五味隆典インタビュー「俺に勝つには――」=『格闘技通信』発

格闘技通信

8.24戦極のメインでハン・スーファンを下した五味。そして試合後すぐ、インタビューを行なった 【(C)保高幸子/格闘技通信】

 王座獲得へ視界良好! 8.24戦極のメインイベントで“日本人キラー”ハン・スーファンを下した五味隆典。“絶対に負けられない闘い”において、判定決着ではあったものの圧倒的な力量の差を見せつけた。次戦は、初代ライト級王座決定戦になることが濃厚だ。相手は「Road to 五味」というサブテーマで展開されているライト級GPトーナメントの優勝者となる。試合後、スーファン戦と今後についてのインタビューを行うと、その発言の中に「打倒・五味」のヒントとも言うべきコメントが……。

負ければタイトルマッチをやる気はありませんでした

――メインイベンターとして臨んだ戦極2戦目。まずは試合を振り返ってもらいたいのですが。

 KOしたかったですけどね。簡単には仕事は終わらないということですね。

――ただ、ハン・スーファンがあんなにフラフラになったのは初めて見ました。試合後にマットに倒れこんでいましたし、國保尊弘広報も記者会見で「王者らしい闘いだった。実質的なKO勝ちだったのではないか」と語っていましたね。

 そう言ってくれる人もいますけど、お客さんにとっては、もっとわかりやすい方がよかったでしょう。たしかにスーファン選手は日本で実績も残していますし、DEEP王者にまでなったわけですから、ある程度もつれる攻防になるというのは予想していました。セコンドにも『キツい試合になるよ』ということは伝えておいたんですよ。我慢強くやりながら、チャンスを見て攻めていこうと思ってましたね。

――一発を持った相手ですからね。中尾受太郎選手、三島☆ド根性ノ助選手、横田一則選手などトップクラスの選手たちをKOしているし。

 とくに右のカウンターですよね。それにかけてるなというのがわかりました。ただ、パンチ自体はよく見えましたね。1Rが始まってすぐ。かなり遅いパンチでしたね。

――遅いパンチ!?

 試合前は警戒していたんですけど、パンチのキレでは、やっぱりラドウィック選手の方が一枚上じゃないですかね。スーファン選手も「こいつ、目がいいな」と感じたんじゃないですか。途中から手が出なくなってきましたよね。パンチで勝負しようと思っても、それがうまくいかないとなると、だんだんイヤになってくるもんですよ。かといって、タックルに入るわけにもいかないし、やりにくかったんじゃないですか。たまに組み付こうとしてましたけど、それもボクシング的なクリンチワークですから。レスリングのタックルではないので、簡単に離れましたけどね。ただ、体の大きさと強さは感じましたよ。

――結局、グラウンドの展開は一度だけでしたけど、上になろうとする瞬間、ちょっと間がありませんでした?

 ヒザ蹴りを出そうと思ったんですけど、4点ポジションじゃないとダメなのか、3点ポジションでOKなのか、ちゃんとルールを把握してなくて(笑)、ちょっと躊躇しちゃったんですよ。それでもその後、マウントまでは取れたんですけどね。グラウンドパンチでレフェリーストップもありえたでしょうし、チョークも狙えましたし、そういう練習はだいぶやりこんでいたんですよ。だからチャンスだったんですけど、彼がロープをつかんで立ち上がったとも聞きました。そうだとしても、とっさの動作ですからしょうがないです。彼も必死ですから、今さら責めはしないです。

――あのグラウンドへの移行は、五味選手のボディブローでほとんどダウン状態だったようにも見えました。スーファンは試合後に「肋骨が痛い」とも言っていましたし。

 そうですか? そんなに手ごたえはなかったんですけどね。

――眉のあたりもカットしていましたね。

 あれはなんですかね。グラウンドパンチかな。ジャブはよく当たっていたと思いますけど、何で切れたかはわからないですね。

――ローキックも、かなり効いているようでした。それはさすがに手ごたえがあったのでは?

 そうですね。いい感じで入ってました。ローキックというのは、あんまりもらうと試合をやめたくなりますよね。ただ、彼にとってもビッグチャンスでしたから、よくがんばりましたよ。

――ローキックは、この試合に向けてやりこんできた技ですか。

 いや、蹴りはほとんど練習しないんですけど、試合になると出るんですよ。僕のは空手の打ち方で腰を入れて蹴らないんですけど、あれが痛いんですよ。

――それは武心塾で学んだものですか。

 そうですね。あの蹴りは空手独自のものじゃないですかね。総合の中で打てるロー。効きますし、タックルも取られにくいし、カウンターのパンチももらいにくい。それを僕はカットできないタイミングで蹴るんですよ。(ルイス・)アゼレードとやった時も使ったんですけどね。

――試合前には加藤丈博師範から筆文字の入った額をプレゼントされましたが、武心塾の存在はやはり大きいですか。

 あそこで打撃のスパーリングをやっていれば大丈夫だろう、というのはありますね。あとは精神的にも、加藤先生というのは真っ直ぐな方ですから、僕を前向きな方向に導いてくれる。木口(宣昭)先生もそうですけど、自分自身もそういう人間になれたらいいと思います。ただ、これからはトレーニングも見直して、もう少し自分のジムでの練習時間を増やしていこうと思っているんですよ。

――出稽古を減らすということですか。

 はい。今回は試合用の練習にはほとんど自分のジムを使わなかったんで。そろそろジムの子たちを信頼して一緒にドリル練習をやってもいいかなと。もちろん出稽古もしますけどね。あとは近所の公園を走ったり、自然と触れ合いながらやっていければと思ってます。

――翌日の記者会見では、「少し守りながらの試合になってしまった」と言っていましたが、いつも以上に負けられない試合だったのは事実ですよね。というか、メインイベンターとしては、かなり酷な状況ではなかったかと……。

 あの試合で終わりじゃないですからね。とにかく勝ち残って、『Raod to 五味』という図式を残しておかなきゃいけなかった。負ければ、タイトルマッチをやる気はありませんでしたから。

※来年1月4日に開催予定の戦極。盛り上がりをみせるライト級王者との初代王座決定戦にむけて、この男が本音を語った! 続きは『格闘技通信』11月号で。

[文=本島燈家 写真=保高幸子(人物)、菊田義久(試合)]

格闘技通信 2008年11月号(No.451)

五味隆典、吉田秀彦の表紙が目印! 【(C)保高幸子/格闘技通信】

9月22日(月)発売 定価860円(本体819円)
※一部地域では発売日が異なります。
発行 (株)ベースボール・マガジン社

五味隆典、吉田秀彦の表紙が目印!

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