フィギュアスケート、スケートアメリカ見どころ

青嶋ひろの
 グランプリシリーズ第一戦、スケートアメリカ。女子では安藤美姫(トヨタ自動車)と金妍兒(韓国)が登場。男子は人気のアメリカ勢、ジョニー・ウィアーとエバン・ライザチェクが激突。初戦からいきなり目の離せない戦いとなりそうだ。

ファイナル進出経験者や若手有力選手が激突

昨年のスケートアメリカでは2位に終わった安藤。復活をかける今年のスタートは!? 【Photo:YUTAKA/アフロスポーツ】

 女子シングルは、エントリーが発表された時点から、グランプリ6戦中最も厳しい一戦として、大きな話題となった。エントリーリストを見ただけで驚いてしまうのだが、日本の安藤美姫、中野友加里(プリンスホテル)、韓国の金妍兒、アメリカのキミー・マイズナーと、過去グランプリファイナル進出経験のある選手が4人もそろってしまったのだ。
 そればかりでなく、マイズナーらを抑えて全米チャンピオンとなった長洲未来(米国)、その長洲未来を押さえて世界ジュニアチャンピオンとなったレイチェル・フラット(米国)ら、ジュニア時代から大活躍し、シニアデビューとなる今シーズンの躍進が期待される若手が、二人もエントリーしている。
 誰がファイナルに進出してもおかしくない顔ぶれが、6人――プレオリンピックのグランプリシリーズ、初戦から目の離せない展開になってしまった。

 中でも注目したいのは、今年5シーズンぶりの4回転ジャンプ成功を目指す日本の安藤美姫。練習での好調ぶりは伝えられているものの、やはり本番、シーズン初戦から4回転を成功させることは、やさしいことではないだろう。しかし彼女の意気込み、練習の充実ぶりを見るに、今シーズンのどこかで必ず、安藤は4回転ジャンプの成功を見せてくれるのではないかと思う。記念すべき5年ぶりの、シニアでの初の成功を見逃さないためにも、安藤美姫にはシーズン通して、ぜひ注目をしたいところだ。

プレ五輪シーズンのスタート

新採点システム世代の長洲未来。若さと勢いはどこまで通用するか 【坂本清】

 対するもう一人の優勝候補、金妍兒は、コンビを組んで4シーズン目となる振付師、デイビッド・ウイルソンとの新プログラムに期待したい。特にショートプログラム「死の舞踏」は、夏の合宿でともに練習をした日本人選手たちからも絶賛の声が上がる美しいプログラム。安藤の4回転や浅田真央(中京大中京高校)のトリプルアクセルに対抗するジャンプには「挑まない」ことを明言した金が、どこまで「魅せるプログラム」で対抗してくるか。

 追いかけるのは、昨年世界4位まで昇りつめた日本の中野友加里、元世界チャンピオンのキミー・マイズナー。ともに昨シーズンのファイナリストだが、今年もファイナルに進むためには、この激戦の中で3位までには入っておきたいところ。またバンクーバー五輪のメダリスト候補としてこのふたりが名乗りを上げるために、どんなプレ五輪シーズンを送ろうとしているのか。その動向も見守りたい。

 そしてこの大会、フィギュアスケート大国アメリカの希望を背負ってシニアデビューを果たすのが、ともに15歳の長洲未来とレイチェル・フラットだ。
 まさに新採点システム世代の二人。ジャンプだけ、表現技術だけではなく、若くしてジャンプ、スピン、スパイラルなど、どれもが欠けることなくパッケージされた力の持主、先輩たちにとっては大きな脅威だ。彼女たちにマイナス面があるとしたら、滑りがジュニアイッシュ=少しばかり子供っぽさが残っていること。金妍兒や安藤らとジャンプで同じことをしても、演技構成点(PCS)で差がついてしまうかもしれない。しかし先輩4人がジャンプで大きなミスをした場合、若さと勢いで完ぺきな演技を見せれば、この二人が表彰台に並ぶ可能性は大きい。若い彼女たちがどれだけのびのびと大舞台を楽しんでくれるか、大きな見どころだ。

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著者プロフィール

静岡県浜松市出身、フリーライター。02年よりフィギュアスケートを取材。昨シーズンは『フィギュアスケート 2011─2012シーズン オフィシャルガイドブック』(朝日新聞出版)、『日本女子フィギュアスケートファンブック2012』(扶桑社)、『日本男子フィギュアスケートファンブックCutting Edge2012』(スキージャーナル)などに執筆。著書に『バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート 最強男子。』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』(角川書店)などがある

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