昨季、準優勝のレイカーズ、優勝候補に挙げられる理由=NBAバスケ

宮地陽子

今シーズンのレイカーズに必要なこと

 もちろんバイナム一人が復帰したからといってそれだけで、NBAファイナルで露呈したレイカーズの問題がすべて解決するわけではない。
「若い彼だけに、その期待を課すのは酷だ」と、ベテランのデレック・フィッシャーも強調する。
 だいたい、優勝候補の筆頭に挙げられたからといって、ファイナルに戻ることが保証されているわけでもない。そのことを選手たちに強調するために、ジャクソンHCはトレーニングキャンプが始まるとすぐに、連日1日2回の厳しい練習を選手たちに課した。

「(優勝するためには)ハードワークが必要だということを彼らに思い出させるためだった」とジャクソンHCは言う。「(ファイナルに進むのは)当然という考えを持つわけにはいかない。西でNBAファイナルに進むにはいくつもの強敵を倒さなくてはいけない。とても難しい道のりになるだろう」

 そのためにも、今シーズンのレイカーズに必要なのは、バイナムの加入だけに頼らない、チーム・ディフェンスの強化だ。
「この前のファイナルまで、ディフェンスがバスケットボールにおいてここまで重要とは気づかなかった」と言うのはウラジミール・ラドマノビッチ。好シューターで、多彩なオフェンス能力が評価されていたラドマノビッチだが、ディフェンス意識が高くなったことをプレシーズンで証明してみせたことで、開幕戦の先発スモールフォワードの座を勝ち取った。

チームの中心は、やはりコービー

 チームの中心は、昨季初のリーグMVPを取り、北京五輪でも勝負強さを見せたコービー。攻守でとどめを刺すことができる彼の存在は、それだけでも武器だが、信頼できるチームメートたちを得たことで、さらに生き生きとプレーするようになった。ベテラン・ポイントガードのフィッシャーとのガードコンビは盤石だ。

 昨季まで先発だったラマー・オドムはバスケットボール人生で初めて控えに回る。当初は躊躇(ちゅうちょ)していたものの、プレシーズンの最後は控え陣のリーダーとして生き生きとプレーしており、意外とはまり役となるかもしれない。若く成長著しいジョーダン・ファーマーと、故障から復活したトレバー・アリーザのUCLAコンビの攻撃ディフェンスは破壊力があり、シューターとしてファイナルでも注目を浴びたサーシャ・ブヤチッチや、数年ぶりに健康でシーズンを迎えたクリス・ミムなど、選手層の厚さも、長いシーズンでは武器となるだろう。
 何よりも優勝を目の前で逃した悔しさこそが、シーズンを通してレイカーズのエネルギーとなるはずだ。

「昨シーズンは、優勝できるチャンスを目の前で取り逃してしまった。だから、その機会がまた欲しい。それが最終的な目標だ」とフィッシャーは言う。「ファイナルに戻り、去年やり残したことを成し遂げたい」とラドマノビッチ。

 優勝を逃したことで負った痛みは、優勝することでしか癒えることはないのだ。
 開幕を前に、コービーは宣言した。
「パズルのピースはすべてそろった。あとは自分たちのやるべき仕事を成し遂げるだけだ」

 今シーズンのNBAは、米東部時間10月28日の20時(日本時間29日の10時)に開幕し、レイカーズも同日、ポートランド・トレイルブレイザーズを相手に新シーズンのスタートを切る。

<了>

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著者プロフィール

東京都出身。国際基督教大学教養学部卒。出版社勤務後にアメリカに居を移し、バスケットボール・ライターとしての活動を始める。NBAや国際大会(2002年・2006年の世界選手権、1996年のオリンピックなど)を取材するほか、アメリカで活動する日本人選手の取材も続けている。『Number』『HOOP』『月刊バスケットボール』に連載を持ち、雑誌を中心に執筆活動中。著書に『The Man 〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。現在、ロサンゼルス近郊在住。

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