「変わっていく高校バスケの姿」が感じられた大会初日=高校選抜バスケ

北村美夏

会場のレイアウトの変更が、シュートタッチにどれだけ影響するか!? 【(C)JBA】

 毎年12月に発表される「今年の漢字」は、2008年は「変」だった。この世相を反映したわけではないが、高校バスケットの日本一を決めるウインターカップも、39回目を迎えた2008年、さまざまな変化が見られた。

 まずは、「環境の変化」。今大会はJ SPORTSにて全96試合が放映されることになったため、東京体育館のコートレイアウトが変わった。見る側にとっては大きな変化だ。さらに、メーンコート1面のみのゲーム進行(男子は準々決勝、女子は準決勝以降)になるまで見られなかったコートペイントが1回戦から施され、プレーする側にとってもウインターカップの舞台に立ったことをより実感できるようになった。

1回戦から頂点を目指す実力校

 そして、「顔ぶれの変化」。毎年メンバーが入れ替わる高校生は、勢力図もその年によってガラリと変わる。女子では、05年、06年に連覇を達成した中村学園女(福岡)、04年に優勝した金沢総合(神奈川)が今年、共にノーシードで1回戦からのスタートとなった。決勝まで6連戦という短期決戦のウインターカップでは、「1試合少なくて済むシード校が有利」と言われているが、両チームのコーチはこの変化を前向きに受け取っていた。

「うちは1、2年生のみの下級生チームなので、まだ“強さ”がない。だから立ち上がりは(動きが)硬かった。そういう意味では1つ(試合を多く)経験できてよかった」とは、1回戦で岡豊(高知)を95−37で下した中村学園女の吉村明コーチ。今夏のインターハイはシードにより2回戦からの登場だったが、自分たちのバスケットを出せずじまいで初戦敗退していた。発展途上のチームが勝ち上がるには、試合ごとに成長できる1回戦スタートの方がいいのかもしれない。

 また、滋賀短大付(滋賀)に73−64で勝利した金沢総合の星澤純一コーチは「東京体育館のような大きなコートは、普段とはシュート感覚が本当に違う。1試合分のシュートを打てた差で、番狂わせが起きたりするんですよ」と不敵な笑みを見せた。金沢総合の2回戦の相手は、インターハイベスト8の常葉学園(静岡)。決して簡単な相手ではないが、先述のようにレイアウトの変わったコートで、その“1試合分”の差がどこまで両チームの差を埋めるかは、女子のシード16チームが出そろう2回戦の共通の見どころと言える。

初出場チームの明と暗

 もう1つの「顔ぶれの変化」、それは女子3チーム、男子7チームの初出場チームの存在だ。大会初日の1回戦、まずは女子の京都精華女(京都)と男子の松山南(愛媛)、桜丘(愛知)の3チームが登場した。しかし、初勝利を挙げられたのは、れいめい(鹿児島)を79−65で下した桜丘だけだった。

松山南は思い切りのいいプレーを見せたが、 全国での勝ち方を知らない弱みが最後に出た。写真は、ドリブルする松山南の坂本(背番号5) 【(C)JBA】

 桜丘の江崎悟コーチは、勝因として「同じように初出場だったインターハイは、出るのが夢で終わってしまった。それに対して、今回は自分たちのバスケットをやるために来たんです」と語った。特に、リトアニアからの留学生、背番号10のマンタス・パプロブヒナスは、「2回戦で岡山学芸館(岡山)の(トゥーレイ・)アビブ(セネガルからの留学生)とやりたい」と組み合せが決まったときから言い続けてきたという。“ウインターカップ初勝利”は、そんな思いの強さで引き寄せた。

 一方、69−70で出雲北陵(島根)に敗れた松山南にとっては、“あと1点”が大きかった。後半は3点以上の点差が開くことなく進み、残り1分で同点。その後、1度は勝ち越すも、出雲北陵のセンター、背番号7の高橋明央に続けてフリースローを与えてしまい、1点差の惜敗となった。
「最後に高橋君がリング下で攻めてきたのを止められなかった。その勝負どころでの強さが、4年連続出場している出雲北陵さんとの違いなのかな……」と對尾圭三コーチは自らも目に涙を浮かべながら振り返った。それでも、松山南は県立の進学校で練習時間も限られるなか、全国大会がどういうものかを後輩に見せた上でバトンタッチした。

「また来年もこういう所に戻ってきたいと、選手が1番思ったでしょう」(對尾コーチ) それは、チームの歴史が変わった瞬間であり、新しい1ページの始まりだ。24日の大会2日目も女子2チーム、男子3チームの初出場チームが登場するが、彼らがどんな歴史を作るのか、見届けてほしい。

<了>
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著者プロフィール

 1983年生まれ。バスケットボール男子日本代表を中心に、高校、大学からJBL・WJBL、ストリートや椅子バス、デフバスまで様々なカテゴリーのバスケットボールを取材。中学・高校バスケットボール(白夜書房)などの雑誌、「S−move」「JsportsPRESS」等のウェブ媒体で執筆。2009年末に有志でポータルサイト・「クラッチタイム」創設

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