくてもいいからとにかく走ります。走れるのかな……」
 さらに今夏のインターハイで18点差をひっくり返した逆転勝利を思い起こして言った。
「あの優勝が奇跡でなかったこと、そして自分たちの実力だったことを証明したい」と。

渡嘉敷来夢と間宮佑圭の対決

足のケガをものともせず、優勝の立役者となった桜花学園・渡嘉敷来夢。決勝では37得点13リバウンドという驚異的な数字を残した 【(C)JBA】

 迎えた決勝で渡嘉敷は、37得点、13リバウンドという大車輪の活躍ぶりを見せた。ゴール下でパワフルに攻めたかと思いきや、得意のドライブインをケガで発揮できない代わりに、ミドルシュートをことごとくリングに沈めていくのだ。勝利を手繰り寄せたのも、ファウルが重なる相手に対して意図的に臨んだインサイド(ゴール付近の)アタックだった。
 試合直後、「自分でもよくできたと思います」と、はにかむ渡嘉敷。そして記者会見席上で左隣にいる深野羅定咲を見つめ、「(深野)先輩が、シュートを落としてもリバウンドを取ってくれる、と言ってくれたからシュートを打てました」と頭を下げる。さらに右隣にいる司令塔・岡本彩也花に目を移し、「苦しい時に、彼女がうれしいことを言ってくれたんです」と――。
 ケガとも格闘する自身を励ましてくれたチームメートに、感謝することを忘れなかった。
「(秋の)国民体育大会で敗れたことがいい薬になりました。何が何でも勝ちたいという気持ちが出てきた」と、内面の成長を勝因として挙げるのは桜花学園・井上眞一コーチだ。さらにインターハイの時のキーワードを再び使ってこう締めた。
「渡嘉敷があれだけ走れたことが奇跡です」

最後までしっかりと戦い抜いた東京成徳大高・間宮佑圭。高校生活最後の試合で36得点、10リバウンドと健闘したが、あと一歩及ばなかった 【(C)JBA】

 一方、高校バスケットボール史に残る激しい争いを渡嘉敷と繰り広げた東京成徳大高のキャプテン・間宮。36得点、10リバウンドという数字だけでなく、試合終盤に敗色が濃厚になっても、チームメートを鼓舞し集中力の高いプレーを見せ続けた。下坂須美子コーチが「困った時に助けてくれる選手」と信頼するとおり、決してゲームを捨てず、そして最後までうつむくことなく、立派に戦い抜いた。そんな彼女の姿が脳裏から離れない。
「もう少し落ち込むかな、と思ったけど、思い切りプレーできたのでよかったです」
試合後、一点を見つめる間宮はそう言葉を発して悔しさをぐっと心の中にしまいこんだ。

大会ベスト5に選ばれた、(左から)深野羅定咲(桜花学園3年)、渡嘉敷来夢(桜花学園2年)、間宮佑圭(東京成徳大高3年)、大沼美咲(山形市立商業3年)、阿部幸音(聖カタリナ女子3年) 【(C)JBA】

 桜花学園の連覇で幕を閉じたウインターカップ決勝。勝負の明暗こそはっきりと分かれたが、アジアを制したU−18日本代表メンバーのレベルの高さ、そして彼女たちに挑んだ選手からも、誇りや意地が十分に伝わってくる、そんな最終決戦だった。
 桜花学園と東京成徳大高のライバル関係。これは、2009年にも引き継がれるのだろうか。それとも別の強豪チームが台頭するのだろうか。いずれにしても、女子高校界への注目度が急激な高まりを見せているのは間違いないところだ。

<了>
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著者プロフィール

1965年、神奈川県出身。バスケットボールを中心に取材活動を進めるフリーライター。バスケットボール・マガジン(ベースボール・マガジン社)、中学・高校バスケットボール(白夜書房)、その他、各種技術指導書(西東社)などで執筆。

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