東京体育館の“熱”を、外へ広げるために=高校バスケ・ウインターカップ第3日
「地元の星」を毎年1度応援する楽しみ
東京体育館の前に集まったファン。選手の頑張りと観客の後押しとのコラボレーションで独特の濃い熱気が生まれる。 【(C)JBA】
先頭に並んだのは、「地元の市立船橋を応援するために、千葉から来ました!」という永田さん。早朝に出発し、開場1時間前の朝8時に到着したという。市立船橋の試合は16時開始だったことを考えると、ウインターカップという全国の舞台で地元のチームを応援することを、本当に楽しみにしていたことが感じられる。昨年もやはり市立船橋の応援に訪れたそうだが、東京体育館に1度足を踏み入れたが最後、外気と正反対の熱気に魅入られてしまうのかもしれない。
スコアシート2枚にわたる新記録誕生
第1回大会の優勝メンバーである北原憲彦さんの、58点という最多記録を塗り替えた藤枝明誠の藤井祐眞。なんとまだ2年生だ。 【(C)JBA】
どうしたら40分の試合で162点も取れるのか。また、79点も得点を挙げられる選手とはどんな選手なのか。残念ながら、東京体育館に足を運び、かつ複数の試合が同時進行する中でそのコートを見ていた者しか目撃者にはなれない。ほかにも、男子の最多優勝を誇る能代工(秋田)が東海大四(北海道)に97−94、第3シードの北陸(福井)が佐賀北(佐賀)に70−67と薄氷の勝利を挙げたが、東海大四と佐賀北がどうやって強豪チームを追い詰めたのかは、やはり得点の記録からだけで読み取るには限界がある。つまり、東京体育館で渦巻く熱気が、外に広がりにくいのだ。
しかし、今年は違う。大会の熱気を外に伝えたいと考えていた人たちが、満を持して一大チャレンジに乗り出した。そのチャレンジとは――“全96試合テレビ放送”である。
「ウインターカップを機に、広い目でバスケットを見てほしい」
コート脇にカメラを設置できるようレイアウトを変えるなど、多くの人の様々な協力があって全試合放送は実現した。 【(C)JBA】
「やり急いで失敗したら、二度とできなくなってしまう。だから社内で応援してくれる人を少しずつ増やしていって、社外でもバスケット協会や高体連(全国高等学校体育連盟)から協力を得て、今年やっと実現できました。構想5年、本番一瞬という感じです」
実は、さまざまなジャンルのバスケットを年間150試合以上も放送してきているJ SPORTSだからこそ実現できたと言えるが、放送は会場に足を運べない人のためだけにあるわけではない。むしろ高校バスケをよく見る、という人にこそ「もっと広い目でバスケットを見るきっかけにしてほしい」と考藤プロデューサーは考えている。
「高校バスケも素晴らしいですが、それがすべてかというとそうではない。真のバスケットファンなら、さまざまな国の、さまざまな年代のバスケットを見て、文化の違いを感じた上で、じゃあ日本は何が足りない?といったことを考えてほしいです」
今は東京体育館からの帰路でも、上記のような広い内容のバスケット談義を聞くことはほとんどない。サッカーのようにとまでは言わないが、ウインターカップの会場では確かに生まれている“熱”を外へ持ち出すことができたら、このウインターカップの重要性もより増すのではないだろうか。
<了>
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