イチロー、8年連続200本安打を達成! 1世紀ぶりメジャー記録に並ぶ

吉川秀和

8月に固め打ち

一塁ベース上で観客の声援に応えるイチロー 【写真は共同】

 今季は開幕直後の3月と4月こそ、安打数30、月間打率2割5分9厘と低調だったものの、イチローが例年“スロースターター”であることはマリナーズベンチや報道陣の間でもすっかり周知のことであり、今季の成績について深刻に心配する声は聞こえてこなかった。そして、5月に入ると“ミスター・メイ”の異名通り、どんどんペースを上げてきた。下に示した月ごとの安打数と打率を見てほしい。5月以降は3割以上の打率をキープしていることが分かる。

【月間安打数/月間打率】
・3・4月 30本/2割5分9厘
・5月   36本/3割1分9厘
・6月   34本/3割1分2厘
・7月   36本/3割3分3厘
・8月   43本/3割5分
(※安打数と月間打率は現地時間で計算)

 最下位に低迷したマリナーズは、6月にジェフ・ペントランド打撃コーチと、ビル・バベシ・ゼネラルマネジャーが相次いで解任されたのに続いて、イチローを最も信頼して起用していたジョン・マクラーレン監督も解任された。チームに衝撃が走る中、イチローは逆風をもろともせずに安打を量産し続けた。

 日米通算3000本安打を達成したのは7月30日。3000本に挑んでいた7月には、プレッシャーからか記録前日までの5試合は24打数5安打、打率2割8厘。「この一週間は本当に長く感じた。ボクが一番イライラしていました」とイチロー自身が振り返ったように、思わぬ重圧に悩まされた。それでも、7月を終わってみれば5月と同じ36本、3割3分3厘の数字をたたき出し、最下位に低迷するチームの中で一人気を吐いた。

 そして、何といっても注目すべきは8月だろう。月間28試合で43本の安打を放ち、打率3割5分と驚異的に数字を伸ばしてきた。夏場の酷暑と累積疲労などで多くの打者が調子を落とす中で、イチローはむしろ今季ピークともいえる活躍を見せた。

 9月に入ってもイチローの「上げ潮」状態は変わらず。11日のレンジャース戦では5打数4安打と大暴れ。9月にイチローが無安打に終わった試合は、わずかに7日のヤンキース戦のみだ。9月はこの日を含めて16試合を消化し、72打数22安打、3割5厘の好成績を残している。今回の200安打の「節目」に向けては、10戦連続安打と、順調に安打を積み上げた。

張本氏の3085安打も今季中の射程に

 メジャーで8年もの間、大きなけがをするなくコンスタントに試合に出続け、安打を量産し続けることは並大抵のことではない。高い技術を維持していくことは言うまでもなく、イチローは厳密に時間管理したルーティンの練習メニューから、オフの筋力強化トレーニング、食事の栄養管理、コンディショニング管理など、すべての局面で日々のたゆまぬ努力を欠かさない。プロとして徹底した自己管理を続けてきたイチローの修練が結実した記録といえよう。毎年200本を継続していく中でも、「感情は毎年違う」と語るイチロー。「ことしはゼロのところから200本を外せない状況で臨んだので大きな違いでした」と、安堵(あんど)感をのぞかせた。

「ひとまずこれが大きな目標だったので、その恐怖から解放されて、残り11試合はちょっと力を抜いてプレーできたらいいな。アメリカだけで1800本という数字、日本と合わせて3085本という目標がありますから、それを何とか達成したいと思います」

 当面の目標は、張本勲氏の最多安打記録3085安打である。イチローは18日現在、通算3070本まで近づいている。今季中に達成するためには残り11試合で、あと15本打たなければならない計算だ。

 そして、来季はいよいよ9年連続200本安打というメジャー新記録に挑む。9年連続への道は、100年以上の長きに渡るメジャーの歴史の中で、まだ誰も足を踏み入れたことのない領域である。しかし、イチローならばおおかたの人の期待を裏切らずに達成してくれるだろうと簡単に思わせてしまうところが、この打者が継続して築き上げてきた確固たる実力なのだろう。
 修練することを惜しまぬ天才打者は、ついに未踏の領域へと突き進む。

<了>

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